「無月経」の原因・放置するリスクはご存知ですか?医師が監修!
無月経とは、女性特有の病気であり、妊娠していないにもかかわらず3カ月以上月経が来ない病気のことをいいます。
放置するとホルモンバランスの崩れを引き起こして、さまざまな体調の悪化を招く恐れのある病気です。
原因などが分からず対応が遅れることのないようにするには、正しく病気を理解することが非常に大切です。そこで本記事では、無月経とはどういった病気かについて解説します。
種類・症状・原因・治療方法・放置するリスクなども詳しくご紹介するので、参考にしてください。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
無月経とは
無月経とは、妊娠をしていないにもかかわらず月経が来るタイミングから3カ月以上経過しても月経がない状態で、病的無月経といいます。正常な月経は、25~38日程度の月経周期を経て訪れます。また、次の期間であれば正常な状態です。
- 思春期以前
- 妊娠中
- 授乳中
- 閉経後
上記期間の状態は生理的無月経といい、特に問題はありません。さらに、次の月経までの間隔が25日未満や39日~3カ月未満の場合は月経不順といいます。病的無月経は、さまざまな原因で発症する可能性があり、非常に多くの女性を困らせている問題です。
無月経の種類
無月経には2つの種類があるとご紹介しました。生理的なものは、特に問題はありませんが、病的なものは異常な月経停止です。そして、この病的無月経の中でも、原発性無月経と続発性無月経の2種類に分けられます。ここでは、それぞれの種類について解説します。
原発性無月経
原発性無月経とは、18歳以上となっても月経が一度も来ない状態のことです。この病気が発生する頻度としては、0.3~0.5%といわれており、非常に稀です。98%の女性が15歳までに初めての月経を迎えるといわれています。そのため、18歳を過ぎるまで待つのではなく、16歳を過ぎても月経が来ない場合には、一度婦人科に相談した方が良いといわれています。
続発性無月経
続発性無月経とは、これまでは来ていた月経が、妊娠以外の理由で3カ月以上止まっている状態です。先述した原発性タイプよりも、発生率が高い点が特徴に挙げられます。これは、女性ホルモンのバランスが崩れることで発症する可能性があるためです。また、幅広い年齢の女性で発症します。
無月経の症状
無月経の主な症状としては、次のようなものが挙げられます。
- 思春期の遅れ
- 男性的な特徴が表れる
- 視覚障害
- 性欲の低下
- 妊娠が難しくなる
思春期の遅れは、特にこの病気で見られることがある特徴的な症状です。乳房の発達や陰毛の出現といった第二次性徴がないため、適切に身体が作れない可能性があります。男性的な特徴が表れるのも主な症状の1つです。具体的には、過剰に体毛が生える・声が低音化・筋肉の増加などの男性的な特徴が表れます。
その他にもホルモンバランスの乱れから性欲低下、脳腫瘍が原因の場合視覚障害などを引き起こす可能性があります。(脳腫瘍→ホルモン乱れ→無月経。脳腫瘍による視神経の圧迫によって視覚障害出ることがあります)
さらに、この病気の女性のほとんどのケースで排卵が行われていないため、妊娠も難しいです。
無月経の原因
この病気の原因は、さまざまなものが挙げられます。原因を把握することは、予防のためだけでなく早期発見のためにも非常に重要です。それぞれの原因をしっかりと把握しましょう。
ストレス
原因の1つとして考えられるのがストレスです。疲労などの精神的なストレスから、視床下部機能不全を引き起こしてこの病気を発症してしまいます。続発性の代表的な原因であり、さまざまな要因からストレスを感じていることで発症すると考えられています。
無理なダイエット
無理なダイエットも原因の1つです。急激なダイエットなどを行うと、激しい体重の増減がおきてストレスがかかり、ホルモンバランスが崩れてしまいます。また、身体に必要な栄養が摂取できないこともホルモンバランスを崩す要因です。
過度な運動
過度な運動も原因の1つに挙げられます。これは、過度な運動を続けると女性ホルモンの分泌をなくしてしまうためです。主に続発性タイプと関係が深く、運動量の多い競技選手などに見られます。特に低体重の維持が必要な若い世代のスポーツ選手が過度な運動に当てはまる傾向があり、視床下部の機能不全を起こして発症するケースが多いです。
病気
病気も、無月経を引き起こす原因です。原発性タイプを引き起こす病気としては、次のようなものが考えられます。
- 遺伝性疾患
- 生殖器の先天異常
遺伝性疾患には、X染色体の欠損によって生じる疾患のターナー症候群や、副腎から男性ホルモンが過剰に分泌される先天性副腎過形成症などが挙げられます。男性にしか見られないはずのY染色体を有しているために発症する病気なども遺伝性疾患の1つです。
生殖器の先天異常は、経血の流れを妨げることがあるため、この病気を引き起こします。続発性タイプを引き起こす病気としては、次のようなものが挙げられます。
- 精神障害
- 多嚢胞性卵巣症候群
- 早発閉経
- 下垂体や甲状腺の機能不全を引き起こす病気
精神障害ではうつ病や強迫症などがありますが、その治療で使われる薬剤が原因で月経異常を来すケースが多いです。多嚢胞性卵巣症候群とは、正常に卵胞の成長が行われず、卵巣内で卵胞がとどまってしまう病気です。
40歳未満で卵巣機能が低下する早発閉経も病気に挙げられます。下垂体や甲状腺の機能不全を引き起こす病気とは、下垂体腫瘍や甲状腺機能低下症などです。このように、さまざまな病気からも無月経を引き起こすケースがあるため、異変を感じた場合には早期に医師への相談が大切です。
無月経の治療方法
この病気の治療方法は、原発性タイプと続発性タイプとで異なります。原発性の場合は、原因と重症度に合わせて治療を行います。例えば、検査結果が正常にもかかわらず月経が始まらないのであれば、二次性徴を促すためにホルモンの投与がまず行われる治療方法です。しかし、ホルモンの投与で必ずしも改善するとは限りません。
この治療でも二次性徴が見込めないようであれば、医師が状態を確認しながら、その時々の症状に合わせた治療を進めます。原因がその他の病気によるものであれば、その病気の改善を行いながら治療を進めることとなるでしょう。続発性の場合は、原因となる病気などの治療や改善を行います。
例えば、原因が無理なダイエットなどであれば食事指導やカウンセリングの対応、ストレスの場合はストレス解消に向けた取り組みなどの指導です。その他の病気が原因で無月経となっているのであれば、その病気を改善しながらホルモン投与などを組み合わせて治療します。この病気の治療方法は、1つだけで対応するのではなく、さまざまな治療方法を組み合わせて対応するのです。
無月経を放置するリスク
この病気を放置するリスクとしては、次のようなものが挙げられるため、決して放置してはいけません。
- 膣の乾燥
- 骨粗しょう症
- 将来的な不妊
この病気になると、女性ホルモンの低下が起こります。そのため、さまざまな病気や将来へのリスクにつながるのです。例えば膣の乾燥の場合、通常は膣内部は自浄作用のある分泌物によって潤いが保たれていますが、女性ホルモンが低下しているために分泌が減って乾燥を招きます。また、女性ホルモンは骨の維持にも関わります。
そのため、ホルモンが低下する無月経を放置すると、骨粗しょう症のリスクも高まるのでしょう。さらに長期にわたってこの病気が続くと将来的に不妊にもつながるリスクがあります。
無月経を放置すると子宮内膜に異常細胞が出現し、子宮体がんを引き起こすリスクがあるのです。また、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが不足することで、動脈硬化につながる可能性もあります。こういったリスクを回避するためにも、医師に相談することが大切です。
すぐに病院に行った方が良い「無月経」症状は?
無月経だけでは緊急性はありませんが、妊娠している可能性がある場合、不妊で悩んでいる場合には、早めに病院受診を検討しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、産婦人科です。
問診、診察、尿検査、妊娠反応検査、血液検査、経膣超音波検査、画像検査(CT、MRIなど)などが実施される可能性がます。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから無月経であるのか、月経周期や妊娠・出産歴、他に症状はあるのかなどを医師へ伝えましょう。
治療する場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
無月経は、女性特有のものであり、誰しも起こる可能性がある病気です。特に原発性タイプの場合は、18歳頃になるまで分からず病気が侵攻しているケースもあります。
そのため、16歳頃で月経がまだ来ていない場合には、検査を行ってご自身の体の状態を把握しておきましょう。早期に異常が発見できれば、早期治療も行えます。
無月経の放置は非常にリスクが大きいです。この病気を引き起こす原因によっては、将来のリスクにつながるかもしれない病気も紛れています。
将来妊娠ができないなどのトラブルを引き起こさないためにも、無月経についての理解を深めて、万が一異常を感じたら専門の医療機関に相談しましょう。
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