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「多嚢胞性卵巣症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?

 公開日:2023/03/06
「多嚢胞性卵巣症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?

多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome)は略してPCOSと呼ばれ、卵胞が育つのに時間がかかり、なかなか排卵しない疾患です。

月経不順・無月経・にきびが多い・毛深い・肥満などの自覚症状があれば、該当する可能性があります。

若い女性の排卵障害で多くみられます。不妊の原因にもなり、妊娠を希望しているかどうかで治療方針が変わってくる点も知っておきましょう。

また子宮体がんなどの病気リスクが高まるため、放置せずに改善しておくべき疾患です。

多嚢胞性卵巣症候群の症状・治療方法・注意点などについて紹介します

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

多嚢胞性卵巣症候群の原因や症状

カルテを持つ医師

多嚢胞性卵巣症候群はどんな病気ですか?

通常の月経周期(25~38日間)では数十個の卵胞が育ち始め、その中の1個が十分に成長することで排卵が起こります。しかし多嚢胞性卵巣症候群は卵胞の成長が止まり、卵巣内にとどまってしまうのです。そのため排卵が起こりにくくなるのです。
症状として月経不順・無月経・不正出血が表れます。妊娠の可能性がある20代~45歳の女性の20~30人に1人が発症するといわれています。
「囊胞」とは見慣れない難しい用語ですが「のうほう」と読み、分泌物が袋状にたまった病態のことです。超音波でみると1cm未満の大きさのたくさんの卵胞、つまり嚢胞が卵巣の外側に並んでいる様子が認められ、ネックレスサインと呼ばれます。

多嚢胞性卵巣症候群を引き起こす原因はなんですか?

排卵は、脳と卵巣で分泌される各ホルモンの働きによって起こります。始まりは脳の中にある視床下部と下垂体という部位です。
視床下部から性腺刺激ホルモン(GnRH)が信号を出すと下垂体が卵胞刺激ホルモン(FSH)を卵巣に向けて分泌し、卵巣で成長中の卵胞がFSHを受けて成熟していきます。この過程で卵胞は女性ホルモン(エストロゲン)を分泌し続けます。エストロゲンの十分な分泌によって下垂体が反応し、黄体形成ホルモン(LH)を急激に分泌することで排卵が起こるのです。
排卵後の卵胞は黄体に変わり黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌し、子宮内膜を厚くさせて月経に至ります。順調な排卵・月経のサイクルを保つためには、各ホルモンがバランスよく働くことが重要なのです。
しかし多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣内の男性ホルモン(アンドロゲン)が通常よりも多いことが原因となり、排卵の仕組みを妨げます。男性ホルモンが卵胞の発育を抑え、卵巣の外側の膜を厚くしてしまうのです。
下垂体から出ている黄体形成ホルモンと血糖値を下げるインスリンというホルモンが卵巣に強く作用し、男性ホルモンを増やしていると考えられます。
月経中の血液検査では、黄体形成ホルモンが卵胞刺激ホルモンよりも高くなるという特徴があります。卵胞の成長に不可欠な2つのホルモンですが、バランスが乱れると排卵に至るまでの過程がうまくいかなくなるのです。
インスリン抵抗性(血糖値を下げるインスリンが効きにくい状態)がみられる人は、卵巣の男性ホルモン過多・黄体形成ホルモン分泌過多をもたらすとされています。排卵が起こる仕組みを阻害する状態です。

多嚢胞性卵巣症候群の主な症状はなんですか?

以下のような自覚症状はありませんか。心当たりがあれば多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。

  • 月経周期が35日以上ある
  • 月経が以前は順調だったのに不規則になった
  • にきびが多い
  • やや毛深い
  • 太っている

にきび・毛深さは男性ホルモンの影響、太っている人はインスリン抵抗性を生じている割合が高いと考えられます。多嚢胞性卵巣症候群を伴いやすい体質といえるでしょう。重症度が高いと排卵が起こらず、妊娠しづらくなってしまいます。
また治療せずに放置すると、子宮体がんやメタボリックシンドロームなどのリスクが高くなってしまうため注意してください。

多嚢胞性卵巣症候群の診断方法を教えてください。

以下の3つの特徴を満たした場合、多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。

  • 生理不順・無月経・不正出血などの月経周期の異常がみられる
  • 超音波検査で卵巣内に育っていない多くの卵胞(ネックレスサイン)がみられる
  • 血液検査で黄体形成ホルモン(LH)や男性ホルモンが高い値になる

初経から生理が不規則という人や慢性的な生理不順という人は一度受診してみることをおすすめします。

多嚢胞性卵巣症候群の治療方法

薬

多嚢胞性卵巣症候群はどのように治療しますか?

妊娠を希望しているかどうかで治療方法が変わってきます。希望していない場合は、黄体ホルモン製剤・EP(エストロゲン・プロゲステロン)配合剤・低用量ピルといった経口薬を服用します。
薬の作用で人工的に月経を起こし、休薬後の卵巣内のホルモンバランスの改善を目指すことになるでしょう。妊娠を希望している場合は、排卵のチャンスを増やすための薬・注射・手術を段階的に検討することになるでしょう。
まずは経口薬(クロミフェン・レトロゾール)を処方し、うまく反応しなければ、FSH製剤といった注射による排卵誘発を行います。この際、医師に指示された注射の量を守り、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)にならないように気をつけてください。「温経湯」や「柴苓湯」といった漢方薬やステロイドを併用することもあります。
腹腔鏡で卵巣に小さな穴を複数開けるという手術(腹腔鏡下卵巣多孔術)もあります。薬への反応がよくなったり自然と排卵できるようになったりすることが期待できるでしょう。ただ効果は半年~1年と限られ、元の状態に戻っていきます。
肥満であれば減量や運動を行いましょう。肥満は疾患を重症化させてしまいます。一方、体重の5~10%をめどに減らすことができると、高い確率で自然に排卵し月経が順調になることが期待できます。月最大2kgを目安にゆっくり減量することが大切です。
メトフォルミンなどの糖尿病の薬が、排卵障害を改善させることも分かっています。薬の作用でインスリンの過剰な分泌が抑えられ、卵巣内の男性ホルモンが減って排卵しやすくなると考えられるからです。2~3カ月、毎日薬を飲むと効果が表れてくるでしょう。

多嚢胞性卵巣症候群になると妊娠に影響がありますか?

多嚢胞性卵巣症候群は、排卵があまり起きない、または無排卵といった月経異常をきたす場合は妊娠しづらくなります。また、年齢のわりに流産が多い傾向があるでしょう。
ただ重症度はさまざまで自然妊娠できる人も多くいます。基礎体温が高温期・低温期のきれいな二相性になっていれば問題ありません。月経周期も45日ぐらいまでならば軽症といえるでしょう。

多嚢胞性卵巣症候群の治療期間はどれくらいですか?

黄体ホルモン製剤・EP(エストロゲン・プロゲステロン)配合剤を処方するホルモン療法では薬を7~21日内服し、内服終了後、数日で月経が起こります。これを3~6カ月ほど続けて経過を観察します。
低用量ピル(経口避妊薬)は妊娠を希望するまで服用の継続が可能です。減量するならば、数カ月~半年単位の継続が必要になるでしょう。
妊娠を希望している場合、排卵誘発のための注射や体外受精も選択肢となるため、長期にわたる通院や治療が必要になる可能性があります。

多嚢胞性卵巣症候群の治療費用はどれくらいかかりますか?

薬の服用が主な治療となり、自費となる低用量ピルでは1カ月分2500~3000円が相場となります。排卵誘発剤の注射では1周期3~7万円かかります。毎日の注射は効果の出現が早い人でも10~14日ほどかかり、人によっては3週間以上使い続けなければいけない場合もあるでしょう。そのため、治療費が当初想定よりも高くなってしまうかもしれません。
手術や体外受精にまで段階が上がると、さらに高額となるでしょう。体外受精は1回40~60万円が相場となっています。

多嚢胞性卵巣症候群の予防と注意点

運動する女性

多嚢胞性卵巣症候群を予防することはできますか?

原因ははっきりと分かっていません。体質の一つといえるでしょう。
一般的に、初経からしばらくは月経不順であっても次第に規則的になっていきます。しかし多嚢胞性卵巣症候群の人は、初経からずっと月経不順が続いている人が多いです。年齢とともに多嚢胞性卵巣症候群による排卵障害は進み、月経周期も長くなっていく傾向にあります。
多嚢胞性卵巣症候群の人の5人に1人が肥満といわれており、減量によって改善することが期待できます。

多嚢胞性卵巣症候群の治療の注意点はありますか?

排卵誘発剤の注射を使う場合は、有効な薬の量を調整するのが難しく、少量だと反応せず量を増やすと過剰反応するという可能性があります。薬に過剰反応して卵巣が腫れてしまい、お腹などに水がたまってしまう副作用を卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といいます。
重症化すると血栓症や腎不全が起こり入院する必要があるため、気をつけてください。また一度に複数の排卵をした結果、多胎妊娠の可能性もあります。
これらの副作用を回避するためには、少量の注射を毎日続けることが最良の方法です。

多嚢胞性卵巣症候群を放置するとどうなりますか?

治療しないまま放っておくと、子宮内膜増殖症・子宮体がん(子宮内膜がん)のリスクが高まってしまいます。
排卵が起こらないと子宮内膜の増殖を抑えるプロゲステロンが分泌されません。子宮内膜を増殖させるエストロゲンが働きかける状態が長期間続いてしまい、異常な変化が生じてしまうのです。
メタボリックシンドローム・糖尿病・高血圧になりやすい傾向もあり、肥満の人は可能性が高まります。一方、妊娠できる年代の後半になり卵巣機能が低下してくると、月経周期が改善されることもあります。

編集部まとめ

お腹にハートマーク
多嚢胞性卵巣症候群は病気というよりも体質の一つと考えられるでしょう。その程度や原因も人それぞれで、自分に合った治療方法を選択することが大切です。

妊娠を希望している場合、または将来的な子宮体がんなどのリスクを減らすため、治療・改善する必要がある疾患ということを知っておいてください。

「生理が不規則で、にきびが多く毛深い体質」「間隔は長いけれど生理は来ているから大丈夫かしら?」といった人は、産婦人科で一度相談してみましょう。

この記事の監修医師