首の骨がポキポキ鳴るのはなぜ? 柔道整復師に危ないと言われる理由や治し方を聞く
首を回すと、ポキポキ音が鳴ることはありませんか? そしてテレビや雑誌などで「首をポキポキ鳴らすのはよくない」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。一体、なぜ首の骨が鳴るのか、よくないと言われるのはなぜなのかなどについて、A-style整体治療院院長の秋山雅教先生にMedical DOC編集部が聞きました。
監修柔道整復師:
秋山 雅教(A-style整体治療院)
目次 -INDEX-
首を回すとポキポキ鳴るのが気持ちいい なぜ音が鳴るの?
編集部
そもそもなぜ、首を回すとポキポキ音が鳴るのですか?
秋山先生
首を動かしたとき、なぜ、ポキポキと音がするのかについては、現在のところ、まだ解明されていません。しかしおそらく、体液に含まれるガスが外部から刺激を受けることによって、急激に内圧の変化を起こし、気泡になるからと考えられています。
編集部
もう少し、詳しく説明してください。
秋山先生
首の骨(頸椎)の関節は、関節包という袋状の組織で包まれています。そしてその内部は関節腔と呼ばれ、滑液で満たされています。首を動かすと関節腔のなかの圧力が大きく変化し、滑液に溶け込んでいる気体が蒸散して、気泡を作ります。実は、首を動かした時にポキポキと音がするのは、このとき、気泡ができる音だと考えられています。
編集部
気泡ができる時に音がするのですか?
秋山先生
そうです。シャンパンなどの栓を抜く時、ポンと音がしますよね。あれと同じ原理です。
編集部
音が鳴る人と鳴らない人がいるのはなぜですか?
秋山先生
骨格や個人差などによって、音が鳴る人と鳴らない人がいます。人によっては、ときどき鳴るという人もいれば、首を動かすと必ず鳴るという人もいるでしょう。
編集部
首を動かしてポキポキと音が鳴ると、気持ちよくなります。
秋山先生
たしかに、整体やカイロの施術で首を動かしたとき、ポキポキと音が鳴ることがあります。しかし、これはとても危険なことです。頚椎に対する急激な回転伸展操作を加える行為を、専門用語で「スラスト法」といいますが、これは、厚生労働省が定めた「医業類似行為に対する取扱いについて」でも禁止されています。
首をポキポキ鳴らすのが危ない理由は? 鳴らすことで良いことはないの?
編集部
首をポキポキと鳴らすのは、なぜ、危険なのですか?
秋山先生
まずは、神経を傷つけるというリスクがあります。首のなかには重要な神経が通っていて、それらは脳から連続しています。しかし、首を強い力で動かしてポキポキ鳴らすと神経を傷つけ、全身にさまざまな障がいをもたらすことがあります。
編集部
どのような障がいが起きる可能性があるのですか?
秋山先生
たとえば手の痛み、しびれ、握力の低下など上肢の問題や、足のしびれ、つっぱりなど、下肢の問題。さらには排尿や排便が困難になるといった危険性もあります。
編集部
ほかには、首をポキポキ鳴らすことでどのような危険性があるのですか?
秋山先生
本来、首はとても繊細な部分。でも勢いよく首をひねることは、首にとって大きな負荷を与えますから、首周辺に痛みが出たり、首を動かしにくくなったりすることがあります。それだけでなく、首や肩がこる、首の周りが重だるい、頭が痛いなどの症状を引き起こすこともあります。
編集部
首だけでなく、肩や頭にも影響が及ぶのですね。
秋山先生
そうです。また、首に強い力をかけ続けることで、首の骨にトゲ状の突起ができ、変形性頸椎症を招くこともありますし、首をポキポキ鳴らす行為を繰り返すことで、関節の変形を招くこともあります。
編集部
関節が変形してしまうのですか?
秋山先生
指の関節を鳴らし続けると、指が太くなることは知られていますよね。これと同じことが頸椎や背骨にも起きる可能性があるのです。このように、首をポキポキと鳴らすことはとても危険です。癖になっている人は、やめるようにしましょう。
首をポキポキ鳴らすのをやめたいから治し方があれば教えて! 鳴らなくすることはできる?
編集部
首を鳴らすのは危ないということはわかりました。首を鳴らすクセをやめたいときには、どうしたら良いですか?
秋山先生
首を鳴らしたくなるということは、首や肩がこっているという証拠です。その場合には肩甲骨を動かす体操やストレッチをすると、首や肩のこりが解消されます。
編集部
なぜ、肩甲骨を動かすといいのですか?
秋山先生
肩甲骨にくっついている肩甲挙筋や菱形筋などの筋肉が固まっていると、首や肩のこりが生じるからです。これらはとても深いところにある筋肉なので、マッサージでは効果が届きにくいのです。そのため、体操やストレッチでほぐしたり、入浴で温めてゆるめたりすることが大切です。また、ストレスがたまると血行が悪くなるので、ストレスを溜めないことも必要です。
編集部
ほかにも、首を鳴らしたくなったときにできることはありますか?
秋山先生
整骨院や整体治療院などを訪れ、専門家に任せましょう。首まわりはとてもデリケートな部分なので、首がこっていると感じても、自分でもんだりマッサージしたりするのは危険です。もみかえしが生じたり、かえって首にダメージを与えたりすることもあるので、必ず専門家に委ねるようにしましょう。
編集部
首のあたりを自分でもむのは良くないのですね。
秋山先生
実際、首がこっているからといって、過度に強く押している人が多いのです。そのため、筋肉がより一層硬くなってしまい、もみかえしが生じてしまうこともあります。
編集部
首を動かしたとき、勝手に音が鳴るのですがどうしたらいいですか?
秋山先生
故意に鳴らすことはお勧めしませんが、日常生活で自然と鳴ってしまう程度であれば、それほど心配しなくて良いでしょう。ただし、音が鳴るときに痛みがある場合は必ず医療機関を受診しましょう。
編集部
音を鳴らなくすることもできるのですか?
秋山先生
まずは、なぜ首を鳴らしたくなるのか、その原因を見つけることが必要です。たとえば全身のバランスが崩れていると、重い頭を支える首に負担がかかってしまいますから、首のこりの原因になります。また、スマホやパソコンを使う時の姿勢が原因でストレートネックになっていても、首こりの原因になります。こうした原因を見つけて適切に対処することで、首を動かしたときのポキポキ音を鳴らすクセを解消することができるかもしれません。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあれば。
秋山先生
首のこりの原因は、多くが姿勢の悪さです。特に現代人は座っている時間が長く、パソコンやスマホを使っているときは、知らず知らずのうちに首が前に傾いていることもあるでしょう。そうすると、首には20kgくらいの負担がかかっていると言われています。姿勢を正す意識を持つと、首や肩のこりが軽減でき、首を鳴らしたいという欲求も解消されるでしょう。ぜひ、座っているときに正しい姿勢を保つことを意識してみてください。
編集部まとめ
「首を鳴らないようにする」ことよりも、「首をなぜ、鳴らしたくなるのか」という原因を追求することが大事。「首をポキポキ鳴らすことが習慣になっている人」や「首や肩のこりが慢性的になっている人」は、ぜひ、姿勢を見直すところから始めてみましょう。
院情報
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診療科目 | 整体院 |