ぎっくり腰に「安静」は過去の話!? できる範囲で動きながら緩和させるのが得策
「魔女の一撃」とも呼ばれるぎっくり腰。腰を痛めた直後はやむをえないにしても、ずっと安静にしていればいいのかというと、そうともいえないようです。ぎっくり腰についての最新事情を、海外研究も交えながら、「世田谷総合鍼灸整骨院」の島崎先生が解説します。
監修柔道整復師:
島崎 建(世田谷総合鍼灸整骨院)
フィンランドの追跡調査で意外な結果が
編集部
ぎっくり腰になると、なにをするにも“息絶え絶え”状態です。
島崎先生
そうかもしれませんね。しかし、昨今の腰痛ガイドラインでは、一概に「安静」を勧めていません。むしろ、痛み止めを飲んででも「少しずつ動かしたほうがいい」というのが最新の考え方です。
編集部
動かす説に具体的な裏付けはあるのでしょうか?
島崎先生
フィンランドでおこなわれた研究が有名です。同研究は、腰痛患者がどういう治療方法をおこなったか、その結果としてどう改善していったのかを、大きく3グループに分けて追跡調査しました。すなわち、(1)安静にしていたグループ、(2)理学療法士の指導の元、腰の運動を取り入れたグループ、(3)痛みの範囲内で普段どおり過ごしたグループです。
編集部
今までの流れだと、最も改善したのは「(2)腰の運動」グループですか?
島崎先生
じつは、「(3)普段どおり」グループでした。意外ですよね。つまり、なんらかの応急措置が“必要”ということではなく、むしろ“不要”ということになります。ただし、ぎっくり腰とは別の「怖い病気」が隠れているかもしれないですから、数日たっても改善しない場合は受診しておきましょう。
編集部
受診先で、不必要な加療や施術をされることはありませんか?
島崎先生
ぎっくり腰は一種の炎症なので、あまり刺激を与えたくはないですよね。もし、「3~4日間ほどの経過観察期間を置かない即時のリハビリ」という指示が出たとしたら、ワンクッション置いてみましょう。もちろん、その医師などが、フィンランドの研究を知ったうえで指示している場合もあります。ですから、「こんな説を聞いたのですが、私の場合はどうですか」という個別事情を確認してみてください。
本当にぎっくり腰なのかという判断も必要
編集部
ちなみに、先生の院では、どのような対応をしているのでしょう?
島崎先生
当院の場合、ぎっくり腰には手技を用いていません。患部の炎症を悪化させてしまうかもしれないからです。手技とは別に、自己免疫力を高める鍼灸を用いることがあります。鍼灸には除痛効果も期待できるので、なおのこと、「ご自宅での普段どおりの生活」がしやすくなるでしょう。
編集部
大前提として、本当に「ぎっくり腰であれば」という条件付きですよね?
島崎先生
はい。ですから、事前に医療機関でX線撮影をお願いすることもあります。ただし、ややこしいところですが、仮に椎間板ヘルニアや背骨のズレなどが認められたとしても、その背景とは別に「ぎっくり腰をやっちゃった」ケースもあると感じています。ですから、どのような行為がきっかけになったのか、問診などを重要視します。
編集部
「ぎっくり腰」ではなく、例えばヘルニアが悪化した場合も考えられると?
島崎先生
ヘルニアの場合、足のしびれといった「神経症状」が顕著なので、判断基準の1つにしています。また、腰痛が3~4日ほどたっても引かなかったら、ぎっくり腰ではないのでしょう。除痛処置もしつつ、医療機関の受診も検討してみてください。
編集部
リハビリについても伺う予定でしたが、結局は「普段どおりの生活でいい」ということなんですよね?
島崎先生
そういうことになります。無理をする必要はないものの、普段どおりで構いません。ただし、3~4日過ぎても落ち着いてこなかったら、別の腰の疾患を疑いましょう。腰以外の症状、例えば手足のしびれなどが併発している場合も、きちんと調べてもらってください。
意外と気づきにくい腹筋の衰え
編集部
ところで、ぎっくり腰にならないような工夫はありませんか?
島崎先生
物を持ち上げるときに「腰を使わない」に限ります。腰ではなく、足を使ってください。具体的にいうと、膝を曲げた状態で物をつかみ、腰の角度はそのままに、足の力で持ち上げます。スクワット運動に近いような動作ですね。
編集部
1度ぎっくり腰をやってしまうと、再発が怖いですよね?
島崎先生
再発と関連する話題なのですが、腹筋は背筋と比べて衰えやすいです。そして、腹筋と背筋のバランスが悪い方ほど、腰痛になりやすいとされています。重量挙げの選手が腰にコルセットを巻いているのもこのためです。重量が前後のいずれかにもっていかれすぎないように腹圧を高める工夫ですね。インターネットなどでよく「体幹を鍛える」などの記載を散見しますが、その目的は「腹筋と背筋のバランスをとる」ことにあります。
編集部
肥満防止も、ぎっくり腰回避には重要という気がします。
島崎先生
腰にかかる負荷と関わってきますから、無関係ではありません。また、おなかが出てくると、「腰を反った姿勢」になるでしょう。この姿勢を維持するために背筋を使うので、ますます腹筋とのバランスは崩れます。最も避けたいパターンは、順に「ぎっくり腰が怖くて腰を使わない」「そのことで筋力低下や体重増加を起こし、ぎっくり腰になりやすくなる」という悪循環です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
島崎先生
ぎっくり腰について誤解の起きそうなところですが、「普段どおりの生活を送るために、痛み止めを服用する」などの応急措置は、むしろ推奨します。そうではなく、無理をしてまでの応急処置やリハビリは不要ということです。
編集部まとめ
ぎっくり腰は、安静にしていても、過度にリハビリなどをおこなっても、回復を遅らせてしまうようです。いつもどおりの生活を続けることが一番のようです。ただし、その見極めは「数日間」に限られます。腰の痛みが長期に及ぶようであれば、ぎっくり腰とは別の原因を疑いましょう。
医院情報
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診療科目 | 整骨院 |