【NEWS】ゲノム編集食品、今月から届け出開始 医療分野への応用も期待(医師コメント3件) 更新日:2023/03/27 血圧を下げるトマト、アレルギーの少ない卵、身の量が多いタイ。これらは皆、「ゲノム編集」によってつくられた食品だ。厚生労働省はこの10月より、ゲノム編集食品の流通や販売に関する届け出制度を開始した。 遺伝子の改変には2通りあり、既存の遺伝子の一部を切る“ゲノム編集”と、新たな別の遺伝子をつなげる“遺伝子組み換え”が知られている。このうち編集した食品は、全体の遺伝子配列に違いがないことや、従来の品種改良と同じ仕組みであることなどから、原則として安全性審査をおこなわない。他方の組み換え食品には、事前審査を義務づけている。今まで存在していなかった食品による危険性が考えられるからだ。 このゲノム編集、アメリカは日本と同様に無審査としているが、欧州連合(EU)は組み換えとともに要審査としている。ゲノム編集食品の反対派によると、予定していなかった遺伝子を切断してしまう「オフターゲット」のリスクが拭えないという。たとえば、特定の毒素を抑え込んでいる遺伝子が誤って切断されてしまうなどの事態だ。今のところ、「ゲノム編集食品かどうか」の表示義務は、メーカーや生産者に課せられていない。その一部は年内にも市場へ出回る予定。 こうしたゲノム編集技術は、医療の世界でも注目が集まっている。拒絶反応を起こしにくいiPS細胞の作成がその一例だ。しかし、ゲノム組み換え技術となると、いまだ賛否両論が続く。難病などに関連した標的遺伝子を書き換える「クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)」という手法には、ノーベル賞級の期待が寄せられている。その一方で、受精卵の段階でおこなう遺伝子操作については、否定的な見解が多い。 医師のコメント 山口 征大(内科医) ゲノム編集食品であることが、ブランディング化される要素となるのか、また表示しないほうが売上が伸びるのか。また、賛成する消費者、反対する消費者、関心がない消費者と、どのセグメントに受ける商品となるのか。実際の有害性の有無など、今後の動向について非常に興味深い領域です。 山﨑 ゆか(麻酔科医) 中部産婦人科 アレルギーによいとか、栄養が高いとか、いい点はあるかもしれないけれど、遺伝子操作されたものを食べるのは、やはり気がすすまない。 故意に行われる遺伝子操作が未来に何を引き起こすのか、何も考えられてもいないだろう。 環境の変化が自然に引き起こした遺伝子の変化とは違う。 例えば不妊治療の中で行われる体外受精も赤ちゃんがなぜか弱かったり、お母さんの出血が多かったり…… 武井 智昭(小児科医・内科医) ゲノムによる変化では、アレルギーを抑制するなどの本来の目的は対応できると考えられますが、その一方で長期間食べることによる発ガン性なども検証をする必要はあります。 この記事をシェアする