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“毎日の飲酒習慣”がどれだけ「大腸がんの発症リスク」を高めるかご存じですか?【医師監修】

 公開日:2026/03/09
大腸がんの発症リスク飲酒習慣はどれだけ影響する?

米国国立がん研究所の研究員らは、8万8092人の米国成人を対象に、生涯の飲酒習慣と大腸がんリスクの関連を分析しました。その結果、週14杯以上の大量飲酒を続けている人は大腸がんのリスクが最大約1.95倍高まる一方、禁酒した人では腺腫リスクが低下する傾向が確認されました。この内容について中路先生に伺いました。

※2026年3月取材。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

週14杯以上でリスクは最大1.95倍に。8万人超のデータが示す「飲酒と大腸がん」の相関

編集部

米国国立がん研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助先生中路先生

米国国立がん研究所の研究員らは、生涯にわたる飲酒習慣が大腸腺腫および大腸がんの発症リスクに与える影響を明らかにすることを目的とした研究を実施しました。

研究では、前立腺がん・肺がん・大腸がん・卵巣がんのスクリーニング試験に参加した米国成人を対象に、18歳から試験開始時点までの平均的なアルコール摂取量を算出し、飲酒パターンとの関連を分析しました。腺腫の発症については1万2327人、大腸がんの発症については8万8092人を対象に、それぞれロジスティック回帰およびCox比例ハザード回帰を用いて解析がおこなわれました。

結果として、生涯を通じて週14杯以上のアルコールを摂取している現在の飲酒者は、週1杯以下の飲酒者と比較して大腸がんのリスクが約1.25倍高く、特に直腸がんのリスクは約1.95倍に上ることが示されました。また、継続的な大量飲酒は少量飲酒と比較して大腸がんリスクと明確な正の相関関係にあり、そのハザード比は1.91に達しました。一方で、以前は飲酒していたものの現在は禁酒している人は、週1杯未満の現在飲酒者と比べて非進行性腺腫のリスクが低い傾向が認められました。さらに、週7〜14杯未満の中程度の飲酒者では、週1杯未満の飲酒者と比較して大腸がん全体および遠位結腸がんのリスクがやや低いという結果も得られました。

これらの結果から、継続的な多量飲酒や生涯を通じた飲酒量の増加は大腸がんのリスクを高める可能性がある一方、禁酒は腺腫リスクの低下につながる可能性があることが示されました。また、リスクとの関連性は腫瘍の発生部位によって異なる可能性があり、今後のさらなる研究が期待されます。

大腸がん予防のために避けるべき食品とは?

編集部

今回の研究テーマに関連する大腸がんについて教えてください。アルコール以外で、大腸がん予防のために避けるべき食品はありますか?

中路 幸之助先生中路先生

大腸がんの予防には、日々の食生活を見直すことがとても重要です。高脂肪・低食物繊維の食事や加工肉、過度なアルコール摂取はリスクを高める要因となるため、できる限り控えることが大切です。

一方で、積極的に取り入れたいのが食物繊維を豊富に含む食品です。野菜や果物、玄米・オートミールなどの全粒穀物、納豆などの豆類は、腸内環境を整え、発がん物質を体外へ排出する働きが期待できます。また、ヨーグルトや味噌、納豆、キムチといった発酵食品も、腸内の善玉菌を増やし、腸の健康維持に役立ちます。

食事に加えて、適度な運動や規則正しい睡眠、ストレスをためない生活習慣も腸内環境の改善につながります。毎日の小さな積み重ねが、大腸がんのリスクを下げることに直結します。食物繊維や発酵食品を意識的に取り入れ、加工食品やアルコールを控えた、腸にやさしい食生活を今日から始めてみましょう。

お酒で顔が赤くなる人は特に要注意。日本人にこそ知ってほしい「体質とがん」の関係

編集部

米国国立がん研究所の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助先生中路先生

今回の研究で特に注目すべき点は、大腸がんの中でも「直腸がん」のリスクが約2倍と、結腸がんより高かったことです。直腸は便が長くとどまりやすい場所であり、その分アセトアルデヒドや腸内細菌が作り出す有害な物質にさらされる時間が長くなるため、この違いがリスクの差につながった可能性があるかもしれません。

また、最近の研究では、アルコールが大腸がんを引き起こす仕組みは、単にアセトアルデヒドによるDNAへのダメージだけでなく、アルコール代謝の過程で発生する活性酸素、遺伝子の働きをコントロールする仕組みの乱れ、さらには腸内環境の変化など、複数の要因が関係していることがわかってきています。こうしたダメージが少しずつ蓄積し、リスクが高くなる可能性が考えられます。

今回の研究はアメリカ人を対象としていますが、日本人にも少なからず当てはまる部分があると考えます。というのも、日本人を含む東アジアの人のおよそ3割は、アルコールを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い体質を持っています。お酒を飲むと顔が赤くなる「フラッシャー」と呼ばれる人たちです。こうした人達は、体の中にアセトアルデヒドが長く残りやすく、同じ量を飲んでもDNAへのダメージが大きくなる可能性があります。そのため、この研究結果は日本人にとって、より強い警告として受け止めるべきでしょう。顔が赤くなる人は「少しだけだから大丈夫」と油断せず、飲酒習慣を見直すことをおすすめします。

編集部まとめ

今回の研究は、日々の飲酒習慣が積み重なることで、大腸がんのリスクが着実に高まることを示しています。「少し飲む程度なら大丈夫」と思っていても、長年にわたる習慣が体に与える影響は決して小さくありません。大腸がんを予防するためには、飲酒量を減らすことに加え、食物繊維や発酵食品を積極的に取り入れ、腸の健康を日頃から意識することが大切です。お酒との付き合い方を今一度見直してみましょう。

この記事の監修医師