肥満症治療薬の中止後はリバウンドしやすい? 3つの注意点と適切な出口戦略を医師が解説

オックスフォード大学の研究グループは、過体重や肥満の成人が体重管理薬を中止した後の体重変化を分析しました。その結果、中止後は体重が増えやすく、改善していた健康指標も徐々に元に戻る可能性が示されました。2025年2月までの最新データを基にした本分析では、中止後1.7年で元の体重に戻るとの予測も出ています。リバウンドを防ぐために不可欠な「出口戦略」や、薬に頼りすぎない包括的な生活習慣改善の重要性について、濵﨑医師に詳しく伺いました。
※2026年1月取材。

監修医師:
濵﨑 秀崇(医師)
研究グループが発表した内容とは?
編集部
オックスフォード大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
濵﨑先生
平均治療期間は39週間、平均追跡期間は32週間でした。分析の結果、体重管理薬による治療終了時の平均体重減少は8.3 kgでしたが、体重管理薬中止後に1カ月あたり平均0.4 kg体重が再び増えていました。さらに中止後1年で約4.8 kg体重が増え、1.7年で治療前の体重に戻ると推測されました。ランダム化比較試験のみを対象とした解析では、体重管理薬治療群は治療終了時点で対照群より5.7 kg多く体重が減少していましたが、治療中止後、治療群では対照群よりも、体重が1カ月あたり0.3 kg多く増加する傾向がみられました。また、心血管代謝マーカー(HbA1c、空腹時血糖値、血圧、脂質など)の改善効果は、中止後約1.4年以内に元の水準へ戻ると予測されました。初期の減量幅にかかわらず、体重の増加速度は、行動的体重管理プログラム終了後のほうが速いことが明らかになりました。
これらの結果から、体重管理薬の使用を中止すると、比較的短期間で体重が戻り、健康指標の改善効果も時間とともに失われやすいことが明らかになりました。そのため、薬物療法を短期的に用いる場合には、生活習慣改善などを含めた包括的な体重管理が重要であると考えられます。
肥満の定義・体重管理薬とは?
編集部
肥満の定義・体重管理薬について教えてください。
濵﨑先生
近年、肥満症の治療では、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬といった体重管理薬が登場し、高い体重減少効果が示されています。これらについては一定の条件を満たせば保険適用があり、有効な治療選択肢となり得ます。
肥満や肥満症の改善には、薬を使う前に食事や運動、睡眠やストレスマネジメントなどライフスタイルの見直しが必要です。医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけ、無理のない体重管理に取り組んでいきましょう。
研究内容への受け止めは?
編集部
オックスフォード大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
濵﨑先生
さらに、臨床試験の「介入」(体重管理に関する食事・運動指導や薬物療法の進め方)は現実世界とかけ離れていることが多く、実際には途中で治療をやめてしまったり、あまり体重が減らなかったりする場合も少なくありません。したがって、現実世界のデータを分析したらちょっと違う結果になるはずですが、「体重管理薬をやめると時間とともに体重が元に戻る」という結論は非常に重いと捉えています。新しい体重管理薬は薬価が高く、体重管理薬の継続使用は医療経済的な問題も考慮しなくてはなりません。体重管理薬を開始するときに、「出口戦略」を考えておかないと肥満・肥満症の治療はうまくいきません。本研究の結果を受けて、私は医師として、患者さんのゴールをきちんと一緒に考えて体重管理薬を処方したいと思いました。
編集部まとめ
今回の研究から、体重管理薬は減量に効果がある一方で、使用を中止すると体重が戻りやすく、健康指標の改善効果も徐々に失われる可能性があることが分かりました。薬だけに頼った減量では、長期的な体重維持が難しい場合もあります。大切なのは、治療中から食事や運動などの生活習慣を整え、無理なく続けられる方法を身につけることです。医師と相談しながら、自分に合った体重管理を継続していくことが、健康的な体づくりにつながります。



