「ニパウイルス」アジアで拡大危惧… 致死率75%・ワクチンなしのウイルスの実態【医師解説】

ニパウイルスは、致死率が40〜75%と非常に高く、いまだに有効なワクチンや治療薬がない新興感染症です。近年、インドやバングラデシュで感染者が相次ぎ発生し、死亡例も続いています。 日本国内での感染は確認されていませんが、国際的な往来が活発な現代において、私たちも決して無関係ではありません。今回は、ニパウイルスの最新の感染状況や症状、そして日本におけるリスクや日常生活でできる対策について、本多医師に伺いました。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
ニパウイルスの感染状況
ニパウイルスの感染状況について教えてください。
ニパウイルスのこれまでの発生は、アジア地域で散発的に起きており、特にインドやバングラデシュでは近年も継続的な発生が確認されています。インドでは2024年に2人の患者(2人死亡)、2025年には4人の患者(2人死亡)が報告され、バングラデシュでは2024年に5人全員が死亡、2025年も3人全員が死亡するなど、深刻な状況です。
ニパウイルスとは?
ニパウイルスの症状や感染経路、治療・予防法について教えてください。
ニパウイルスは、1999年にマレーシアで発生した急性脳炎の多発から新種のパラミクソウイルスとして確認されたウイルスです。自然宿主はコウモリで、感染ブタを介して人に広がったことが知られています。その後もバングラデシュなどで患者が報告されており、果物の汚染や人から人への感染が疑われています。潜伏期を経て、急な発熱、頭痛、めまい、嘔吐などの症状が表れ、重症化すると意識障害や脳幹症状などの神経障害を引き起こし、致死率は高くなります。 現時点で特異的な治療薬やワクチンはなく、急性脳炎に準じた対症療法が中心です。感染を防ぐためには、動物や汚染された食品との接触を避け、体調に異変を感じた際には、速やかに医療機関を受診することが大切です。日頃から手洗いなどの基本的な衛生習慣を守り、感染予防を心がけましょう。
ニパウイルスが日本でも流行するリスクはある?
ニパウイルスが日本でも流行するリスクはありますか? 対策についても教えてください。
日本でニパウイルスが新型コロナウイルスのように大流行する可能性は今のところ高くありませんが、南アジアからの“持ち込み”や家庭・医療機関での小さな連鎖は起こり得るかもしれません。 韓国では2025年に第1級法定感染症に指定され、周辺国でも警戒が強まっている現状を踏まえ、私たちは「旅行先で病気のブタや生の樹液・齧られた果物を避ける」「帰国後21日間は検温をするなど体調を気にしておく」「発熱や頭痛が出たら早めに受診し、マスクを着用する」、医療側は「渡航歴の確認と標準的な接触・飛沫感染の予防策」を丁寧に実行しましょう。なお、日本では4類感染症として届け出対象であることを知っておけば、過度に怖がらずにしっかり備えられるでしょう。
編集部まとめ
ニパウイルスは致死率が高くワクチンも存在しないため、日常でできる予防が何より大切です。動物や汚染された食品との接触を避け、手洗いを徹底することは、ほかの感染症対策としても有効です。また、体調に異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。正しい知識を持ち、できることを一つずつ積み重ねることが自分や家族を守る第一歩になります。



