【4人に1人が死亡?】マダニから感染する「SFTS」が拡大中… 症状・対策を医師が解説

2025年7月、神奈川県と秋田県がそれぞれ、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の患者が確認されたと発表しました。いずれも県内で初めての報告であり、感染リスクが国内で広がりつつあることが示されています。この内容について中路医師に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
神奈川県・秋田県が発表した内容とは?
神奈川県・秋田県が発表した内容を教えてください。
神奈川県と秋田県がそれぞれSFTS患者の発生を発表しました。 神奈川県によると、県内で初めての感染例が確認され、患者は足柄上郡松田町在住の60代女性です。6月28日に発熱し、下痢や全身倦怠感、血小板や白血球の減少などの症状がみられ、検査の結果、SFTS陽性と診断されました。患者は自宅周辺で畑仕事や草むしりをおこなっており、その際にマダニに咬まれた可能性が高いと推定されています。幸いにも、現在は退院し快方に向かっています。 秋田県でも、7月11日に由利本荘保健所管内で県内初となるSFTS患者の発生届け出がありました。患者は70代女性で、発熱や頭痛、食欲不振、血小板減少、神経症状、出血傾向などが確認されています。感染経路は明らかではありませんが、感染が考えられる期間中に他県への移動歴があるとのことです。
SFTSとは?
SFTSの初期症状や致死率、感染対策などについて教えてください。
SFTSは、主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺されることで感染するダニ媒介感染症です。 潜伏期間は6日~2週間程度で、発熱や食欲不振、嘔吐、下痢などの消化器症状が表れます。重症化すると、意識障害や出血症状、呼吸不全を伴うこともあり、致死率は日本国内で約27%と報告されています。診断には血液や尿などからのウイルス検出が用いられます。SFTSの治療は主に対症療法で、ファビピラビルという抗ウイルス薬の使用が承認されています。 草むらや藪などに入る際は、長袖・長ズボンの着用や虫除け対策を徹底し、マダニに刺されないよう十分に注意しましょう。
研究内容への受け止めは?
神奈川県・秋田県が発表した内容への受け止めを教えてください。
神奈川県と秋田県で初めてSFTSの患者が確認されたことは、非常に重要な事態です。これまでSFTSは特定の地域で多く発生していましたが、今回の両県における初報告は、感染リスクが従来の限定的な地域を超えて全国的に拡大しつつある可能性を示しています。 この状況を踏まえ、住民に対してマダニによる刺咬の予防策や症状の認知向上を図るとともに、医療機関では迅速な診断および検査体制の整備が不可欠です。また、国や地域は感染状況の継続的な監視と適切な情報発信を強化し、市民の安全確保に努める必要があります。正確な情報の収集と共有を基盤に、感染予防対策を徹底して推進することが求められます。
編集部まとめ
SFTSは、マダニを介して感染する命に関わる感染症です。神奈川県と秋田県で相次いで感染例が報告され、日本でもリスクが身近になっています。発熱や下痢など風邪に似た症状でも、早期の受診が重要です。草むらに入る際は肌の露出を避け、虫除けスプレーを活用するなど、日常のちょっとした工夫で感染予防につなげましょう。




