女性・若者の「がん」増加中… 最新調査で判明 発症リスクを高める“生活習慣”とは?

NCI(アメリカ国立がん研究所)やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)などの公的機関は、「Cancer Statistics 2025」と題した年次報告書を発表しました。これは、アメリカ国内における最新のがんの発生率や死亡率のデータをもとに、人種や性別による傾向の違いなどを包括的に分析した報告書です。この報告内容について本多医師にお話を伺いました。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
研究グループが発表した内容とは?
アメリカの研究機関が発表した内容について教えてください。
NCI(アメリカ国立がん研究所)やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)などの組織が発表した「Cancer Statistics 2025」によると、2025年にはアメリカで約204万件の新規がん症例と約61万8000人の死亡が予測されています。喫煙者の減少や早期発見の推進、治療技術の進歩により、がんによる死亡率は2022年まで減少を続けており、1991年以降で約450万人の命が救われたとされています。 しかし、人種による格差は依然として深刻です。ネイティブアメリカンは、腎臓・肝臓・胃・子宮頸がんによる死亡率が白人の2〜3倍と高く、黒人も前立腺・胃・子宮体がんでの死亡率が白人の2倍に上ります。また、がんの発生率は男性では概ね減少傾向にある一方、女性では増加しています。特に50〜64歳の女性は男性よりも高い発生率を示し、若年女性(50歳未満)の発生率は男性よりも82%高くなっています。2021年には、65歳未満における女性の肺がん発生率が初めて男性を上回りました。 こうした中で、がん死亡率の低下という全体的な進展が、人種間の不平等と中年・若年女性のがん負担増加により脅かされています。
がんが発症する原因とは?
がんが発症する原因とは? リスクが高まる生活習慣についても教えてください。
がんは遺伝子に傷がつくことによって発症する病気であり、この傷は細胞分裂時の偶然の変化に加え、喫煙やウイルス感染、化学物質、放射線などの外的要因によっても生じます。特に、たばこや過度の飲酒、肥満、運動不足、塩分の多い食事などは、がんのリスクを高めるとされています。反対に、適度な身体活動や野菜・果物を中心とした食生活は、がん予防に役立つ可能性があります。また、日本人に多い胃がんや肝臓がんの一因には、ピロリ菌や肝炎ウイルスなどの感染も関与しています。がんのリスクを下げるためには、禁煙や節酒、バランスの良い食事、適度な運動、感染予防の意識を持つことが重要です。日々の生活習慣を見直し、できることから始めていきましょう。
研究内容への受け止めは?
アメリカの研究機関が発表した内容への受け止めを教えてください。
がんによる死亡率が減少している点には大きな希望を感じる一方、生活習慣の改善が進んでいない層や社会的格差により恩恵を受けられていない人々が多くいる現実に危機感も抱きます。喫煙率の低下や検診の普及は進んでおり、功を奏しています。しかし、食生活の欧米化、肥満、過度な飲酒、運動不足といった生活習慣病の蔓延が、特に女性や若年層におけるがんリスクを高めていると考えられます。また、若い人の「がん」への意識が高くないということも原因の1つでしょう。医療だけでなく、地域や家庭での健康教育の強化が急務と言えます。国民の健康意識を高め、人種や性別、年齢に関係なく、誰もが予防と早期発見の恩恵を受けられる体制づくりが必要です。
編集部まとめ
アメリカで発表された最新のがん統計は、女性や若年層におけるがんの増加傾向と、依然として残る人種間の格差を明らかにしました。がんの原因には、たばこ・飲酒・肥満・運動不足・感染など、私たちの生活と密接に関わる要因が多く含まれます。日々の習慣を少し見直すだけでも、がんのリスクは減らすことができます。「自分には関係ない」と思わずに、できることから健康づくりを始めましょう。



