「食物繊維」の摂取でがん・心血管疾患などの死亡リスク低下 多く含まれる食品を医師が解説!

国立がん研究センターの研究員らは、食物繊維の摂取量と総死亡率および死因別死亡率の関連を調査しました。その結果、食物繊維を多く摂取している人ほど死亡リスクは低いことが明らかになりました。この内容について五藤医師に伺いました。

監修医師:
五藤 良将(医師)
研究グループが発表した内容とは?
国立がん研究センターの研究員らが発表した内容を教えてください。
今回紹介する研究報告は、日本の国立がん研究センターが中心となり実施されたもので、JPHC(多目的コホート研究)の一環として実施されました。JPHCによる前向きコホート研究では、食物繊維の摂取量と全死亡率および死因別死亡率との関連について、15年以上にわたり日本全国の約9万人以上の中高年男女を対象に調査がおこなわれました。本研究は、食事内容を詳細に記録した5年間のアンケートを基に、食物繊維の摂取状況を把握し、2016年まで追跡調査を実施しています。 研究の結果、食物繊維を多く摂取している人ほど全体の死亡率が低く、特にがんや心血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクが低下する傾向が確認されました。また、食物繊維の摂取源としては、野菜、果物、穀類、豆類が重要であり、日本では大豆をはじめとする豆類からの摂取が特徴的でした。食物繊維の摂取量が多い人は、健康診断の受診率が高く、スポーツ習慣があり、緑茶をよく飲むなど、健康的な生活習慣を持っていることも明らかになりました。 これらの知見は、日々の食生活の中で意識的に食物繊維を摂取することが、長期的な健康維持や寿命の延伸につながる可能性を示しています。
食物繊維が多く含まれる食材とは?
食物繊維が多く含まれる食材とは何ですか? 1日にどれくらい摂れば良いでしょうか?
食物繊維が多く含まれる食材には、玄米・麦ごはん・全粒粉パンなどの穀類、煮豆・納豆・豆腐・おからなどの豆類、さつまいも・里いも・こんにゃくなどのいも類、ごぼう・キャベツ・青菜・ブロッコリーなどの野菜類、みかん・バナナ・りんごなどの果物類、きのこ類、わかめ・ひじきなどの海藻類が挙げられます。特に日本人の食生活では、穀類や野菜、豆類からの摂取が多い傾向にあります。 厚生労働省が示す「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性はおおよそ1日20〜22g以上、女性は17〜18g以上の摂取が目標とされています。ただし、令和元年の国民調査では平均摂取量は約18.4gにとどまっており、意識して取り入れることが大切です。毎日の食事に野菜や豆類、海藻類などを上手に組み合わせて、バランスよく食物繊維を摂るように心がけましょう。
研究内容への受け止めは?
国立がん研究センターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
今回の研究結果は非常に意義深いものであり、日本人を対象とした前向きコホート研究という点でも信頼性が高いと評価できます。特に、がんや心血管疾患、呼吸器疾患といった主要な死因において、食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクが低下するという結果は、日常の食習慣を見直す大きなきっかけになるでしょう。 また、食物繊維が単なる整腸作用だけでなく、腸内細菌叢の多様性を保ち、炎症や代謝異常の抑制、さらには免疫調節にも関与することが近年の研究で明らかになってきています。本研究はその実臨床への応用可能性を示唆するものであり、食物繊維を意識して摂取する生活習慣の啓発は、医療・予防の両面で極めて重要です。
編集部まとめ
国立がん研究センターの大規模研究により、食物繊維を多く摂取している人ほど、がんや心臓病、呼吸器疾患などによる死亡リスクが低くなる傾向が明らかになりました。特に、野菜や豆類、大豆製品など、日本人に身近な食材がその効果に関係しています。ごはんに雑穀を混ぜたり、味噌汁に野菜や海藻を加えたりするなど、日々の食事に工夫を取り入れて、健康寿命を延ばしていきましょう。




