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「パーキンソン病」治療に新たな一手! “日本発”iPS細胞、アメリカで患者移植に初成功

 公開日:2025/07/22

2024年3月28日、日本の製薬会社・住友ファーマ株式会社は、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療の企業治験について発表しました。その後、2025年6月には大阪で製造された細胞が生きたままアメリカ・カリフォルニア州の大学病院へ輸送され、同月25日に初めて患者への移植がおこなわれたと報じられています。この内容について勝木医師に伺いました。

勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

研究グループが発表した内容とは?

住友ファーマ株式会社が発表した内容を教えてください。

勝木 将人先生勝木先生

2024年3月28日、住友ファーマ株式会社は「iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する企業治験をアメリカにて開始する準備が整った」と発表しました。2024年2月にFDA(アメリカ食品医薬品局)へIND申請をおこない、30日間の調査を経て治験実施が可能となっています。治験は凍結保存された他家iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞「DSP-1083」を用い、アメリカ子会社のSumitomo Pharma America, Inc.が主導します。

その後の2025年6月、住友ファーマ株式会社は大阪で製造したiPS細胞由来の細胞をアメリカに輸送し、同月25日に患者に移植したとされています。日本から海外への移植は初とみられ、国内での治験はすでに終了しているとのことです。今後は国への製造・販売承認申請が予定されているそうです。

パーキンソン病の初期症状やなりやすい人の特徴とは?

パーキンソン病の初期症状やなりやすい人の特徴は何ですか? また、予防法についても教えてください。

勝木 将人先生勝木先生

パーキンソン病は、50歳以上に多くみられる神経の病気で、初期には手の震えや動作の遅れ、筋肉のこわばり、転びやすさなどが表れます。これらの症状は少しずつ進行し、体のバランスが崩れたり、小さな動作が難しくなったりします。なかには、40歳以下で発症する若年性パーキンソン病のケースもあり、特別な原因がはっきりしない場合がほとんどです。遺伝するケースはごく一部で、一部の若年発症者に遺伝子の関与がみられる程度です。

パーキンソン病の根本的な原因はまだ完全には解明されていませんが、脳内のドパミン神経細胞の減少が関係していると考えられています。パーキンソン病は年齢とともに発症リスクが高くなり、予防法は確立されていませんが、日頃から体をよく動かし、生活リズムを整えることで健康な脳を保つ意識を持つことが大切です。初期には「片方の手や足だけの震え(安静時振戦)」「歩幅が狭くなる」「足がすくむ」「服のボタンが留めにくいといった細かい作業のしにくさ」「顔の表情が乏しくなる」「声が小さくなる」といった変化が表れることもあります。

これらの症状が気になる場合は加齢のせいと決めつけず、早めに脳神経内科など専門医に相談しましょう。

研究内容への受け止めは?

住友ファーマ株式会社が発表した内容への受け止めを教えてください。

勝木 将人先生勝木先生

今回の研究は、パーキンソン病の根本治療を目指す取り組みとして非常に意義深いものです。これまで薬物療法や脳深部刺激療法(DBS)が治療の中心に対し、失われたドパミン神経細胞を補うという再生医療は、症状の進行を抑えるだけでなく機能回復が期待できる点で画期的です。ただし、iPS細胞移植には拒絶反応や腫瘍化のリスクが残っており、安全性や長期的な有効性の検証が不可欠です。今後の臨床結果を慎重に見守る必要がありますが、パーキンソン病患者にとって新たな希望となる可能性は大いにあると考えています。

編集部まとめ

住友ファーマ株式会社が挑むiPS細胞を使ったパーキンソン病治療は、国内の研究成果をもとに、ついにアメリカでの臨床へと進みました。震えや動きづらさを感じたら、我慢せず専門医に相談することから始めましょう。

この記事の監修医師