イソフラボン・大豆製品で「前立腺がん」死亡リスク上昇 多く含まれる食品・適量を医師が解説

国立がん研究センターの研究員らは、大豆や大豆製品、そしてその成分であるイソフラボンの摂取量と、前立腺がんによる死亡の関連を分析しました。その結果、大豆製品を多く摂取するグループでは、死亡リスクが最大で約1.76倍に上昇する傾向が確認されました。この内容について村上医師に伺いました。
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監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
研究内容について
前立腺がんに関する研究内容について教えてください。
村上先生
今回紹介するは、大豆や大豆製品、そしてその成分であるイソフラボンの摂取と、前立腺がんによる死亡との関連性に関する調査報告です。対象となったのは、過去にがんや心血管疾患の既往がない、日本に住む45〜74歳の男性4万3580人です。研究は1995~2016年までおこなわれ、参加者は138種類の食品についての質問票に回答し、その後、前立腺がんによる死亡との関連性が追跡されました。追跡期間中には、221名が前立腺がんにより亡くなっています。
分析の結果、イソフラボンや大豆製品の摂取量が多いほど、前立腺がんによる死亡リスクは高まるという傾向がみられました。特に、大豆製品の摂取が最も多いグループでは、最も少ないグループと比べて死亡リスクが約1.76倍高くなるという結果でした。これらの結果は、大豆やイソフラボンが前立腺がんの死亡リスクに影響を及ぼす可能性を示唆しています。
イソフラボンの適切な摂取量
イソフラボンはどれくらいが適切な量ですか? どんな食品にどれくらい含まれているかも教えてください。
村上先生
イソフラボンの適切な摂取量について、内閣府食品安全委員会は安全な1日摂取目安上限を「70~75mg/日」と設定しています。また、厚生労働省は特定保健用食品を利用する場合、通常の食事に加えて1日あたり大豆イソフラボンアグリコンとして30mgまでにするような指針を示しています。日常の食事から摂る量の中央値は「男性で18mg」「閉経前女性で16mg」「閉経後女性で22mg」とされています。そのため、合計でおよそ48〜52mg程度が一般的な上限の目安とされています。
イソフラボンが多く含まれている食品は、納豆や豆腐、豆乳などの大豆製品が代表的です。例えば、納豆1パックには65.0mg、大豆飲料125mlには69.0mg、豆腐半丁には55.0mgのイソフラボンが含まれています。
研究の受け止め
今回の研究内容の受け止めを教えてください。
村上先生
これまでにも、イソフラボンや大豆製品の摂取が前立腺がんを含むがん予防に効果がある可能性を示唆する研究結果が多くありましたが、今回の研究結果はそれとは反対の結果を示しました。一般的に、前立腺がんは死因にはならないことが多いがんですが、高悪性度の前立腺がんでは死因となることがあります。イソフラボンは女性ホルモン様の作用を有するため、前立腺がんに抑制的な働きをする可能性が考えられますが、高悪性度の前立腺がんではその効果はほとんど期待できません。そのようなことも今回の研究結果の一因となっているのかもしれませんが、イソフラボン摂取が直接、前立腺がんによる死亡リスクを高めると断定できるものでもありません。イソフラボンには良い効果もあるので、適切な量を摂取することが大切だと考えます。
編集部まとめ
これまで、大豆やイソフラボンは健康に良いとされてきましたが、日本の大規模研究により「摂取量が多すぎると前立腺がんによる死亡リスクが高まる可能性がある」と示されました。特に特定保健用食品などからの追加摂取は、1日30mgまでが目安とされています。普段の食事で摂る分には問題ありませんが、納豆や豆乳などを重ねて食べすぎないよう注意し、バランスの良い食生活を心がけることが大切です。





