エイズ患者、前年より15%増加・9割が男性 気づくキッカケや初期症状を医師が解説

厚生労働省は、2025年3月28日にエイズ動向委員会を通じて、2024年のHIV感染者およびエイズ患者の新規報告数に関するデータを公表しました。この内容について本多医師に伺いました。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
エイズ動向委員会が発表した内容とは?
厚生労働省のエイズ動向委員会が発表した内容を教えてください。
本多先生
厚生労働省のエイズ動向委員会が発表した2024年のHIV感染者およびエイズ患者の新規報告数に関するデータによると、令和6年の新規HIV感染者の報告数は664件で、過去20年間で2番目に少ない件数でした。新規エイズ患者の報告数は336件で、こちらは5番目に少ない水準です。HIV感染者とエイズ患者を合わせた新規報告数は1000件で、全体としても減少傾向がみられます。
ただし、HIV感染の多くは同性間の性的接触によるもので、感染者・患者ともに男性が9割を超えており、特に20~50代に多く報告されています。また、エイズ患者の報告数は前年より約15%増加しており、2年連続の増加となりました。これは、新型コロナウイルスの影響でHIV検査の受診が遅れたことにより、診断時にはすでにエイズを発症していたケースが増えている可能性が考えられます。さらに、外国籍のエイズ患者も増加しており、国籍を問わず早期発見と治療の重要性が高まっています。検査件数については、保健所などでのHIV抗体検査が約10万9000件とほぼ横ばいで、新型コロナウイルス流行以前の水準にはまだ達していません。利便性に配慮した検査体制の推進が求められます。
HIVは予防できるので、感染リスクのある人は無料・匿名の検査を積極的に利用することが大切です。HIVの早期発見・治療は、社会全体での感染拡大防止にもつながるため、今後も継続的な対策が必要です。
エイズを引き起こす「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)」とは?
今回の研究テーマに関連するHIVについて教えてください。どこから感染するのか、また気づくキッカケや初期症状について教えてください。
本多先生
HIVは、主に「性的接触」「血液を介した感染」「母子感染」によってうつるウイルスで、日常生活の中で感染することはありません。HIVに感染すると、2〜6週間後に発熱や筋肉痛、頭痛、リンパ節の腫れなど、インフルエンザに似た症状が出ることもありますが、これらはHIV特有の症状ではないため、気づきにくいことが多い傾向にあります。その後は無症候期に入り、自覚症状がないまま免疫力が徐々に低下していきます。免疫の働きが著しく弱まると、通常はかからないような肺炎などの病気にかかりやすくなり、特定の指標疾患を発症するとエイズと診断されます。HIVは早期に発見し、治療を始めることでエイズの発症を防ぐことが可能です。不安を感じたら、早めに検査を受けてみましょう。
エイズに関する発表内容への受け止めは?
エイズ動向委員会が発表した内容への受け止めを教えてください。
本多先生
HIVの感染初期は、特有の症状を有さないため、発見が遅れがちです。コロナ渦の影響も相まって、まだ早期診断ができていない状況が続いています。多くの感染経路は同性間の性的接触であるため、リスクのある人は定期的な検査、予防策を講じていきましょう。
編集部まとめ
HIVは日常生活でうつることはなく、正しい知識と予防策で感染リスクを下げることができます。感染しても早期発見と治療でエイズの発症を防ぐことが可能です。報告数が減少傾向にある一方で、検査を受けずに発症まで至るケースも増えています。不安があれば保健所での無料・匿名検査を活用し、自分自身と周囲の健康を守りましょう。