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「白内障」は野菜摂取で防げることが研究で判明 なりやすい人の特徴・初期症状も医師が解説

 公開日:2025/04/16

国立がん研究センターおよび慶應義塾大学の研究者らは、「野菜や果物の摂取」と「白内障の発症リスク」の関連性を、5年間にわたって追跡調査した結果を報告しました。結果として、男性では野菜およびアブラナ科野菜の摂取量が多いほど白内障発症リスクは低下する傾向がみられた一方、女性では逆に摂取量が多いほど発症リスクは高まる傾向が示されました。研究成果は「Journal of Epidemiology」で発表され、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイトでも公開されています。この内容について柳医師に伺いました。

柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

研究グループが発表した白内障に関する研究内容とは?

国立がん研究センターおよび慶應義塾大学の研究者らが発表した内容を教えてください。

柳 靖雄医師柳先生

日本の国立がん研究センターおよび慶應義塾大学は、日本各地の保健所に登録された45~74歳の男女約7万人を対象に、野菜や果物の摂取と加齢性白内障の発症リスクの関連性を5年間にわたり追跡した前向きコホート研究を実施しました。

この研究では、男性において野菜、特にアブラナ科野菜の摂取量が多いほど、白内障の発症リスクは低下する傾向が確認されました。一方で、女性の場合は逆の傾向がみられました。ただし、野菜やアブラナ科野菜を多く摂取するほど白内障の危険が高まるということではなく、野菜を多く摂取するような健康意識の高い方が、眼科にもよく受診するため、軽度の白内障も診断されていると解釈できます。緑黄色野菜や果物の摂取については、男女ともに明確な関連は認められていません。また、喫煙状況や年齢によって結果に違いがあることも明らかになりました。特に喫煙している男性では、野菜の摂取が白内障の予防により強く関与している可能性が示唆されています。

ただし、この研究にはいくつかの制限があります。例えば、白内障の診断が自己申告に基づいていたことや、食事内容の評価が一時点に限られていたことが挙げられます。さらに、医師の診察を受けやすい人ほど白内障の診断を受ける機会が多く、そのことが結果に影響している可能性も指摘されています。こうした検出バイアスの懸念があるため、野菜の摂取と白内障の発症との関係については、今後さらなる検証が必要です。

研究テーマになった白内障とは?

今回の研究テーマに関連する白内障について、初期症状やなりやすい人の特徴、治療法などについて教えてください。

柳 靖雄医師柳先生

白内障は、主に加齢が原因で発症し、特に高齢者に多く見られる目の病気です。しかし、比較的若い人でも「アトピー性皮膚炎や糖尿病を患っている」「ステロイド薬を長期使用している」「強度の近視がある」「紫外線を日常的に長時間浴びている」などの場合には、白内障の発症リスクが高まるとされています。

白内障の初期症状としては、「視界がかすむ」「光をまぶしく感じる」「ものが二重に見える」「以前より暗く感じる」といった視覚の変化が表れます。これらの症状が進行すると、視力が大きく低下し、日常生活に支障をきたすようになります。初期の段階では進行を遅らせるための点眼薬などが用いられることもありますが、根本的な治療としては手術によって濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する方法があります。近年の手術技術は大きく進歩しており、超音波乳化吸引術による小さな切開と短時間での手術が主流で、痛みもほとんどありません。眼内レンズも、紫外線をカットするものや多焦点型のものなど、多様な種類があり、個々のライフスタイルや目の状態に合わせて選択が可能です。

視力の低下を年齢のせいだと放置せず、気になる症状があれば早めに眼科を受診し、正しい診断と治療を受けましょう。

白内障に関する研究内容への受け止めは?

国立がん研究センターおよび慶應義塾大学の研究者らが発表した内容への受け止めを教えてください。

柳 靖雄医師柳先生

一般的には、紫外線を浴びると白内障のリスクが高まると考えられています。野菜に含まれる抗酸化ビタミンやミネラルは、紫外線によるストレスを緩和すると考えられているので、適切に野菜を摂取することは重要です。なお、サプリメントによる栄養の過剰摂取は、食事から摂る場合と比べて効果が乏しいとされています。日本では、1日の野菜摂取量の目標は350gとされているので、ぜひ意識してみてください。

まとめ

白内障は加齢による代表的な目の病気ですが、生活習慣や食事内容も発症リスクに影響を与える可能性があります。今回の研究では、特に男性で野菜の摂取が白内障予防に効果的な傾向が示されました。普段の食事に意識を向けることは、目の健康を守る一歩になります。日常の中でバランスの取れた食事を心がけ、自身の目の変化にも気を配って生活しましょう。

この記事の監修医師