「糖尿病」リスクは適度な飲酒で軽減する 研究が明らかにした“最適な飲酒量”とは
南デンマーク大学国立公衆衛生研究所らの研究グループは、デンマークの男女における飲酒パターンと糖尿病リスクとの関連性についての研究結果を発表しました。この内容について中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
研究グループが発表した内容とは?
南デンマークの研究グループが発表した内容について教えてください。
中路先生
今回紹介する研究報告は、南デンマーク大学国立公衆衛生研究所の研究グループによるもので、その成果は医学誌「Diabetologia」に掲載されています。
デンマークの健康調査(2007~2008年)のデータを使用し、7万6484人の中から男性2万8704人、女性4万1847人を対象に飲酒パターンと糖尿病リスクの関連を調査しました。なお、糖尿病の発症情報は全国糖尿病登録から取得したもので、この調査期間中に男性859人、女性887人が糖尿病を発症していたとのことです。
調査結果として、男性では週平均14杯、女性では週平均9杯の飲酒量の場合に糖尿病リスクが最も低いという結果になりました。飲酒頻度においては週1日未満と比較して、週3~4日の飲酒は男女ともに最も糖尿病リスクが低いと示唆されました。アルコールの種類では、ワインが糖尿病リスクの低下と関連していることが示唆された一方、ビールや蒸留酒の効果については明確な結論が得られませんでした。一方で、暴飲暴食は男女ともに糖尿病リスクを増加させる傾向が確認されました。
ただし、この研究にはアルコール摂取量の過少報告や調査中の飲酒パターンが変化する可能性、糖尿病の種類(1型・2型)の区別が不十分であることなどから、限界があるとされています。
今回の研究内容への受け止めは?
南デンマーク大学らの研究グループが発表した内容に対する受け止めを教えてください。
中路先生
糖尿病と飲酒の関係は複雑ですが、適度な飲酒は糖尿病の予防効果がある可能性は指摘されていました。この研究の興味深い点は、これまで知られていなかった具体的で最適な飲酒パターン(頻度・量・飲み方)とアルコールの種類や性別による差異を検討した点であると考えられます。ただし、適切な飲酒量は個人の健康状態によって異なります。基礎疾患のある人が飲酒について判断する際は、かかりつけ医に相談することが重要です。
今回の研究結果はどのように活用できそう?
今回取り上げた研究結果は、今後どのようなことに活用できるのでしょうか?
中路先生
長期的な影響を評価する追加研究の実施や飲酒と糖尿病リスクの関連メカニズムの解明の研究などが、今後活用できる可能性がある点として挙げられます。そのほか、年齢、性別、健康状態に応じた適切な飲酒量の推奨や糖尿病予備軍や糖尿病患者向けの新たなガイドラインの作成などにも役立つかもしれません。ただし、適度な飲酒は、あくまで健康的な生活の一部として位置づけられるべきであり、これらの活用にあたっては、健康要因や個人差を考慮し、過度の飲酒を勧めないように注意する必要があると考えます。
編集部まとめ
南デンマーク大学らの研究グループは、飲酒量や飲酒頻度が糖尿病リスクに重要な役割を果たすと示しました。特に、週3~4日の飲酒頻度が最もリスク低下と関連し、ワインが予防効果を持つ可能性も示唆されました。一方で、飲酒の種類や暴飲暴食の影響についてはさらなる研究が必要であり、調査には糖尿病の種類や飲酒パターンの変化を十分に把握できないなどの限界も指摘されています。ただ、今回の研究では生活習慣において「適度な飲酒」が健康リスクを低減する可能性を示唆しており、飲酒習慣を見直す良い機会となるでしょう。