新年に希望が持てない? 「自殺リスクは元日と月曜日に高まる」東大調査で明らかに
東京大学の研究グループは「世界26の国および地域のデータを解析したところ、月曜日と元日の自殺リスクはほとんどの国で高いことが明らかになった」と発表しました。この内容について伊藤医師に伺いました。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
研究グループが発表した内容とは?
東京大学の研究グループが発表した内容を教えてください。
伊藤先生
今回紹介する研究報告は、東京大学の研究グループによるもので、研究成果は学術誌「The British Medical Journal」に掲載されています。
研究対象となったのは、26の国および地域における740の場所の1971年から2019年にかけてのデータです。調査期間中にこれらの場所で登録された全ての自殺、総計で170万1286件を対象に解析がおこなわれました。その結果、月曜日から金曜日の自殺リスクは、月曜日が全ての国において最も高いことが明らかになりました。北米やアジア、ヨーロッパの多くの国々の自殺リスクは、土曜日または日曜日が最も低くなりました。しかし、南米や中米諸国、フィンランド、南アフリカでは、週末に自殺リスクが高まりました。
また、ほとんどの国において、元日に自殺リスクが大幅に増加することも示唆されました。元日の自殺リスクの相対リスクは、日本では0.93、チリでは1.93でした。一方、クリスマスの自殺リスクはそこまで顕著ではなく、地域によって異なる傾向がみられたとのことです。
今回得られた結果について、研究グループは「自殺のリスクは月曜日が最も高く、ほとんどの国で元日に増加した。しかし、週末やクリスマスの自殺リスクは国や地域によって異なる。今回の研究の結果は、自殺リスクの短期的な変動をよりよく理解し、自殺防止対策計画や啓発キャンペーンを策定するのに役立つ」と結論づけています。
自殺してしまう背景とは?
人が自殺してしまう背景は様々な要因があると思いますが、なぜ人は自殺という手段を選択してしまうのでしょうか? この背景にはどのようなものがあるのでしょうか?
伊藤先生
自殺の背景には、精神疾患(特にうつ病や統合失調症、アルコール依存症など)、経済的・社会的な問題、孤立感、喪失体験、過去のトラウマなどが複雑に絡み合っています。
人が自殺を選ぶのは、極度の苦痛や絶望から「これ以上の苦しみを続けられない」と感じ、生きる選択肢が見えなくなるためです。適切な支援や治療、早期介入があれば、多くのケースで防ぐことが可能です。
自殺を防ぐためにできること・ポジティブな生活習慣などは?
自殺を防ぐためにできることや、ポジティブな生活習慣を送るために大事なことを教えてください。
伊藤先生
自殺を防ぐには、日常的な支援ネットワークを持ち、孤立を防ぐことが重要です。また、ポジティブな生活習慣としては、十分な睡眠、規則的な運動、バランスの取れた食事、飲酒をしないなどを意識することが有効です。ストレスや悩みを1人で抱えず、専門家や信頼できる人に相談することが、早期の支援につながります。
まとめ
東京大学の研究グループは「世界26の国および地域のデータを解析したところ、月曜日と元日の自殺リスクはほとんどの国で高いことが明らかになった」と発表しました。WHO(世界保健機関)によると、2019年には世界で70万人以上が自殺で命を落とし、15~29歳の若者の死因の第4位であることが明らかになっています。今回のような研究が自殺防止に役立つことが期待されます。