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「高層マンション住みは流産率が高まる」ウソ?ホント? 話題のテーマの真偽を医師に問う

 公開日:2024/08/28

2ちゃんねる開設者で元管理人のひろゆき(西村博之)さんが、自身のXで「マンションの階数と流産率の関係」についてコメントし、それが賛否両論を呼び話題になっています。このニュースについて馬場先生に伺いました。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

Xで話題になった流産に関する投稿とは?

Xで話題になった流産に関する投稿について教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

2ちゃんねる開設者で元管理人のひろゆき(西村博之)さんは、自身のXで「マンションの10階以上に住む女性の流産率は38.9%。6階以上の居住期間が長くなると、流産率は有意に上がります」と投稿し、1994年に発表された資料のリンクも一緒に添付していました。その上で「高層階を選んだ自分達のせいで流産になったと思い込んでしまう人も居るかと。『景色が良い』は、そこまでのリスクと引き換えに手にいれたいモノなん?」と個人的な考えを述べています。さらに「マンションの高層階に住んでる女性の年齢が高いから流産率が高いわけではないです。同年齢帯の比較でも、6階以上に住むと流産率は上がります。ただ、女性が24歳以下だと影響は少ない模様」と補足しています。

また、ひろゆきさんは、流産率との関連について自身の推測として「エレベーターによる頻繁な気圧変化、運動不足、風による日常的な揺れ、共働きによるストレス、換気不足、他者との会話時間不足、長時間の閉鎖空間ストレス」と箇条書きで記載していました。

この投稿に対して、X上では賛否両論の意見が多数コメントされています。

投稿の論拠となった研究内容とは?

ひろゆきさんが投稿の論拠として添付した論文の内容について教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

ひろゆきさんのXでの投稿にも添付されていましたが、この研究は1994年に東海大学の研究グループが「居住環境の妊婦に及ぼす健康影響について」というタイトルで発表したものです。

1993年9月から横浜市保土ケ谷区・港南区・戸塚区の各保健所管内における4カ月検診を受けた母親を対象に、質問票を記入してもらう調査がおこなわれました。全部で3000通出した調査票のうち、回収できた1605通から有識者や居住期間が1年未満の人を除いた1195人が研究対象となりました。検討項目は、出産状況、居住期間、居住形態、結婚瑕齢、初回妊娠年齢、第1子出生年齢、妊娠確認前後における妊婦の喫煙習慣、飲酒習慣、配偶者の喫煙習慣、外出回数、1人あたりの部屋数とされました。

調査の結果、「居住階の上昇に伴い、流産割合に変化がみられた」とのことで、具体的には一戸建て住宅では8.2%、集合住宅では7.6%となりました。また、集合住宅の1〜2階は6.8%、3〜5階では5.6%、6〜9階は18.8%、10階以上だと38.9%になりました。流産の割合以外の結果を見ると、初回妊娠年齢は居住階の上昇に伴って有意に増加したことが示されました。妊娠確認前後における妊婦の喫煙習慣、飲酒躙、配偶者の喫煙習慣別の流産割合は差がみられませんでしたが、居住形態別の飲酒割合を見ると集合住宅の10階以上に住む人は、一戸建て住宅や集合住宅の1〜2階と比べて有意に高い結果が出たとのことです。

研究グループは、この結果を受けて「妊娠確認前の飲酒習慣を週1回以上飲酒群と非飲酒群の2分類して居住形態別に流産割合を見ると、週1回以上飲酒群および非飲酒群ともに集合住宅6階以上が有意に高くなった」としています。

研究内容への受け止めは?

今回取り上げられた研究内容は1994年のもので、30年前の発表内容です。この内容が現在と同様に語ることができるのかを教えてください。また、流産の原因や予防法についても教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

今回話題に挙がった研究は1994年のものではありますが、居住環境が流産率に影響を及ぼす可能性を示唆できるものだと考えられます。妊婦の居住階数が高いほど、流産率が高まるという研究結果は大変興味深いです。

ただし、今回の研究対象の人数は1195人と少ない印象です。また、交絡因子の調整や解析が妥当なのか、統計学的に吟味する必要はあります。加えて、横浜市の一部地区のアンケート調査であり、ほかの地域(東京都内や地方都市、郊外、高度が高い地域など)にも当てはまるものなのか、さらなる研究報告が気になるところです。

流産の原因は胎児側の要因が多くを占めており、胎児の染色体異常・遺伝性疾患・先天疾患などが知られています。染色体の数が違う、受精卵が正しく分裂しない、遺伝的な異常を認める場合などに早期に流産してしまう場合があります。その一方で母体側の要因としては、子宮筋腫、子宮形態異常、子宮頸管無力症、感染症などに伴う子宮の炎症反応、喫煙習慣・アルコール摂取・有害薬物の使用・カフェイン過剰摂取などの「生活習慣」、糖尿病(妊娠糖尿病)、高血圧(妊娠高血圧症候群)、甲状腺疾患などの合併症や併存症などが知られています。それ以外にも、加齢によって流産率は高まりますし、外傷や重大な事故などがきっかけで流産となるケースもあります。加えて、肥満・痩せ、妊娠中の体重管理、過剰なストレス、化学有害物質、放射線なども流産リスクとして挙げられます。

ご自身でできるような流産を予防する方法として、栄養バランスの良い食事・適度な運動・十分な睡眠など健康的な生活習慣をするとともに、妊娠中の体重管理をしっかりとおこないましょう。また、喫煙・飲酒・カフェイン摂取などは控えて、有害薬物・ドラッグなどは決して手を出さないでください。そして、感染予防のために、妊娠前に必要なワクチン接種を受けること、手洗いなどを積極的におこなうこと、食事前の衛生管理などを徹底しましょう。妊婦健診は決まったタイミングで受診するとともに、持病がある場合は主治医に妊娠している旨を伝え、定期的に診察を受けてください。

妊娠期間中は、体の変化だけでなく様々な環境の変化からストレスがたまりやすい時期です。自分なりのストレス解消法を見つけておくとともに、つらい場合には周囲にサポートを求めることも重要です。カウンセリングや支援グループなども積極的に活用しましょう。

まとめ

2ちゃんねる開設者で元管理人のひろゆきさんが自身のXでマンションの階数と流産率の関係についてコメントし、賛否両論の反応が出ていることが今回のニュースでわかりました。流産という非常にセンシティブな内容であるだけに、現在も大きな注目が集まっています。

この記事の監修医師