FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. NEWS
  3. “新型コロナ後遺症”5類移行から1年も相談減らず「症状で苦しむ患者が絶えない」

“新型コロナ後遺症”5類移行から1年も相談減らず「症状で苦しむ患者が絶えない」

 公開日:2024/05/27

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられてから、2024年5月8日で1年が経過しました。こうした中、新型コロナウイルス感染後の後遺症に悩む患者からの相談が絶えない状況が相次いで報じられています。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

新型コロナウイルスの後遺症に関する報道とは?

新型コロナウイルスの感染後に起きる後遺症の現状について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

厚生労働省の研究班による調査で、2020年1月~22年8月に感染した成人の約1~2割に、新型コロナウイルスの後遺症があったことが明らかになっています。「感染から2カ月以上何らかの症状が続いた」と答えた人は、調査対象となった東京都品川区で11.7%、大阪府八尾市で15.0%、札幌市で23.4%でした。

こうした新型コロナウイルスの後遺症は現在も起きており、時事通信は「新型コロナウイルスの後遺症専門外来を置く岡山大学病院では、5類移行後も相談に訪れる患者は減っていない」と報じています。

また、岡山大学病院で2021年2月~24年3月に受診した930人を分析すると、新型コロナウイルスを発症してから回復までにかかった期間は平均220日で、症状は倦怠感の割合が最も高かったとのことです。その中でも、オミクロン株の感染者はほかの株と比べて睡眠障害が約2倍に増加していたそうです。また、後遺症が長引き、抑うつ状態になるケースもあったとのことです。

さらに、読売新聞でも福岡徳洲会病院に取材した新型コロナウイルス後遺症の状況が報じられています。読売新聞によると「福岡徳洲会病院は、2023年4月に新型コロナウイルスの後遺症の専門外来を設置し、これまでに10~80歳代の約25人を受け入れている」とのことです。担当医師によると、症状は疲労や倦怠感、頭や胸などの痛み、消化器系の不調が目立つそうです。症状を複数持つ人が多く、物忘れの頻発やうつ病の悪化なども出ているそうです。

現在の新型コロナウイルスの予防・診療体制は?

新型コロナウイルスをめぐる現在の予防・診療体制について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

まず、予防の要である新型コロナウイルスワクチンは2024年3月まで全額公費負担、つまり無料で接種を受けることができました。しかし、2024年4月からはインフルエンザと同じように、原則接種費用の一部自己負担が求められる定期接種に変わりました。また、新型コロナウイルスの医療費を巡っては、2021年から治療薬を全額公費で負担をしていましたが、2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行したことを受けて、2023年10月に治療薬は所得に応じて3000~9000円の自己負担となりました。そして、2024年4月からは公費負担を全廃しています。そのため、治療薬は窓口負担の割合に応じて1~3割の支払いを求められることになります。具体的に、重症化リスクがある人向けの「ラゲブリオ」は、窓口負担3割の人で約2万8000円となります。また、軽症や中等症向けの飲み薬である「ゾコーバ」は、3割負担の人で約1万6000円となります。入院患者向けに使われる点滴薬「ベクルリー」は、3割負担だと約5万6000円です。

後遺症に関する報道が相次ぐことへの受け止めは?

新型コロナウイルスの後遺症に関する報道が相次いでいることへの受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

新型コロナウイルスは、インフルエンザと比べて後遺症の頻度が圧倒的に高いという特徴があります。後遺症は検査キットで陽性・陰性といった結果が出るものでなく、本人にしか分からない症状が多いため、適切な治療を受けずに放置してしまっている場合があると考えられます。また、ほかの悪性腫瘍や代謝疾患などが隠れている場合もあり、診断に難渋する場合もあります。

後遺症が長引くと、休職や退職を余儀なくされる場合もあり、社会経済に与える影響は甚大です。そのため、まずは新型コロナウイルスにかからないことが重要です。「現在も新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら存在している」ということを忘れず、5類に移行してから1年以上経過したとはいえ、標準的な感染予防・対策は継続しておこなっていくことが重要であると考えられます。

まとめ

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられてから、2024年5月8日で1年が経過しましたが、感染後の後遺症に悩む患者からの相談が絶えない状況が相次いで報じられていることが今回のニュースでわかりました。後遺症は期間が長くなることもあるので、後遺症の可能性を感じたら医療機関に相談するといいでしょう。

この記事の監修医師