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トイレの蓋は閉めても意味なし!? ウイルス飛散量は開けっぱなしと変わらず 米研究

 公開日:2024/02/22
トイレの蓋の開閉でウイルス飛散量は変わらず?

アメリカのアリゾナ大学らの研究グループは、「便器の蓋の開閉によるウイルス粒子の飛散量を調べた結果、蓋の開閉でウイルス粒子の飛散量は変わらなかった」という結果を発表しました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

アリゾナ大学らが発表した研究内容とは?

今回、アメリカのアリゾナ大学らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

今回紹介する研究は、アメリカのアリゾナ大学らの研究グループによるもので、成果は学術雑誌「American Journal of Infection Control」に掲載されています。

トイレの水を流すことでエアロゾルが舞い上がり、周囲の床や壁などの様々な表面に細菌をまき散らすことが、これまでの研究により判明しています。そして、便器の蓋を閉めて水を流すと、トイレ内の細菌の飛散量を抑制できることも知られています。こうした研究がある一方、サイズが小さいウイルスについてもトイレの蓋の開閉が影響するのかが検討されていなかったことから、今回の研究を実施しました。

研究グループは、人体に無害なバクテリオファージを家庭用トイレと公共トイレの便器に撒き、便器の蓋を閉めた状態と開けた状態で水を流しました。その後、便器の中の水や、便座、周囲の壁や床などの表面からサンプルを採取しました。研究の結果、家庭用トイレと公衆トイレ両方で、蓋の開け閉めに関係なく、採取されたウイルスの量に差はないことが明らかになりました。

研究内容への受け止めは?

アメリカのアリゾナ大学らによる研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

便器の蓋を閉めてから水を流すと、水を流したときに発生するミストを便器内に留めておくことができるため、細菌の拡散を防ぐことができると言われていましたが、同様の内容が細菌よりもはるかに小さい粒子のウイルスにも該当するのかどうかについては、いまだ検討されてきませんでした。

今回、ウイルスの場合には、蓋を開けたまま水を流すか閉めてから流すかで、水を流している間のウイルス粒子の飛散量に変わりはないことが研究結果で明らかになり、実生活で応用できる研究内容であると考えられます。さらに、今回の研究は病原体がどのように広がっていくのか、また、感染の連鎖を断ち切るためにどのような対策を講じればいいのかをより明確に検討するのに貢献するものであると考えられます。

実生活でトイレの蓋は閉めるべき?

アメリカのアリゾナ大学らの研究グループによって、便座の蓋の開閉によるウイルス飛散量の変化はないという研究結果が示されました。ただ、先行研究では細菌の飛散量の抑制になることは示されています。今回の知見を実生活に活かすにあたって、やはりトイレの蓋は閉めるべきでしょうか?

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

これまでの研究で、トイレの蓋を閉めることで細菌の飛散量の抑制になることが示されていましたが、今回の研究によると便器の蓋を閉めてから水を流しても、ウイルス粒子の飛散防止にはあまり意味がないことが判明しました。今回の知見を実生活に活かすにあたって、ウイルスが関連した感染症を予防するためには、必ずしも毎回トイレの蓋を閉める必要性は高くないと考えられます。

トイレ内での感染リスクを低下させる有効的な方法は、「水を流す前に便器の中に消毒剤を入れること」「トイレのタンク内にあらかじめ消毒剤を入れておくこと」だと考慮されます。また、定期的に便器をブラシで洗浄しましょう。その後に、トイレ内にある物の表面を消毒することや殺菌効果が持続する消毒剤を使用することも、一定の効果を発揮する可能性があると思われます。

まとめ

アメリカのアリゾナ大学らの研究グループは、「便器の蓋の開閉によるウイルス粒子の飛散量を調べた結果、蓋の開閉でウイルス粒子の飛散量は変わらなかった」という結果を発表しました。こうした実生活に身近なテーマの研究は、大きな関心を呼びそうです。

この記事の監修医師