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マスク着用で熱中症リスクも 新型コロナ対策との両立は可能?

 更新日:2023/03/27

夏場も引き続き「新しい生活様式」を実践し、新型コロナウイルス感染症対策に努める必要があります。しかし、コロナ対策のマスク着用で熱中症になるリスクが高まることが、2020年の夏は問題視されています。一体どのようにして、新型コロナウイルス感染症と熱中症の対策を両立したらいいのか、日本感染症学会専門医の加藤先生に取材しました。

加藤 哲朗

監修医師
加藤 哲朗(日比谷クリニック 副院長、日本感染症学会感染症専門医)

編集部編集部

そもそも、新型コロナウイルス感染症が夏に弱まる可能性はありますか?

加藤先生加藤先生

新型コロナウイルス感染症は、一般的なウイルスと同様に、低温・乾燥した環境を好みます。つまり、高温・多湿な環境は苦手です。また、紫外線も苦手なので、夏という環境自体は新型コロナウイルスにとって生存しにくい環境です。

ただし、高温・多湿の環境でウイルスがすぐ死滅するのではなく、長生きしにくい、という程度に捉える方がよいと思います。加えて、熱帯の国々やアフリカでも新型コロナウイルス感染症が実際に拡大しているように、気候だけで弱まるとは考えにくい部分もあります。夏だから弱まるだろうから感染対策をしなくてもよいだろう、とは言えないことになります。

編集部編集部

マスク着用で熱中症のリスクが高まると聞きましたが、感染症対策の観点からマスクは外していても大丈夫なのでしょうか?

加藤先生加藤先生

ご指摘のようにマスク着用によって熱中症のリスクは高まりそうです。特に今年度はステイホームや在宅勤務などで屋内にいる状況が増えることが予想されます。外の暑い環境に接することが少なく、暑い気候になじみにくいこと、またマスクによって体内に熱がこもることのどの渇きを感じにくくなるといったように、例年よりも熱中症のリスクが高まると思われます。

一方、感染対策の手段の1つとしてマスクは重要です。マスクは特に飛沫感染対策において重要な役割を果たしており、飛沫が通常2メートル程度の距離に達することを考えると、人と人との距離が2メートル程度離れていればマスクを適宜外すことは可能と思われます。厚生労働省や環境省も、2メートル以上の距離が確保されていればマスクを外すことを認めています。

編集部編集部

特にコロナの症状が重症化しやすい高齢者の方は、マスクは付けたままのほうがいいですよね?

加藤先生加藤先生

高齢者の方は新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい一方、熱中症にもなりやすい、ということもあり、判断が非常に難しいですね。どちらに重きを置くかによっても変わってきそうです。感染対策の観点からは、人と人の距離が2メートル取れないところにいる場合はマスクを着用し、熱中症予防(水分や塩分補給、体調管理)も並行して行うのがよいでしょう。

編集部編集部

外出時、新型コロナウイルスと熱中症をどちらも対策するためにはどうしたらいいですか?

加藤先生加藤先生

両方をバランスよく対応するしかありません。人と人との距離が近いところでは、マスクの着用が重要になります。そのため、なるべく人混みを避け、マスク着用が無くても大丈夫な環境を意識すること。また、3密などのマスクが必要な環境では十分な熱中症対策をしたうえで、マスクを着用するというようなことになってしまうと思います。

編集部編集部

一方、室内で換気などの注意すべき点について教えてください。

加藤先生加藤先生

換気も感染対策に重要な対策の1つです。1時間に1~2回、5~10分換気できるとよいです。窓を開ける場合は2か所以上にすると、空気の通り道ができて効率よく換気できます。1か所しか開けられない場合はサーキュレーターなども活用するとよいでしょう。職場や住宅に、24時間排気システムがあればそれをご活用ください。

ちなみにエアコンは、換気機能がついていればよいのですが、換気機能がついていない場合は、単に室内の空気を冷やしてそのまま室内に戻す役目しかありませんので、換気になっていないことになります。状況によっては窓を開けてエアコンつける必要があります。

編集部編集部

熱中症と新型コロナウイルス感染症の症状が似ていると聞きましたが、どのように区別すればいいのでしょうか?

加藤先生加藤先生

熱中症の症状と新型コロナウイルス感染症の症状は似ている部分もあります。発熱・熱感だるさ・倦怠感、状況によっては息切れも両者であり得ます。区別する方法は主に3つありそうです。

1つは症状で、咳、呼吸苦(低酸素状態)、嗅覚障害は熱中症でもあり得ますが、新型コロナウイルス感染症でより多く見られます。

2つ目は症状の経過で、熱中症は比較的急な発症ですが、新型コロナウイルス感染症は症状が数日(4~5日)続いて悪化するような経過をとります。

3つ目はその方の背景・行動履歴で、熱中症は体調悪化時の周囲環境が高温多湿の暑熱環境にいたことが多く、一方新型コロナウイルス感染症は症状が出る5日ほど前にリスクのある環境(3密状態で感染対策をせずに疑わしい人・確定した人との曝露があった、など)にいたかどうか、などがあります。

もちろん区別がつけられないこともしばしばありますので、周囲でケアする方については新型コロナウイルス感染症を想定して感染対策を行って患者さんのケアにあたっていただくようおすすめします。

編集部編集部

最後に、夏の新型コロナウイルス感染症対策で気をつけるべき点を教えてください。

加藤先生加藤先生

夏だからといって、新型コロナウイルス感染症が落ち着く可能性は低いと思われます。これまで通りの対策の継続をお願いしたいですが、マスク熱中症も考慮しなければなりません。マスクをつけるときはしっかりつけ、大丈夫なときは外すといったメリハリのある感染対策を、体調管理、塩分・水分補給という熱中症対策とうまく両立してやっているのがよいと思われます。どちらかはやらなくてもよい、ではなく、何とかうまく両方やっていける工夫を考えながら夏を乗り越えていきましょう。

この記事の監修医師