1日7時間以上座っていると「乳がん」リスクが32%上昇 京都府立医科大が発表
京都府立医科大学らの研究グループは、「座っている時間が1日あたり7時間以上の人は、そうでない人と比べて乳がんに罹患するリスクが1.36倍高い」とする研究結果を発表しました。この内容について馬場医師に伺いました。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
研究グループが発表した内容とは?
今回、京都府立医科大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。
馬場先生
京都府立医科大学らの研究グループは、1日に座っている時間と乳がんの罹患リスクの関係について調べました。研究成果についての論文は、日本癌学会誌「Cancer Science」に掲載されています。
研究グループは、「日本人の座位時間は7時間で世界一長い」という結果が過去のデータで示されていることに注目して、今回の研究に取り組みました。対象となったのは、日本人女性約3万6000人で、9年4カ月にわたって健康状態を追跡したデータを解析しました。対象者のうち、乳がんに罹患した人は554人で、1日あたりの座位時間と乳がんの罹患リスクを分析したところ、1日あたりの座位時間が7時間未満だった人と比べて、7~10時間の人は罹患リスクが32%高くなりました。また、1日の座位時間が7時間未満の人と比べて、10~13時間の人は42%、13時間以上は34%罹患リスク高くなるという結果となりました。7時間以上の平均でみると、乳がん罹患リスクは36%高くなっています。加えて、座位時間が1日7時間以上の人は、運動を1日1時間以上の歩行、週3回以上の運動、週1時間のジョギング相当の運動をしていても、座位時間が7時間未満の人より罹患リスクが高くなったこともわかりました。
研究グループは「乳がんの罹患には、座位時間が運動よりも強い影響を与える可能性がある。1日あたりの座位時間を7時間未満にすることが、乳がんを予防する1つの方法になる」としています。
乳がんとは?
今回の研究対象になった乳がんについて教えてください。
馬場先生
乳がんは乳腺に発生するがんで、女性がかかるがんの中で最も多いとされています。日本人では40~50代女性の発症が多く、全体の半数近くが乳首を中心として外側の上部分にできるという調査結果があります。乳がんはがん細胞の広がり方によって、「非浸潤がん」と「浸潤がん」に分類されます。
今回の発表内容への受け止めは?
京都府立医科大学らの研究グループが発表した内容に対する受け止めを教えてください。
馬場先生
座りすぎによって、腰痛などの症状につながることに加えて、「生活習慣病」「心筋梗塞」「脳血管疾患」「糖尿病」などの疾患リスクが上がるという研究もあり、WHOも座ったままの行動を減らすよう推奨しています。また、長時間座る姿勢が続くと、全身の筋肉の大部分(約70%)を占める下半身の筋肉が使われず血流が悪くなります。そのため、日常生活の中で座りすぎを防ぐことが重要です。
デスクワークが中心の人は、座りすぎを防ぐために積極的に立ち上がることを意識しましょう。普段の生活の中で、座りすぎを防ぐような工夫として、「スタンディングデスクを活用する」「可能であれば立って仕事や会議をする」「他人に用事があるときは、歩いて直接相談する」などあります。また、自宅でつい座りすぎてしまう場面、例えば読書やテレビを見ているときやスマホを触っているときなどは、積極的に立ち上ったり、合間にストレッチを取り入れたりして、健康リスクを減らしましょう。
まとめ
京都府立医科大学らの研究グループは、座っている時間が1日あたり7時間以上の人は、そうでない人と比べて乳がんに罹患するリスクが1.36倍高いとする研究結果を発表しました。日本人女性の罹患率が最も高い乳がんと座位時間との関係が明らかになったのは初めてなので、今回の研究には注目が集まりそうです。