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「トリプルネガティブ乳がんの原因」はご存知ですか?治療法も解説!

 更新日:2024/06/25
「トリプルネガティブ乳がんの原因」はご存知ですか?治療法も解説!

トリプルネガティブ乳がんは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2が共に陰性の乳がんです。このタイプは、他の乳がんサブタイプと異なり、ホルモン療法や分子標的療法が効かないため、抗がん剤が中心の治療となります。本記事では、以下の点を中心に解説します。

  • ・トリプルネガティブ乳がんとは
  • ・トリプルネガティブ乳がんの原因
  • ・トリプルネガティブ乳がんの治療

トリプルネガティブ乳がんの原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

上 昌広

監修医師
上 昌広(医師)

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東京大学医学部卒業。東京大学大学院修了。その後、虎の門病院や国立がん研究センターにて臨床・研究に従事。2010年より東京大学医科学研究所特任教授、2016年より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を務める。著書は「復興は現場から動き出す(東洋経済新報社)」「日本の医療格差は9倍 医療不足の真実(光文社新書)」「病院は東京から破綻する(朝日新聞出版)」「ヤバい医学部(日本評論社)」「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか(毎日新聞出版)」。

トリプルネガティブ乳がんとは

トリプルネガティブ乳がんは、乳がんの一種であり、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、およびHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)と呼ばれる3つの受容体が存在しない特定のタイプの乳がんです。このタイプの乳がんは、通常の治療法であるホルモン療法や分子標的療法が効果を示さないため、治療の幅が狭いという特徴があります。
通常の乳がんの15〜20%を占めるトリプルネガティブ乳がんは、治療において抗がん剤が主な選択肢となります。しかし、この治療法も効果が確実であるとは限らず、患者さんは複数の抗がん剤を試みる必要があることもあります。
トリプルネガティブ乳がんは、通常の乳がんとは異なる特性を持ち、従来の治療法では効果が得られにくい場合があることを理解し、患者さんに適切な支援と情報提供が求められます。

乳がんのサブタイプ

乳がんには分類があるのはご存知ですか?以下に乳がんの種類について解説します。

ホルモン受容体陽性/HER2陰性①ルミナルAタイプ

ルミナルAタイプは、ホルモン受容体が陽性で、HER2陰性、Ki67が低い乳がんの一種です。ホルモンの影響でがん細胞が増殖するため、ホルモン療法が推奨されます。ただし、リンパ節への転移状況やがんの大きさによっては、抗がん剤を使った治療を追加する場合もあります。

ホルモン受容体陽性/HER2陰性②ルミナルBタイプ

ルミナルBタイプは、ホルモン受容体が陽性で、HER2またはKi67のいずれかの発現が高い乳がんを指します。HER2の発現に基づいて、「ルミナルBタイプ・HER2陰性」と「ルミナルBタイプ・HER2陽性」の2つに分類されます。

ホルモン受容体陽性or陰性/HER2陽性:HER2タイプ

HER2タイプは、ホルモン受容体が陰性で、HER2が陽性の乳がんです。ホルモン療法が効果的ではないため、HER2に特化した分子標的薬と抗がん剤による治療が行われます。

ホルモン受容体陰性/HER2陰性トリプルネガティブ

トリプルネガティブは、ホルモン受容体とHER2が共に陰性の乳がんです。手術などの局所療法に加え、全身治療として抗がん剤が用いられます。

トリプルネガティブ乳がんの診断

乳がんの診断方法には、病理検査が重要な役割を果たします。この検査では、がん細胞の内部にある「ホルモン受容体」と、がん細胞の表面にある「HER2タンパク」の存在を確認できます。これにより、乳がんを分類します。

トリプルネガティブ乳がんの原因

トリプルネガティブ乳がんの原因にはどのようなことが関係あるのでしょうか。以下に4点解説します。

遺伝

乳がんや卵巣がんは遺伝的要因が影響を及ぼすことが知られています。特に、親子や姉妹などの近い血縁関係に乳がんの患者がいる場合、リスクは通常の約2倍以上に高まるとされています。また、家族内での患者数が多いほど、リスクはさらに増大します。
乳がんの発症には5-10%程度が遺伝的要因によると考えられており、特に家族内で若年での発症や乳がん、卵巣がんの既往がある場合は、遺伝性乳がんの可能性が高まります。このため、遺伝学的検査(血液検査)により、リスク評価を行うことが推奨されています。検査は保険診療で受けることが可能な場合もあります。
さらに、同じ家庭で生活する人々は食生活や生活習慣が似ているため、生活習慣に起因するリスク要因も共有されがちです。したがって、生活習慣の見直しも乳がん予防には重要です。

肥満

肥満が乳がんのリスクを高める理由について、日本で行われた複数の研究を基に解説します。
肥満の度合いを示すBMI(体格指数)が高いと乳がん発症のリスクが上昇することが、18万人以上を対象にした研究から明らかになっています。具体的には、BMIが27~30の範囲にある女性は、BMIが23~25の女性に比べて、閉経前の乳がんリスクが1.45倍、BMIが30以上では2.25倍になると報告されています。閉経後も、BMIが高い女性ほど乳がんリスクが増加し、BMIが30以上の場合にはリスクが1.34倍になることが確認されています。
また、低いBMIが乳がんリスクの低減と関連していることも分かっており、BMIが21~23の女性はリスクが0.89倍、21以下では0.65倍になるという結果もあります。
肥満により、リスクの増加が見られる主な原因は、「エストロゲン」という女性ホルモンの作用にあります。エストロゲンは通常、卵巣で生成されますが、閉経後は体内の脂肪組織が主な生成場所となります。肥満の女性では脂肪組織が多いため、エストロゲンの分泌量が増え、乳がん細胞の増殖を促進する可能性があります。
成人後に体重が急激に増加した場合にも、乳がんリスクが高まることが指摘されています。

アルコール

過剰なアルコール摂取は、女性ホルモンであるエストロゲンの濃度を上昇させるため、乳がんのリスクを高める要因とされています。さらに、アルコールが体内で代謝される際に生成されるアセトアルデヒドや過酸化脂質、活性酸素などの代謝物は発がん性があり、乳がんリスクを増大させることが考えられます。
短期間に大量のアルコールを摂取する飲酒パターンはエストロゲンの急激な増加を引き起こし、発がん性物質の蓄積につながるリスクが指摘されています。週1回未満の頻度であっても、1回の飲酒量が多い場合には乳がんリスクが上昇する可能性があり、このパターンに関するさらなる研究が必要とされています。

喫煙

喫煙が乳がんリスクを高める理由は、たばこに含まれる約70種類の発がん物質にあります。喫煙によってこれらの物質が体内に吸収されると、血液を通じて全身に広がり、胸部にも到達します。発がん物質が乳腺に入り込むことで、乳腺のDNAに損傷を与え、これが乳がんの発症のきっかけとなり得るのです。
このため、たばこは乳がんだけでなく、他の種類のがん全体に対してもリスクを高めると考えられています。
特に閉経前の女性が喫煙の影響を受けやすいのは、ホルモンが活発に分泌されている時期だからです。閉経後は女性ホルモンの分泌が弱まり、ホルモンの活動が落ち着くため、たばこの影響も相対的に弱くなると考えられています。

トリプルネガティブ乳がんの治療

トリプルネガティブ乳がんの治療は具体的にどのような方法で行われるのか以下に3つ解説します。

手術

・乳房温存手術
乳房全体を切除せず、がんのしこりとその周辺の組織のみを部分的に取り除く手術です。しこりが3cm以下のステージ0~Ⅱの患者が対象となりますが、しこりの位置や乳房の大きさによっては3cm以上でも可能な場合があります。術後には、残った乳房内での再発を防ぐために放射線治療を行いますが、妊娠中や併発疾患により放射線治療ができない場合は適応外となります。
・乳房全切除術
乳頭や乳輪を含め、乳房全体を取り除く手術です。しこりが3cm以上の場合や、がんが広範囲に広がっている場合、または術後の放射線治療が難しい場合に適応されます。乳房温存手術が可能な場合でも、局所再発のリスクが低いことや放射線治療の可能性を減らすために全切除術を選択する患者もいます。全切除術の種類として、乳房の皮膚を残す「皮膚温存乳房全切除術」、乳頭や乳輪を残す「乳頭温存乳房全切除術」があります。
・乳房再建手術
乳房温存手術、全切除術の両方で、患者の希望があれば再建手術が可能です。自家組織を使う方法と人工乳房(インプラント)を使う方法があり、再建の時期は手術と同時に行う「一次再建」と、数ヶ月~数年後に行う「二次再建」の2つのタイミングがあります。再建手術を希望する場合は、事前に医師に相談しましょう。
・腋窩リンパ節郭清
がんがわきの下のリンパ節に転移している場合、そのリンパ節と周囲の脂肪組織を切除する手術です。術前の検査で転移が確認されていない場合は、手術中にセンチネルリンパ節への転移の有無を調べてから、切除の必要性を判断します。場合によっては転移が確認されてもリンパ節の郭清が省略できるケースもあります。

化学療法

放射線治療は、高エネルギーのX線を使ってがん細胞を死滅させたり小さくしたりする治療法です。乳房部分切除術後は、通常、残った乳房組織に放射線を照射します。乳房全切除術後でも、リンパ節に転移が見られる場合には、手術部位全体や鎖骨の上の部分にも放射線を照射することがあります。一般的には、1日1回の照射を週5回行い、4〜6週間かけて治療します。

放射線療法

放射線治療は、乳房やリンパ節に残っている可能性のあるがん細胞を標的にし、術後の再発を予防するための治療です。乳房部分切除後の患者やリンパ節に多数転移がある患者に対して行われます。放射線治療は乳がんの再発防止に影響します。
通常、放射線治療は少量ずつ照射を分けて行い、一般的には16回程度、通院しながら10分程度の短いセッションで受けます。ただし、がんの状況によっては25回ほどになることもあります。具体的な治療スケジュールや時間は、放射線科での診察後に決定されます。
抗がん剤治療を受ける場合は、その治療終了後に放射線治療を始めます。抗がん剤治療を受けない場合は、手術から約5週間後に放射線治療が開始されます。

トリプルネガティブ乳がんの予後

放射線治療は、乳房やリンパ節に残っている可能性のあるがん細胞を標的にし、術後の再発を予防するための治療です。乳房部分切除後の患者やリンパ節に多数転移がある患者に対して行われます。放射線治療は乳がんの再発防止に影響します。
通常、放射線治療は少量ずつ照射を分けて行い、一般的には16回程度、通院しながら10分程度の短いセッションで受けます。ただし、がんの状況によっては25回ほどになることもあります。具体的な治療スケジュールや時間は、放射線科での診察後に決定されます。
抗がん剤治療を受ける場合は、その治療終了後に放射線治療を始めます。抗がん剤治療を受けない場合は、手術から約5週間後に放射線治療が開始されます。

トリプルネガティブ乳がんについてよくある質問

ここまでトリプルネガティブ乳がんを紹介しました。ここではトリプルネガティブ乳がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

トリプルネガティブ乳がんは、温存か全摘のどちらがいいのでしょうか?

上 昌広医師上 昌広(医師)

トリプルネガティブ乳がんの手術に関しては、温存手術と全摘手術のどちらが適しているかは個別のケースによります。トリプルネガティブ乳がんだからといって必ず全摘が必要とは限りません。術前の化学療法後であっても、腫瘍の大きさや位置によって温存手術が可能な場合、局所再発率の上昇は見られないとされています。しかしながら、BRCA1遺伝子変異が陽性である遺伝性乳がんの場合、乳がんの再発や新たな発症のリスクが高いため、全摘が推奨されることがあります。

トリプルネガティブ乳がんは、乳がんの内の何%を占めますか?

上 昌広医師上 昌広(医師)

トリプルネガティブ乳がんは、乳がん全体の約10〜15%を占めるとされています。このタイプはホルモン療法や分子標的療法が効かないため、抗がん剤が唯一の全身治療として用いられることが多いです。

まとめ

ここまでトリプルネガティブ乳がんの原因についてお伝えしてきました。トリプルネガティブ乳がんの原因についての要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

  • ・トリプルネガティブ乳がんは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2がない特定タイプの乳がんで、通常の治療法であるホルモン療法や分子標的療法が効かないため、抗がん剤が主な選択肢となるが、効果が必ずしも保証されるわけではない
  • ・トリプルネガティブ乳がんのリスク要因には、遺伝的要素や肥満、アルコール摂取、喫煙が含まれる。これらは乳がん全体のリスクを増やすため、特にホルモンの影響が強い閉経前は要注意
  • ・化学療法では抗がん剤を使い、放射線療法は高エネルギーのX線でがん細胞を死滅させる。放射線療法は、乳房やリンパ節に残るがん細胞を標的とし、術後の再発防止に役立ち、一般的に1日1回の照射を週5回、4~6週間行う。抗がん剤治療後、または手術から約5週間後に開始される

トリプルネガティブ乳がんと関連する病気

トリプルネガティブ乳がんと関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

乳腺外科の病気

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

トリプルネガティブ乳がんと関連する症状

トリプルネガティブ乳がんと関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乳房のしこり
  • 血性乳頭分泌
  • 乳頭乳輪のただれ
  • 乳房の変形

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師