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「てんかん」治療に希望の光 大麻のイメージ払拭なるか、法改正で実用化の期待高まる

 公開日:2023/12/18
大麻取締法改正で難治性てんかん薬の実用化に注目

大麻取締法などの改正法が2023年12月6日に可決・成立しました。大麻草由来の成分を含む医薬品の使用に道が開けたことで、既存薬で効果が薄い難治性てんかんの治療薬が実用化される可能性に注目が集まっています。このニュースについて中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

可決・成立した改正大麻取締法の内容とは?

可決・成立した改正大麻取締法の内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

改正大麻取締法は、2023年12月6日の参議院で可決・成立しました。改正の背景としては、海外では難治性のてんかんの治療目的などで使用されている大麻由来成分を含む医薬品が、日本では従来の大麻取締法で使用が禁じられていて使えなかったことから、患者などから解禁を求める声がありました。

改正された法律では、大麻草を原料にした医薬品の使用を認めるほか、大麻草の栽培を医薬品などの原料を採取する目的でも認められています。一方で、乱用を防ぐために、麻薬及び向精神薬取締法で取り締まる麻薬に位置付けられました。既に禁止されている所持や譲渡などに加えて使用の禁止を盛り込み、今回の法改正で大麻由来成分の医薬品への利用の道が開けたものの、大麻の取締はより厳格になった形となります。

松野官房長官は、法改正成立後の記者会見で「近年、若年者による大麻の乱用が増加傾向にあることから、今回の改正が乱用の歯止めになることを期待している。また、大麻のみならず薬物全体について、まずは『手を出さない、出させない』という一次予防の取り組みが大変重要で、若者に対する啓発の取り組みを強化していく」と注意喚起をしています。警察庁によると、2022年に大麻の所持や栽培などで全国の警察に検挙されたのは5342人で、過去最多だった2021年の5482人に次いで過去2番目に多くなっているとのことです。また、20代以下の若年層が全体の約70%を占めています。

大麻由来のてんかん治療薬とは?

今回の法改正で注目を集めている大麻由来のてんかん治療薬について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

既存薬が効きにくい難治性てんかん患者から使用解禁の声が上がっていた治療薬は、イギリスのGW Pharmaceuticals社が開発した「エピディオレックス」という薬です。エピディオレックスは大麻草から抽出したCBD(カンナビジオール)が主成分で、既にアメリカとヨーロッパで、「レノックス・ガストー症候群(LGS)」「ドラベ症候群(DS)」「結節性硬化症(TSC)」に対する承認を取得しています。日本には、レノックス・ガストー症候群の患者が約4300人、ドラベ症候群の患者が約3000人、結節性硬化症の患者が約4000~12000人いるとされています。エピディオレックスの治験は日本国内でも進んでおり、現在は第3相試験を実施しています。この試験は上述の疾患の国内の小児および成人患者を対象に、併用療法による治療における有効性と安全性を検証することが目的で、臨床試験は全国21カ所の医療機関で、84人の被験者を対象に実施される予定です。

大麻由来成分の医療分野での活用についての受け止めは?

大麻草由来の成分を含む医薬品の使用に道が開けたことについて、受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

日本における大麻由来の医薬品は、大麻取締法によって医療用を含めて一切の使用が禁じられています。今回、新たな難治性抗てんかん薬の国内承認に向けて、特例として法改正を国が決め、治験が進行中であることは評価されます。元来、てんかんの薬に特効薬はなく、大麻草由来の薬もあくまで抗てんかん薬の1つであり、これをもって「麻薬由来の薬」を特効薬であるかのように特別扱いすることはできません。しかし、てんかんを抑えられない患者さんへの治療に光をもたらすことは明らかで、今後なるべく早い時期にこの新薬が必要な患者さんの手元の届くことを願います。

まとめ

大麻取締法などの改正法が2023年12月6日に可決・成立しました。大麻草由来の成分を含む医薬品の使用に道が開けたことで、既存薬で効果が薄い難治性てんかんの治療薬が実用化される可能性に注目が集まっています。医療分野での活用に期待が集まる一方で、大麻そのものの取り締まりはしっかり強化・実施されることにも注目です。

この記事の監修医師