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増加する「てんかん」 治療せず放置するとどうなるかご存じですか? 早期治療の重要性を解説

 公開日:2025/06/24

「てんかん」は、決して珍しい病気ではなく、早めの診断と治療が大切な疾患だそうです。そこで、てんかんとはどのような病気なのか、放置するとどうなるのか、治療によってどのような改善が見込めるのかなどについて、「あたまと内科のうえだクリニック」の上田雅道先生に解説してもらいました。

上田 雅道

監修医師
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業。名古屋掖済会病院脳神経内科、豊橋市民病院脳神経内科、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学、中部ろうさい病院神経内科医長を経て、あたまと内科のうえだクリニック院長に。医学博士。日本神経学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、愛知県難病指定医、麻薬施用者免許、日本頭痛学会会員、日本認知症学会会員。

「てんかん」とは? 医師が解説

「てんかん」とは? 医師が解説

編集部編集部

てんかんとはどんな病気ですか?

上田 雅道先生上田先生

てんかんは脳に過剰な電気信号が発生し、けいれん発作を繰り返す慢性の病気です。発作の頻度や重症度には個人差があり、数年に一度のものから頻繁に起こるものまで程度はさまざまです。

編集部編集部

どのような発作が起こるのですか?

上田 雅道先生上田先生

代表的な発作には「全般発作」と「焦点発作」があります。全般発作は脳全体で過剰な電気信号が発生し、意識を失い、全身がけいれんするのが特徴です。一方、焦点発作は脳の一部で過剰な放電が起こり、体の一部が勝手に動いたり、ぼんやりしたりすることがあります。発作の種類によっては、周囲が気づきにくい場合もあります。

編集部編集部

「気づきにくい発作」とは、例えばどんなものですか?

上田 雅道先生上田先生

たとえば、前述のとおりぼーっとしていたり、意味のない動作(口をもぐもぐ動かす、服のボタンを触るなど)を繰り返していたりする発作もあり、周囲から見ると「ぼんやりしている」「考えごとをしている」と思われてしまって、発作だと気づかれにくいことがあります。これらの発作はご家庭や学校、職場などで周囲が気づかずに過ごしてしまうこともあり、病院の受診や診断が遅れる原因となります。

決して珍しい病気ではないてんかん、放置しておくとどうなる?

決して珍しい病気ではないてんかん、放置しておくとどうなる?

編集部編集部

てんかんの人は多いのですか?

上田 雅道先生上田先生

てんかんは決して珍しい病気ではなく、約100人に1人が発症するといわれています。全年齢で発症する可能性はありますが、特に小児と高齢者に多くみられます。高齢化に伴い、脳卒中や認知症に関連したてんかんの患者数も増加傾向にあります。

編集部編集部

そもそも、なぜてんかんになるのですか?

上田 雅道先生上田先生

てんかんの原因はさまざまです。先天的な脳の異常、脳卒中や頭部外傷の後遺症、脳腫瘍、感染症などが原因となることがあります。また、遺伝的な要因が関与する場合もあります。一方で、明確な原因が特定できないケースも少なくありません。

編集部編集部

てんかんを放置するとどうなりますか?

上田 雅道先生上田先生

てんかんを放置すると、発作の頻度が増えたり、発作が重くなったりすることがあります。発作中の転倒、運転中や入浴中の発作による事故や溺水のリスクも高まります。また、発作を繰り返すことで脳にダメージが蓄積し、認知機能が低下することもあるため、早期発見と適切な治療が重要です。思い当たる症状がある人は、医療機関に相談することをお勧めします。

編集部編集部

病院ではどんな検査をしますか?

上田 雅道先生上田先生

まず、問診で発作の様子や頻度を詳しく聞き取りします。その後にCTやMRI検査で脳の異常がないかを調べます。血液検査で発作を起こす原因がないか調べ、脳波検査で脳の電気活動を測定し、てんかんの特徴的な波形が見られているかを確認します。場合によっては、長時間の脳波モニタリングをおこない、発作のタイミングを詳しく観察してその発作がてんかんによるものか、それ以外の原因(心因性など)によるものか見分けることもあります。

てんかんとうまく付き合っていくには?

てんかんとうまく付き合っていくには?

編集部編集部

てんかんの治療法を教えてください。

上田 雅道先生上田先生

てんかんの主な治療は、抗てんかん薬の服用です。薬が効かない場合は、手術が検討されることもあります。また、生活習慣の改善も発作予防には重要です。

編集部編集部

生活習慣と関係があるのですね。

上田 雅道先生上田先生

はい。睡眠不足、過度のストレス、飲酒、薬の飲み忘れなどは、発作を引き起こす要因となるため、規則正しい生活を心がけることが大切です。また、運転や高所作業、入浴時の安全対策をおこなうなど、万が一の発作に備えることも重要です。

編集部編集部

薬はずっと飲み続けなければならないのですか?

上田 雅道先生上田先生

てんかんの種類や発作のコントロール状況によりますが、発作が完全に消失し、一定期間(2~5年)経過した場合は、医師の指示のもとで徐々に薬を減らすことも可能です。ただし、自己判断で薬を中止すると発作が再発するリスクがあるため、必ず医師と相談しながら治療を進めることが大切です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

上田 雅道先生上田先生

てんかんの発作を繰り返す場合は薬物治療が必須なので、定期的な通院が必要です。てんかんと診断されると自動車の運転や仕事の内容に制限がかかることもありますが、日々きちんとフォローしていけば周りと変わらず日常生活を送れるので、過剰に怖がらずに医師へ相談してほしいと思います。

編集部まとめ

てんかんは適切な治療で発作をコントロールできる可能性が高い疾患です。放置すると日常生活に支障をきたすリスクもあるため、早めの診断と治療が大切になります。また、一見すると発作とはわかりにくい症状もあるため、あきらかな発作の有無にかかわらず、不安な症状のある人は、専門の医療機関に相談することをお勧めします。

医院情報

あたまと内科のうえだクリニック

あたまと内科のうえだクリニック
所在地 〒491-0871 愛知県一宮市浅野南之川38
アクセス 名岐バイパスの交差点「下浅野」を東側に曲がり、1本目の道路を左に曲がるとすぐ
診療科目 脳神経内科、循環器内科、内科

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