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孤独が健康に与える影響は「1日15本分の喫煙」に相当、心臓病・脳卒中リスク増加にも関連

 公開日:2023/12/05
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WHO(世界保健機関)は、「孤独」を差し迫った健康上の脅威として、警鐘を鳴らしました。優先事項として社会的つながりを促進し、あらゆる所得の国での解決策の拡大を加速するため、「社会的つながりに関する委員会」を設置すると発表しました。このニュースについて、稲川医師に伺いました。

稲川 優多

監修医師
稲川 優多(医師)

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自治医科大学勤務。医学博士、公認心理師。日本精神神経学会精神科専門医・指導医・認知症診療医、日本老年精神医学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医。

WHOが発表した内容とは?

今回、WHOが発表した内容について教えてください。

稲川 優多医師稲川先生

WHOは「孤独」を差し迫った健康上の脅威として、社会的つながりに関する委員会を新たに設置することをプレスリリースで発表しました。委員会は、あらゆる年齢層の人々の健康増進において社会的つながりが果たす中心的役割を分析し、社会的つながりを構築するための解決策を模索していくとのことです。また、社会とのつながりがいかにコミュニティや社会の幸福を高め、経済的進歩、社会的発展、イノベーションの促進に役立つかを検討していきます。

共同議長であるヴィヴェック・マーシー氏は「世界中で社会的孤立と孤独の割合が高いことは、健康と幸福に深刻な影響を及ぼす。社会的なつながりを十分に持たない人々は、脳卒中、不安、認知症、うつ病、自殺などのリスクが高い。この委員会は、社会的なつながりを優先事項として確立し、最も有望な介入策を共有するのに役立つだろう」とコメントしています。社会的つながりに関する委員会は、WHOに事務局を置き、2023年12月6日から8日まで、最初のトップレベルの会合を開く予定です。最初の主要な成果は、3年間のイニシアチブの中間点までに発表されることも併せて予定されています。

孤独が人々の健康に与える影響とは?

孤独が人々の健康に与える影響について教えてください。

稲川 優多医師稲川先生

今回WHOが発表した「社会的つながりに関する委員会」の共同議長のヴィヴェック・マーシー氏が2023年5月に公開した「Our Epidemic of Loneliness and Isolation」と題したレポートによれば、孤独の健康への悪影響は、1日15本の喫煙にも相当するそうです。例えば、「社会的つながりが乏しいあるいは不十分な状態は、心臓病リスクを29%、脳卒中リスクを32%増加させ、不安、うつ病、認知症、呼吸器系疾患、ウイルス感染のリスクも高める」という研究結果が、同レポートには引用されています。

また、最近の研究では社会的サポートと炎症についての関係性について、合計7万3000人以上の被験者を調査し、社会的サポートが強いほど炎症のレベルが低いことが有意に関連していることが発見されました。研究者たちは「炎症は、社会的サポートや社会的統合を病気の発症や経過に結びつける、少なくとも1つの重要な生物学的メカニズムである」と大胆に明言しています。

このような調査結果は「心身相関」の重要性を改めて強調するものであり、心の中で起きたことは必ずしも心の中に留まらずに、身体全体の働きに大きく影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。また、WHOのプレスリリースでも、「社会的孤立による社会的苦痛は広く蔓延している」と指摘しています。高齢者の4人に1人が社会的孤立を経験しており、青少年の間では5~15%が孤独を経験しているというデータも示されています。WHOによると、こうした数字は過小評価である可能性が高く、もっと多い割合である可能性も示唆されています。

発表内容への受け止めは?

WHOの発表した内容についての受け止めを教えてください。

稲川 優多医師稲川先生

これまでの医学研究は、全ゲノム解析に代表されるように、個を対象とした研究が主流でした。しかし、とりわけ精神科領域では、遺伝子解析だけで説明できる疾患は乏しく、環境との相互作用が重要であることが近年改めて認識され始めています。今回、WHOが発表した社会的孤立への対策の重要性は、心身相関という領域横断的な概念を改めて問い直すものであり、人々の健康に携わる全ての人に貴重な示唆を投げかけるものでもあります。

まとめ

WHOが設置を発表した委員会が、社会的つながりに関する世界的な課題を定義し、現在および将来の世代の幸福を促進する、生産的で回復力のある安定した経済を生み出すためにどのような活動をおこなっていくのか注目です。

この記事の監修医師