アルツハイマー治療薬「レカネマブ」 米で正式承認、日本は今秋に承認へ
2023年7月6日、FDA(アメリカ食品医薬品局)は日本の製薬会社大手エーザイとアメリカの医薬品会社大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」を正式に承認したことを発表しました。このニュースについて中路先生にお話を伺います。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
今回のニュース内容とは?
今回のニュース内容について教えてください。
中路先生
今回のニュースは、製薬会社大手のエーザイがアメリカのバイオジェンと共同開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」について、FDAが正式に承認したことを発表したという内容です。
エーザイはFDAに対して迅速承認制度に基づいてレカネマブを申請しており、レカネマブの優先審査も求めていました。FDAは2023年1月に中間段階の臨床試験結果に基づいて迅速承認していましたが、エーザイが「症状悪化を27%抑制した」とする最終段階の臨床試験結果をFDAに追加提出し、審査が続いていました。2023年6月に開かれたFDAの諮問委員会では、全会一致で正式承認を支持する勧告が出されました。アメリカの高齢者向け公的医療保険「メディケア」の適用には正式承認が必要ですが、エーザイの正式承認によって、アメリカで2024年3月末までに1万人以上がレカネマブの投与を受けると見込んでいます。
今回の正式承認についてエーザイCEOの内藤晴夫氏は会見を開き、「アルツハイマー病の根本病理に関わる治療薬をアメリカに届けられる。万感胸に迫る思いだ。介護負担も大幅に軽減できる」とコメントしています。エーザイはアメリカ以外に、日本、EU、中国、カナダ、イギリス、韓国で承認申請しています。日本では2023年の秋までに審査結果が出る見通しで、承認されれば公的保険診療の中で使用されるとみられます。
レカネマブとは?
今回FDAが正式に承認したレカネマブについて教えてください。
中路先生
アルツハイマーは「アミロイドβ」という老廃物が脳に溜まることで起きる病気です。アミロイドβが蓄積されていくと「プロトフィブリル」と呼ばれる塊になります。抗アミロイドβ薬であるレカネマブは、薬の成分がプロトフィブリルに作用して目印の役割を果たし、そこに体内の免疫細胞が集まって攻撃します。856人が参加したレカネマブの中期治験では、同薬の投与によってアミロイドβの減少が大半の参加者で確認されたとされています。
レカネマブの正式承認への受け止めは?
FDAがレカマネブを正式に承認したことに対して受け止めを教えてください。
中路先生
レカネマブは、アルツハイマー病の根本原因をターゲットとして初めて有用性を示したエポックメイキングな薬剤として注目されています。今回、FDAに正式承認されたことにより、今後は日本を含めた他国での承認も加速されると思われます。ただし、レカネマブは時間を遡って元の認知機能に戻す薬剤ではなく、効果は優れるもののあくまで従来の薬剤と同様に進行を遅らせる薬剤であることは認識すべきです。
日本での正式承認にあたっては、「適応される患者の見極め」「各種検査体制の充実」「脳浮腫や出血などの副作用に対応できる専門医の確保」など、十分な周辺環境の整備が必要であると思われます。
まとめ
FDAが日本の製薬会社大手エーザイとアメリカの医薬品会社大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の正式承認を発表したことが今回のニュースでわかりました。日本でも秋頃には承認申請の可否が出されるとみられており、今後も注目が集まりそうです。