ピロリ菌感染による「胃がん」リスク 遺伝要因で一層高まることが判明
理化学研究所らの研究グループは、「胃がんが発症しやすくなる遺伝子変異を持つ人の一部がピロリ菌に感染すると、胃がんのリスクが一層高まる」と発表しました。発表内容は総合医学雑誌「The New England Journal of Medicine」に掲載されました。このニュースについて竹内医師に伺いました。
監修医師:
竹内 想(医師)
研究グループが発表した内容とは?
今回、理化学研究所らの研究グループが発表した内容について教えてください。
竹内先生
今回紹介するのは理化学研究所らによる研究グループがおこなった研究で、総合医学雑誌「The New England Journal of Medicine」に掲載された内容となります。
研究グループは日本の1万1000人以上の胃がん患者のグループと4万4000人以上の対照グループを用いて、大規模な症例対照研究をおこないました。理研が独自に開発したゲノム解析手法が用いられ、バイオバンク・ジャパンおよび愛知県がんセンター病院疫学研究により収集された胃がん患者群と非がん対照群のDNAについて、27個の遺伝性腫瘍に関連する遺伝子を解析しました。バイオバンク・ジャパンのデータ解析により、9個の遺伝子の病的バリアントが胃がんリスクに関連することが示され、遺伝子ごとの臨床的な特徴が明らかになりました。
これらの遺伝子の病的バリアントと、胃がんのリスク因子として知られるピロリ菌の感染情報を組み合わせて愛知県がんセンター病院疫学研究のデータを解析した結果、BRCA1・BRCA2遺伝子などの相同組換え修復機能に関わる遺伝子群の病的バリアント保持者は、非保持者と比較してピロリ菌感染による胃がんリスクへの影響がより強くなることが明らかになりました。
研究結果の受け止めは?
今回の理化学研究所らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。
竹内先生
胃がんとピロリ菌の関係が深いことは知られていますが、ピロリ菌感染だけでなく遺伝子変異も関係あることが今回の大規模な症例対象研究で示されました。
今回臨床現場で応用するために必要な点は?
今回の研究成果は、診断の精度向上、原因遺伝子を標的とした治療法開発、適切な胃がんの予防対策など、胃がんのゲノム医療の構築に寄与するものと期待できますが、今後臨床現場で応用していくために必要なことを教えてください。
竹内先生
特定の病的バリアントを保因する人においては、ピロリ菌感染検査の重要性がより高くなります。そのため、このような保因者をどのように見つけるかの体制を構築することが今後の重要な課題になると思われます。
まとめ
理化学研究所らの研究グループは、「胃がんを発症しやすくなる遺伝子変異を持つ人の一部がピロリ菌に感染すると、胃がんのリスクが一層高まる」と発表しました。胃がんは日本でも多くみられるがんの1つで、今後もこうした研究が進むことが期待されています。