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HPVワクチン「積極的勧奨」再開も実施率30%と伸び悩み

 公開日:2023/03/01
HPVワクチンの「積極的勧奨」再開するも実施率伸び悩み

子宮頸がんなどの主な原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)を予防するワクチンについて、2022年度から「積極的勧奨」が再開しています。しかし、産経新聞が厚生労働省などへの取材で「実施率が30%に伸び悩んでいる」という現状を明らかにしました。このニュースについて前田医師に伺いました。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

HPVワクチンとは?

まず、厚生労働省で議論の対象になったHPVワクチンについて教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

HPVワクチンは、子宮頸がんの主な原因であるHPVの感染を予防するためのものです。日本において、子宮頸がんは20~40代を中心に患者数が増えており、厚生労働省によると毎年およそ1万1000人の女性が子宮頸がんになり、約2800人が亡くなっている病気です。

HPV感染の主な原因は性交渉とされていることから、予防のためには性交渉を経験する前にワクチンを接種することが最も有効と言われています。現在、小学6年生から高校1年生までの女性が定期接種として無料接種できる「サーバリックス」と「ガーダシル」という2種類のワクチンは、200種類以上のタイプがあるHPVのうちの子宮頸がんを引き起こしやすいHPV16型と18型の感染を防ぐことができます。HPVワクチンを6カ月間で3回接種することによって、子宮頸がんを50~70%を防ぐことができるとされています。

日本では2013年4月にHPVワクチンが定期接種化されたものの、接種後に体の痛みなどを訴える声が相次ぎ、同年6月に積極的勧奨が中止されたという経緯がありましたが、2022年度から積極的勧奨が再開しています。

産経新聞が厚生労働省に取材した内容とは?

今回、産経新聞が厚生労働省に取材した内容について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

産経新聞によると、HPVワクチンは間隔を空けて3回接種する必要がありますが、2022年4月から9月に1回目の定期接種を終えた人は約16万人で実施率は30.1%に留まっていたとのことです。また、積極的勧奨の中断期間に接種対象だった世代の女性をカバーするキャッチアップ接種については、1回目の接種者は約20万人だったとのことです。

今回の報道の受け止めは?

実施率が30%程度に止まっている状況が報じられましたが、受け止めを教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

2019年までに3回接種を完了した率(1.9%)より大きく増加しましたが、欧州では多くの国で接種完了率が60~80%であることを考えればまだまだ低いと言えます。子宮頸がんはワクチンによって予防可能とわかっており、接種率向上のための取り組みが求められます。海外での接種率向上の取り組みについて、接種率が一時低下したもののその後80~90%まで再上昇したアイルランドやデンマークの例からは、政府主導での情報提供やSNS活用の必要性が読み取れます。

こうした情報を接種対象となる10代、20代およびその親世代である30~50代に、どう利用してもらうかを考える必要があります。そのためには、各世代が接種について何をハードルと感じているか、何を情報源としているかなどを踏まえた上で、実際にキャンペーンをおこないながら内容をブラッシュアップしていくことが重要であり、どのようにして非医療者目線を取り入れるかが鍵となるでしょう。

まとめ

子宮頸がんなどの主な原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)を予防するワクチンについて、2022年度から「積極的勧奨」が再開していますが、産経新聞が厚生労働省などへの取材で「実施率が30%に伸び悩んでいる」ことを明らかにしたのが今回のニュースでわかりました。子宮頸がんは国内で毎年約1万人が発症、約3000人が死亡している病気で、今後はより多くの啓蒙活動が必要になりそうです。

この記事の監修医師