FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. NEWS
  3. HPVワクチン 接種9年後の感染予防効果を確認

HPVワクチン 接種9年後の感染予防効果を確認

 更新日:2023/03/27
HPVワクチン 接種9年後の感染予防効果を確認

新潟大学の研究グループは、高リスク型HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染に対するHPVワクチン接種から約9年経過した25歳時点でHPV16/18型の感染者を認めず、長期予防効果が実証されたことを医学雑誌「Cancer Science」に報告しました。このニュースについて前田先生にお話を伺います。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

プロフィールをもっと見る
東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

研究グループが報告した内容とは?

今回、新潟大学の研究グループが報告した内容について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

今回報告をおこなったのは、新潟大学の研究グループです。研究グループは、日本でのHPVワクチン接種をめぐる25歳以上の女性における長期的な有効性に関する報告がないことから、HPVワクチン接種から約9年が経過した25歳時点における長期の感染予防効果を検証しました。対象となったのは、1993~94年に出生し、2019年4月~20年3月に新潟市内で子宮頸がん検診とHPV検査を受けた25~26歳の女性429例です。このうち150例はHPVワクチンの接種歴があり、279例は接種歴がありませんでした。HPVワクチン接種からHPV検査までの平均期間は102.7カ月、中央値は103カ月で、ワクチン接種群と非接種群で初回性交年齢および、過去の性交経験人数に有意差はありませんでした。

ワクチン接種をしたグループとワクチン接種をしていないグループでのHPV感染率を比較すると、2価ワクチンが標的とする16/18型の感染率は、ワクチン接種をしていないグループでは5.4%だったことに対して、ワクチン接種をしたグループでは0%と有意に低くなり、ワクチンの有効率は100%であることが示されました。また、HPV31/45/52型の感染率も、ワクチン接種をしていないグループでは10.0%でしたが、ワクチン接種をしたグループでは3.3%と有意に低く、有効率は69.0%とクロスプロテクション効果も持続していることが示されました。

報告に対する受け止めは?

新潟大学の研究グループが報告した内容について、有用性などについての受け止めを教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

子宮頸がんワクチンの効果について海外からは多くの報告がありますが、日本における長期的なHPV予防効果を示した論文ということで非常に重要な報告です。また、ワクチンの対象となる型、今回の場合はHPV16/18型以外にも予防効果を認めたというクロスプロテクション効果の報告も重要です。現在、日本ではHPVワクチン接種の積極的勧奨が再開し、接種の機会を逃した人が打てるのは2価・4価のワクチンで、一方でさらに多くのHPVをカバーできる9価のワクチンが海外では主流になっていますが、2価のワクチンでもほかの型のHPVを予防できる可能性が高まるということで、現在のキャッチアップ接種を積極的におすすめできる結果と言えます。

HPVワクチン接種で留意すべき点は?

HPVワクチンを接種する際に留意すべき点を教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

厚生労働省からキャッチアップ接種についての公費助成が開始となっています。ご自身が対象となるかどうか、いつまでに受ければよいかなどをHPで確認することをおすすめします。また、キャッチアップ接種の対象とならない年齢の人でもHPVワクチンの効果が期待できる場合もあります。接種を検討される人は、ぜひ調べてみてください。

まとめ

新潟大学の研究グループが高リスク型HPV 感染に対する長期予防効果を検証し、HPVワクチン接種から約9年経過した25歳時点でHPV16/18型の感染者を認めなかったと発表したことが今回のニュースでわかりました。厚生労働省は今年4月から12~16歳の女子に対してのHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開しましたが、今回の研究のような科学的根拠は接種対象者に有意義な情報になりそうです。

この記事の監修医師