1. Medical DOCTOP
  2. NEWS
  3. 「新型コロナ重症化」の引き金となる可能性がある分子を発見 横浜市立大学研究グループ発表

「新型コロナ重症化」の引き金となる可能性がある分子を発見 横浜市立大学研究グループ発表

公開日:2023/01/23
コロナ重症化の引き金の可能性がある分子を発表

横浜市立大学の研究グループは「発症後の早い段階で細胞死を起こした肺胞上皮細胞から放出される分子が新型コロナウイルス重症化の引き金となっている可能性がある」と発表しました。このニュースについて竹内医師に伺いました。

竹内 想 医師

監修医師
竹内 想(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部附属病院にて勤務。専門領域は皮膚科、美容皮膚科。

横浜市立大学の研究グループの発表内容とは?

横浜市立大学の研究グループの発表内容について教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

今回紹介する研究は横浜市立大学のグループによるもので、「ARDS(急性呼吸窮迫症候群)となった新型コロナウイルスの重症患者は、発症後早期に起こる胞上皮細胞の傷害が重症化を誘発する」との仮説を検証しました。

研究グループは横浜市立大学附属病院に入院した新型コロナウイルスの重症患者をARDSグループと非ARDSグループに分けて、健康な対照グループと比べて、肺胞上皮細胞における細胞死のメカニズムについて検討しました。

血液中および気管支肺胞洗浄液中の肺組織傷害特異的マーカーを解析した結果、ARDSグループでは、発症後早期に主にネクローシス、つまり細胞内のDAMPs(ダメージ関連分子パターン)を放出して炎症を引き起こすことによる細胞死が原因で、肺胞上皮細胞死が引き起こされていることが分かりました。また、ARDSグループでは、ネクローシスを起こした細胞から放出される代表的なDAMPsであるHMGB1(核内タンパク質分子)の血中濃度の上昇も認められたとのことです。次に、新型コロナウイルスの動物モデルを用いて肺胞上皮細胞の詳細な細胞死のメカニズムを検討したところ、ネクローシスおよびパイロトーシスと呼ばれる分子的に制御されたネクローシスが生じました。この動物モデルに抗HMGB1抗体を投与したところ、肺組織傷害が軽減されたそうです。

こうした結果から研究グループは「細胞死を起こした肺胞上皮細胞から放出されるDAMPsが、新型コロナウイルス重症化を防ぐ上で有望な治療標的である可能性が示された」としています。

発表内容への受け止めは?

細胞死を起こした肺胞上皮細胞から放出される分子が新型コロナウイルス重症化の引き金となっている可能性があることを明らかにした横浜市立大学の研究グループの発表内容について、どれくらい重要な指摘であるかなどの受け止めを教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

新型コロナウイルスの重症例ではなぜ細胞死が引き起こされるのかについて、それに関わるメカニズムの一部が明らかになりました。今回の研究結果によって、重症化がなぜ生じるのか、そして重症化予防に有効な方法についての研究が進むことが期待されます。

今後、どのような追加研究が期待できる?

今回の発表内容について研究グループは「DAMPsを標的とすることで、重症化が予防できる可能性があり、新規治療薬開発への足がかりになることが期待される」ともコメントしていますが、今後どのような追加研究が期待できますか?

竹内 想 医師竹内先生

今回の研究で、肺胞上皮細胞の細胞死自体を防ぐことは難しくても、その後に生じるDAMPsを標的とする治療が少なくとも動物モデルでは一定の効果を上げることが示されました。今後、ヒトでこの結果が応用できるかどうかが期待されます。

まとめ

横浜市立大学の研究グループが、「発症後の早い段階で細胞死を起こした肺胞上皮細胞から放出される分子が新型コロナウイルスの重症化の引き金となっている可能性がある」と発表したことが分かりました。研究グループは新規治療薬の可能性も示唆しており、今後の研究にも注目が集まりそうです。