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世界初のmRNA活用「がんワクチン」 10年以内に利用できるようになる可能性を示唆

 更新日:2023/03/27
ビオンテックCEO “がんワクチン”を10年以内に利用できる可能性示唆

mRNAを活用した新型コロナウイルスワクチンをファイザー社と開発したドイツのビオンテック社のCEOらがテレビ出演し、がんを標的にしたワクチンが10年以内に利用できる可能性を示して注目が集まっています。このニュースについて中路医師に伺いました。

中路 幸之助 医師

監修医師
中路 幸之助(医師)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ビオンテックCEOの発言内容とは?

新型コロナウイルスワクチンをファイザー社と開発した、ドイツのビオンテック社のCEOらがテレビ出演で語った内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

ドイツ企業のビオンテック社のウール・シャヒンCEOとオズレム・テュレジCMO(チーフメディカルオフィサー)夫妻は、BBCの「Sunday with Laura Kuenssberg」に出演し、がんを対象にした“がんワクチン”についてインタビューに答えました。「mRNAを利用したがんワクチンが患者に使用できるようになるのはいつか?」という質問に対して、シャヒンCEOは「2030年までには利用できるようになるだろう」と回答し、10年以内に実際に治療現場で利用できるようになる見通しを示しました。

ビオンテック社は、新型コロナウイルスへのmRNAワクチンで一躍世界に名前が知られることになりましたが、パンデミック発生以前からmRNAを活用したがんワクチンの開発に取り組んでいました。新型コロナウイルスの世界的な流行を受けて、新型コロナウイルスワクチンの製造に軸足を移しましたが、テュレジCMOは新型コロナウイルスワクチンへの対応が「我々のがん研究に還元される」と番組でコメントしていました。がんワクチンについて積極的に話す一方で、テュレジCMOは「科学者として、我々は常にがんの治療法があると言うことをためらっています」と研究については慎重な姿勢を崩さない様子を見せました。その上でテュレジCMOは「我々は多くのブレークスルーを持っており、我々はそれらに取り組み続けます」と話しました。

mRNAを用いたがんワクチンとは?

今回、ビオンテックのCEOらがテレビで語った、mRNAを用いたがんワクチンについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

ビオンテックは2022年4月、mRNAを用いた新たながん治療法について、初期段階の治験で有望なデータが得られたと発表しています。発表されたのは、患者から免疫細胞を取り出して遺伝子操作でがんへの攻撃力を高めて再び体内に戻す「CAR-T細胞療法」に、がん細胞の表面にあるタンパク質を認識して反応するよう免疫系を訓練するmRNAワクチン「CARVac」を組み合わせた新治療法です。「CARVac」によって「CAR-T細胞療法」の効果が増幅し、遺伝子操作した細胞が腫瘍内に入り込んでがん細胞を攻撃できるようになることが示唆されました。

テュレジCMOは、このとき発表された結果について「進行した精巣がんなど予後不良で治療困難な固形がんとの戦いでは、がん細胞上のマーカーを標的にするのが良い戦略だという当社の仮定を支持するもの。暫定データからは、CAR-T細胞療法は血液がんと同様に固形がんでも成功する可能性があることが示唆された」との見解を示しています。

mRNAを用いたがんワクチンに期待する点は?

mRNAを用いたがんワクチンに期待する点を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

従来の免疫療法以外のがんの治療法においては、正常な細胞も攻撃してしまう問題がありました。一方でmRNAを用いたがんワクチンは、がん細胞のみが作る固有のタンパク質を、免疫システムは集中的に異物として認識することによって、その効果が出ます。すなわち、がんだけをピンポイントで攻撃することが可能になると考えられています。そのため、mRNAワクチンを加えた免疫療法であれば、副作用を軽減できるのではないかと期待されています。また、mRNAがんワクチンは患者自身のがん細胞の遺伝子をもとにして作られるため、患者に合わせたオーダーメイドなワクチンを作れるようになると考えられています。

まとめ

mRNAを活用した新型コロナウイルスワクチンをファイザー社と開発したドイツのビオンテック社のCEOらは、がんを標的にしたワクチンが10年以内に利用できる可能性を示したことが今回のニュースでわかりました。mRNAを用いた新たながんの治療法に今後も注目が集まりそうです。

この記事の監修医師