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塩野義製薬のコロナ飲み薬、承認見送り継続審議

 更新日:2024/03/08
塩野義製薬の新型コロナ飲み薬 承認見送り継続審議

厚生労働省の薬事分科会と専門家部会の合同会議は、塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」について、承認を見送って継続審議にすると決定しました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

厚生労働省が決定した内容とは?

塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬について、厚生労働省の専門家分科会が決定した内容を教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

今回の決定は、7月20日に開かれた厚生労働省の薬事分科会と専門家部会の合同会議でおこなわれたものです。審議会では、塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」の承認についての議論がおこなわれました。ゾコーバをめぐっては、2022年5月に新しく作られた緊急承認制度という、中間段階の臨床試験結果でも安全性が確認されて有効性を推定できれば暫定的に承認する仕組みを活用して申請されていました。合同会議の中では、新型コロナウイルスの第7波拡大による危機感やウイルス量を減少させる効果などに関連して承認に前向きな意見もありましたが、胎児に影響が出る恐れやオミクロン株への有効性など慎重な意見が出たことから、「有効性が推定されるという判断はできない」などの理由で現時点で承認を見送り、継続審議とすることを決定しました。塩野義製薬は最終段階の臨床試験を秋を目処に進めており、厚生労働省はこの最終段階の試験結果の提出を待ち、改めて承認の可否を判断する方針です。

審議対象になった「ゾコーバ」とは?

新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

ゾコーバは、塩野義製薬が開発を進めている新型コロナウイルスの治療薬です。ウイルスの増殖を抑制する薬で、軽症者や無症状者向けの飲み薬となります。感染初期に1日1回、5日間自宅などで服用することで重症化を防ぐ効果が期待されています。塩野義製薬はオミクロン株の感染拡大期を中心に、12歳以上の軽症から中等症患者428人を対象に臨床試験を実施してデータ分析しました。その結果、投与を3回受けた後では感染性のあるウイルスが検出された人の割合が10%未満となり、偽薬を服用したグループよりも低くなったということです。また、せきや喉の痛み、鼻水・鼻づまり、息切れ、熱っぽさなどの5つの症状が、偽薬を服用したグループと比べて改善が見られました。ただし、当初設定していた評価項目の下痢や吐き気などを加えた12の症状を合わせて比較すると、偽薬グループと比べて明確な差は出ない結果となっています。

患者が急増する中、飲み薬の選択肢が広がる意義は?

新型コロナウイルスの第7波で患者が急増していますが、そうした中で飲み薬が新たに承認されて選択肢が広がることには、どのような意義があるのでしょうか?

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症に対する新薬「ゾコーバ」は、国内の製薬会社が開発した軽症の段階で使用できるはじめての飲み薬です。新型コロナウイルスは感染すると細胞内に侵入して、ウイルスそのもののRNAをコピーして増殖していきます。この新たな薬では、ウイルスのRNAコピーの準備段階で働く酵素を機能しなくすることでウイルスの増殖を抑える作用を発揮します。

新規感染者数の急速な増加の継続も懸念される中、現在すでに2種類の飲み薬300万人分以上が医療現場に供給可能となっていますが、コロナ禍の前の日常に戻れるかどうかに関する大きな鍵の1つが飲み薬の普及です。現状では必ずしも多くの人が飲み薬を飲むことができませんので、複数の選択肢の中から適切かつ早期に薬剤を提供できる体制を構築することで感染対策に万全を期す必要性があると考えられます。

まとめ

厚生労働省が、塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」について、承認を見送って継続審議にすると決定したことが今回のニュースでわかりました。今後、最終的な試験結果を見て改めて判断されるということで、この先も注目が集まりそうです。

この記事の監修医師