「川崎病」発症リスク、心血管疾患の家族歴で上昇
韓国のチャ医科大学の研究グループは、川崎病の発症リスクについて検証した結果、CVD(心血管疾患)の家族歴が川崎病の発症リスク上昇と関連していたと学術誌「Journal of the American Heart Association」に発表しました。このニュースについて武井先生にお話を伺います。
監修医師:
武井 智昭(医師)
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
目次 -INDEX-
研究グループが発表した内容とは?
今回、韓国のチャ医科大学の研究グループが発表した内容について教えてください。
武井先生
今回の研究は、韓国のチャ医科大学の研究グループによるものです。研究グループは全身の炎症を伴う急性熱性疾患である川崎病について、糖尿病や高血圧などの家族歴が発症リスクにどのような影響を与えているかを検証しました。対象になったのは、韓国で2008~2009年に生まれて出生コホート研究に登録され、かつ生後54~60カ月時に実施されたスクリーニングに参加した新生児49万5215例です。スクリーニング時の質問票で、高血圧、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病の家族歴の情報を取得したそうです。その結果、CVDの家族歴があるグループ12万2669例とCVDの家族歴がないグループ12万2669例に分けられました。CVD家族歴の内訳は、高血圧40.5%、糖尿病33.9%、脳卒中8.3%、心筋梗塞6.9%、脂質異常症2.6%で、CVD家族歴の保有数は1~2種が87.1%、3種以上が12.9%でした。対象のうち0.61%にあたる2998例が川崎病を発症しました。
CVDの家族歴があるグループとCVDの家族歴がないグループの川崎病発症リスク比は1.20となり、CVDの家族歴があるグループで有意なリスク上昇が示されました。研究グループは「今回の検討は、CVD家族歴が川崎病発症リスクと有意に関連したことを示した初めての研究である」としています。
川崎病とは?
今回の研究対象になった川崎病について教えてください。
武井先生
川崎病は、4歳以下の乳幼児に多くみられる原因不明の病気です。全身の血管に炎症が起きて、様々な症状が出ます。「高熱」「両側の眼球結膜の充血」「真っ赤な唇と苺のようにブツブツの舌」「体の発赤疹」「手足の腫れ」「首のリンパ節の腫れ」の6つの症状のうち、5つ以上の症状があれば川崎病と診断します。また、小さなお子さんにBCGを注射した場所が赤く腫れあがることも、特徴的な症状の1つですね。
川崎病にかかったお子さんの約1%は、血管になんらかの瘤(こぶ)ができてしまいます。その結果、狭心症や心筋梗塞を起こす危険性が高まります。とくに大きな冠動脈瘤を残してしまった場合は、心筋梗塞を予防するために一生、血液が固まりにくい薬を飲み続ける必要があります。
発表内容への受け止めは?
韓国のチャ医科大学の研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。
武井先生
川崎病は原因不明の血管炎とされております。その一方で、生活習慣病も動脈硬化などの血管病変が契機となっているため、何かしらの共通要因があるのかもしれません。今後の研究成果が期待されます。
まとめ
韓国のチャ医科大学の研究グループがCVD(心血管疾患)の家族歴が川崎病の発症リスク上昇と関連していたと学術誌で発表したことが今回のニュースでわかりました。川崎病は日本でも1万人を超える新規患者がいるので、今回の研究結果は注目を集めそうです。