新型コロナウイルス全国で再び増加、BA.5で感染拡大の懸念も
6月30日に開催された厚生労働省の専門家会合で、新型コロナウイルスの新規感染者が大都市部でおおむね増加するなど、全国で増加に転じたと指摘しました。また、オミクロン株の系統の1つのBA.5が日本でも主流になる可能性に懸念が示され、感染対策の徹底を求めました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
ニュースの内容とは?
今回取り上げるニュースの内容について教えてください。
甲斐沼先生
今回のニュースは、6月30日に開催された厚生労働省の専門家会合における内容です。専門家会合では、現在の感染状況については、全国で増加に転じていて、大都市部ではおおむね増加し、また島根県など増加速度の速い地域もみられると指摘しています。年代別で見ると、新規感染者数は全ての年代で増えていて、東京都ではとくに20代の若い世代で増加幅が大きい傾向がみられます。人口あたりの感染者数が全国で最も多い状態が続く沖縄県では、高齢者も増加が続いているとのことです。
大都市部についての短期的な予測では、今後、感染者数の増加が見込まれるとしています。さらに、「ワクチン接種」や「これまでの感染によって得られた免疫の効果が徐々に下がっていくこと」、「7月以降の夏休みの影響で人と人との接触機会が増加すること」、「オミクロン株のBA.5が国内でも主流になる可能性があること」などから、今後、感染者数の増加も懸念されると指摘されました。
BA.5とは?
BA.5についてわかっていることを教えてください。
甲斐沼先生
BA.5とは、昨年末から日本で流行している新型コロナウイルスのオミクロン株の系統の1つで、BAというオミクロン株の系統の中で、一部の遺伝子が変異している種類になります。ECDC(欧州疾病予防管理センター)の報告では、南アフリカやポルトガルの感染状況からの推計で、「BA.2系統よりも12~13%ほど感染者が増えやすかった」とのことです。また、これまでに新型コロナウイルスの免疫を獲得していても、BA.5系統には効きにくいという指摘もされています。さらに、ワクチン接種者や感染した経験がある人の血清を使った調査結果をまとめた査読前の論文では、中和抗体の強さがBA.2系統と比べて、BA.5やBA.4系統では1.6~4.3倍低下していました。重症度については、これまでの系統との違いを明確にした報告は出ていません。日本国内のBA.5の系統は、厚生労働省が5月12日に空港検疫で初めて確認したと発表しています。また、東京都がPCR検査結果を分析したところ、BA.5系統の疑い例が20日までの1週間で25.1%を占めていたということです。
BA.5に対して留意すべきことは?
BA.5系統のウイルスからの感染防止にあたり、留意すべき点について教えてください。
甲斐沼先生
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によれば、2022年6月時点で米国で新型コロナウイルスへの感染が確認された人のうち、新しいオミクロン変異株であるBA.4とBA.5に感染した人の割合が半数(BA.4感染者は15.7%、BA.5感染者は36.6%で合わせて52%)を超えました。これまではBA.2やその派生株が主流でしたが、とくにBA.5はこれまでの中和抗体をすり抜ける力が強いとされており、新たな感染の波が到来する可能性が示唆されています。東京大学などは、BA.5などの感染力は国内で現在主流のBA.2型より約1.2倍強く、病原性(重症化リスク)も高い可能性があると発表しています。我が国の感染症専門医の見解では、今回のBA.4とBA.5ではワクチンを接種していたとしても感染することが懸念されており、今後夏期休暇などで人同士の接触が増えるタイミングが多くなるため、感染の再拡大も十分に考えられると警告しています。新型コロナウイルスのこれまでの変異株と同様に、重症化リスクがとくに高いのは高齢者、あるいは深刻な基礎疾患を有する人々と考えられます。
すでに普及しているワクチンは「BA.4」と「BA.5」に完璧にマッチしたものではありませんが、それでも現時点で最善の防御手段であることに異論はありません。新型コロナウイルスBA.5型など新たな変異株に対して、今のところ特別な対策は不要であり、これまで通り手洗いやうがい、マスク着用など、日々の感染対策を徹底して継続していくことが重要なポイントであると認識しています。
まとめ
6月30日に開催された厚生労働省の専門家会合で、オミクロン株の系統の1つのBA.5が日本でも主流になる可能性に懸念が示され、感染対策の徹底を求めたことが今回のニュースでわかりました。次々と変異を繰り返す新型コロナウイルスですが、新たなBA.5 に対しての警戒感は高まりそうです。