男の子のスマホ視聴時間 自閉スペクトラム症に関連との研究
男児が1歳時にスマホなどを長時間視聴していた場合、3歳までのASD = 自閉スペクトラム症に有意に関連していたとする解析結果が学術誌に発表されました。このニュースについて武井医師に伺いました。
監修医師:
武井 智昭(医師)
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
発表された研究内容とは?
今回発表された研究内容について教えてください。
武井先生
今回ニュースになった研究内容は、山梨大学大学院会社会医学講座の久島萌氏らが学術誌に発表した内容になります。久島氏らは、「子どもの健康と環境に関する全国調査」のデータを用いて、1歳時のスマホなどによるスクリーンタイムと3歳時のASD発症との関連について検討したということです。対象になったのは母子8万4030組で、ロジスティック回帰分析の結果、男の子では1歳の時に画面を全く見ていなかったグループに対する3歳までのASD診断のオッズ比は、1歳時のスクリーンタイムが1時間未満群では1.38、1時間以上2時間未満群では2.16、2時間以上4時間未満群では3.48、4時間以上群では3.02との結果が出たということです。一方、女の子ではスクリーンタイムとASDに関連は認められなかったそうです。
ASDとは?
今回研究対象になったASDについて教えてください。
武井先生
これまで、自閉症、アスペルガー症候群など様々な名称で呼ばれていましたが、2013年のアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5の発表以降はASD = 自閉スペクトラム症としてまとめて表現するようになりました。重症度は様々ですが、言葉の遅れ、会話が成り立たないなどの言語やコミュニケーションの障害が認められることが多く、乳児期早期から視線を合わせることや身振りをまねすることなど他人に関して関心がないため、社会性発達が不良となり、幼稚園以降でも友人ができにくい傾向があります。また、一つの興味・事柄に関心が限定され、こだわりが強く、感覚過敏あるいは鈍麻など感覚の問題も認められることも特徴として挙げられます。
発表された研究内容についての受け止めは?
今回発表された研究内容の受け止めを教えてください。
武井先生
ASDは脳の先天的な機能異常が主原因とされておりますが、原因はまだわかっておりません。先天的な要素に加え、後天的な要素も関与している研究発表などは、今後のASDの病態解明の1つの新しい展望となっていく可能性があります。
まとめ
男児が1歳時にスマホなどを長時間視聴していた場合、3歳までのASD に関連していたとする解析結果が学術誌に発表されたことが今回のニュースで明らかになりました。ASDの原因はまだ特定されておらず、今後もこうした研究発表には注目が集まりそうです。