日本産科婦人科学会が「妊婦への新型コロナワクチン接種努力義務」を周知
日本産科婦人科学会が妊婦への新型コロナワクチンの接種について、厚生労働省が努力義務を課すことを決定した旨を周知する声明を発表した。このニュースについて中路先生にお話を伺います。
監修医師:
中路 幸之助(医師)
日本産科婦人科学会による声明の内容とは?
日本産科婦人科学会が出した声明の内容について教えてください。
中路先生
今回の声明は、日本産科婦人科学会が2月21日に発表したものです。妊婦に対する新型コロナウイルスワクチンの接種について、厚生労働省が努力義務にしたことを周知する声明となります。妊婦への新型コロナワクチン接種は2021年2月の段階では努力義務を適用しないことになっていましたが、妊娠中に新型コロナに感染した際の重症化リスクの高さや妊娠中のワクチン接種の高い有効性を示唆する報告があり、今年1月には努力義務を課すことが決まっていました。日本産科婦人科学会は声明文で、努力義務は3回目の追加接種だけでなく、未接種の妊婦に対する1回目、2回目接種にも適用されることにも言及しています。
妊婦の新型コロナウイルス感染リスクは?
妊婦が新型コロナウイルスに感染した際のリスクについて教えてください。
中路先生
妊婦が新型コロナウイルスに感染した際のリスクについては、イギリスのエディンバラ大学などによる研究チームが発表している研究があります。研究チームの発表によると、2020年12月~2021年10月にスコットランドの妊婦8万7694人のデータを分析したところ、新型コロナウイルスに感染したという診断から28日以内に出産した際に早産になる割合が通常の約2倍の16%で、死産と合わせた新生児の死亡率は2%と通常の割合の約4倍になったということです。また、ワクチンが未接種だった妊婦は、新型コロナウイルスに感染した妊婦の77%、入院した妊婦の90%、集中治療室に入るなど容体が重い妊婦の98%を占めたという結果も出ています。
さらに、米国医師会雑誌(JAMA)に今月掲載された論文では、アメリカの17カ所の医療機関で治療を受けた1万4000人以上の妊婦を調査した結果が報告されています。この研究によると、ワクチンを接種していない妊婦が感染して中等症・重症になった場合、感染していない妊婦や感染しても無症状・軽症の妊婦と比べて、「帝王切開が必要になる」、「早産になる」、「分娩後出血が起きる」、「出産前後に死亡する」という4つのリスクがいずれも高くなっていたということです。
妊婦がワクチン接種する際の留意点は?
妊婦がワクチン接種する際に留意すべき点はあるのでしょうか?
中路先生
現在、妊婦へのワクチン接種に関する多くのエビデンスが集積されてきています。第一に、妊婦は感染すれば重症化リスクが高い可能性があります。第二に、接種の有効性は高く、流産を含め安全性が心配されるエビデンスはないと報告されています。そのため、妊婦に対して予防接種法に基づく「努力義務」を課す方針が決まりました。接種後発熱した場合にも、解熱剤(妊娠中の場合はアセトアミノフェン)の服用で対応可能です。また、妊婦が感染する場合の多くは、夫やパートナーからの感染と報告されており、妊婦の夫またはパートナーの方がワクチンを接種することも肝要です。
まとめ
日本産科婦人科学会が妊婦への新型コロナワクチンの接種について、厚生労働省が努力義務を課すことを決定した旨を周知する声明を発表したことが今回のニュースで明らかになりました。妊婦の新型コロナウイルス感染のリスクも報告されていることからも、接種が努力義務になったことを妊婦がしっかり把握することは重要になりそうです。