ひも状のiPS網膜細胞を移植、厚生労働省専門部会が計画了承
目の難病患者などにiPS細胞から作り出した網膜細胞をひも状にして移植する臨床研究について、厚生労働省の専門部会が計画を了承しました。このニュースについて荒井医師に伺いました。
監修医師:
荒井 宏幸(医療法人社団ライト 理事長)
今回、計画が了承された臨床研究とは?
今回、計画が了承された臨床研究の内容について教えてください。
荒井先生
今回ニュースになっている臨床研究は、神戸市立神戸アイセンター病院の栗本康夫病院長らのグループが計画している臨床研究です。計画では、網膜色素上皮という網膜の最も外側にある網膜全体に栄養を与える部位に異常が生じて網膜色素上皮不全症になった20歳以上の患者50人が対象になります。iPS細胞から作った網膜色素上皮の細胞を、長さ約2cmの細いひも状に加工してから患者の網膜に移植し、計4年間の経過観察で安全性と有効性を確認することになります。
iPS細胞を使った目の治療の過去の事例は?
iPS細胞を使った目の治療は、過去にはどのような事例があるのでしょうか。
荒井先生
2014年には、理化学研究所のチームがヒトへの移植が世界初となる、加齢黄斑変性の患者1人に対してシート状にした網膜色素上皮細胞を移植しています。さらに2019年、大阪大学のチームが角膜上皮幹細胞疲弊症の患者に角膜上皮細胞を移植しています。また、去年には今回計画承認された神戸アイセンター病院が網膜色素変性の患者に視細胞を移植しています。
今回の臨床研究に期待することは?
今回、計画が了承された臨床研究に期待することを教えてください。
荒井先生
これまでのiPS細胞の網膜への移植には、培養シートを移植するか液状にした培養液を眼内に注入するかのどちらかでした。培養シートは作成が難しく、手術で移植する難易度も高い方法です。液状の培養液は網膜細胞への定着が不安定なため、一定の効果を得ることが難しいとされています。今回のひも状に作成したiPS細胞では、シート状よりも作成が容易で手術の難易度も高くないため、治療の成功率が上がることが期待されています。
まとめ
目の難病患者などにiPS細胞から作り出した網膜細胞をひも状にして移植する臨床研究について、厚生労働省の専門部会が計画を了承したことが今回のニュースでわかりました。4年間の経過観察でどのような結果が出るのか注目が集まります。