【コロナワクチン】5都府県で3万人規模の抗体検査実施へ
厚生労働省は10月28日、新型コロナウイルスの流行状況を調べるため、3万人規模の抗体検査を2021年12月と2022年2月頃に5都府県で行うと発表しました。このニュースについて工藤医師に伺いました。
監修医師:
工藤 孝文(医師)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
今回発表された調査の内容は?
今回厚生労働省が発表した調査の内容について教えてください。
工藤先生
今回の調査では、東京・宮城・愛知・大阪・福岡の5都府県の住民計3万人を対象に、新型コロナウイルスの抗体検査が実施されることになります。
検査のタイミングは2021年12月と2022年2月頃の2度に分けて行われ、無作為に抽出した1万5000人ずつに調査依頼を送ることになります。S抗体とN抗体を調べることで、ワクチン接種による抗体と感染歴の有無を区別して調べる方法をとります。
厚生労働省による大規模調査は、2020年12月にも行われました。この時はロシュ社とアボット社の2社の試薬を使って、いずれも陽性だった場合に「抗体保有者」としていましたが、その後の国立感染症研究所による中和抗体の検査などでロシュ社の試薬は高い精度で鑑別できると判明したため、今回はロシュ社の試薬のみを使うということです。
S抗体とN抗体とは? ワクチン接種による抗体と感染歴の有無はなぜわかる?
調査対象となるS抗体とN抗体について教えてください。なぜこの2種類の抗体を調べると、ワクチン接種による抗体と感染歴の有無を区別することができるのですか?
工藤先生
S抗体はウイルスの表面のタンパク質(スパイクタンパク質)に対する抗体を、N抗体はウイルスの中のタンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)に対する抗体を表しています。
ワクチン接種で産生されるようになるのはS抗体ですが、感染するとS抗体とN抗体の両方が産生されます。そのため、S抗体だけが検出されればワクチンで免疫を獲得したことを意味し、S抗体とN抗体の両方が検出されれば感染歴があることがわかるのです。
調査で注目すべきポイントは?
今回の調査に期待されるポイントを教えてください。また、今後明らかになる調査結果で注目すべきポイントも教えてください。
工藤先生
ワクチン接種が進み、無症候感染者の増加も指摘されています。
今回の検査でその実態が分かることになりますので、ワクチン普及後のマスクの必要性など生活様式の指標にもなるでしょう。一方、ワクチンの有効性は時間経過で低下するとされています。そのため、今回の結果は海外で実際に行われているブースター接種の必要性などに関する検討材料にもなるでしょう。
すなわち、今回の研究で今後行うべき対策の方針がみえてくるので、結果に注目していきたいですね。
まとめ
約1年ぶりに実施されることになった3万人規模の抗体検査ですが、第4波、第5波の感染拡大やワクチン接種の進展を経て、どれだけ抗体を持つ人が増えたか注目が集まります。