食物アレルギー診断に新検査法!? 尿を用いた検査に注目集まる
世界的な社会問題になっている食物アレルギーに、新しい検査方法の可能性が出てきました。尿を検査することで軽微なアレルギー症状を判定する方法で、患者の体に負担が生じないメリットがあると言われています。この検査方法について工藤先生にお話を伺います。
監修医師:
工藤 孝文 医師
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
目次 -INDEX-
食物アレルギーの現状は?
食物アレルギーの現状について教えてください。
工藤先生
食物アレルギーは日本で約120万人の患者がいるとされており、増加の一途を辿っています。特に子どもに多く発症し、その症状はかゆみやじんましん、おう吐、下痢などのほか、最悪の場合、死に至るケースもあります。食物アレルギーの確定診断には、医師が患者にアレルゲンとなる食べ物を実際に食べさせて症状が出るのを確認する経口抗原負荷試験を行う方法しかありません。この診断方法はアナフィラキシーショックを起こすリスクもあるため、施設の整った病院にて、知識・経験ともにある医師が注意深く行う必要があります。また、患者とその家族にかかる時間的、金銭的な負担も大きいため、より簡単かつ客観的な診断方法の開発が求められていました。
新しい検査法とは?
新しい食物アレルギー診断の検査方法について教えてください。
工藤先生
今回の新しい検査法は東京大学大学院と国立成育医療研究センターによる研究グループの臨床研究によるもので、尿中に放出されるプロスタグランジン D2という物質の代謝物であるPGDMを測定することによってアレルギーの有無を調べるというものです。食物アレルギーは、食物に含まれているアレルゲンに対してアレルギー反応が起きる疾患で、アレルゲンが体内に入って来ると、IgE抗体というタンパク質が作られ、マスト細胞に付着します。アレルゲンが再び侵入してIgE抗体に結合すると、マスト細胞からアレルギー症状を引き起こすヒスタミンなどの化学物質が放出されます。PGDMはマスト細胞から放出されるプロスタグランジンD2の代謝物として、アレルギー症状の程度を反映して尿に排出されるので、その特性を利用したものが今回の新しい検査方法になります。
どんなメリットがある?
新しい検査法は、どのようなメリットがありますか?
工藤先生
まず一つ言えることは、現在行っている経口抗原負荷試験を行う際のアナフィラキシーショックのリスクを最小限に抑えることができるということです。また、今回の検査で必要な尿中に含まれるPGDMは、アレルゲンになる食物を摂取してから2~4時間は測定できると言われており、子供が無理なく検査用の尿を取ることができるのもメリットの一つかと思います。また、病院ではこれまで1000万円単位の購入費用がかかる質量分析計を使用して検査を行っていましたが、もしも簡便な検査キットが登場するとコストを少なく検査を実施することが可能になると考えられます。
まとめ
日本では、約120万人もの人が食物アレルギーの症状に悩み、食物アレルギーの子どもを持つ保護者は与える食事にとても気を使いながら生活しています。今回ご紹介した尿を使った新たな検査法が広まると、今までより安全で簡単に検査ができることが期待されます。