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“術前のSOX療法”で「局所進行胃がん」「食道胃接合部腺がん」の生存率向上を確認

 公開日:2025/05/17

中国・北京癌病院の研究チームらは、局所進行胃がんや食道胃接合部腺がんの患者に対して、胃切除後の化学療法の効果と安全性を調べました。その結果、周術期にSOX療法をおこなった場合、術後にCapOx療法をおこなうよりも3年後の無病生存率が高く、術後SOX療法もCapOx療法に劣らない効果があることがわかりました。この結果について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

中国・北京癌病院の研究チームらが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

中国・北京癌病院の研究チームらによる研究では、局所進行胃がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対する周術期もしくは術後の補助化学療法として、SOX療法(S-1+オキサリプラチン)の有効性と安全性を、従来のCapOx療法(カペシタビン+オキサリプラチン)を比較しました。中国国内の27病院でおこなわれた第3相ランダム化比較試験で、D2胃切除術を受けた18歳以上の未治療患者1022人が対象となりました。 3年無病生存率は、補助CapOx群で51.1%、補助SOX群で56.5%、周術期SOX群では59.4%と報告され、特に周術期SOXは補助CapOxに対して統計的に有意な優位性を示しました。一方で、補助SOXは補助CapOxに対して非劣性であることも示されています。副作用としては、グレード3~4の好中球減少症が最も多く見られ、治療関連死は発生しませんでしたが、治療に関連する死亡例は少数報告されています。 この結果から、周術期SOX療法は補助CapOxと比べて新たな選択肢となる可能性がありますが、周術期治療の実施に伴う安全性や患者への負担については、今後のさらなる検討が必要です。

研究テーマになった胃がんとは?

今回の研究テーマに関連する胃がんについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

胃がんは、胃の内側の粘膜にある細胞ががん化し、徐々に深い層へと進行していく病気です。早期には自覚症状がほとんどなく、進行すると胃の痛みや吐き気、貧血、体重減少などがみられます。胃がんの診断には内視鏡検査や生検、CTなどの画像検査がおこなわれ、がんの深さや広がりによって治療方法が選択されます。治療には内視鏡治療や外科手術、薬物療法などがあり、状況に応じて組み合わせておこなわれます。再発を防ぐための経過観察や日常生活の工夫も大切です。気になる症状があるときは、我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。

胃がんに関する研究内容への受け止めは?

中国・北京癌病院の研究チームらが発表した内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

この中国の北京大学を中心に実施されたRESOLVE試験は、韓国のARTIST2試験と並んで、胃がん周術期SOX療法を支持するエビデンスとなりました。これらは、特にアジア人の胃がん患者における周術期SOX療法の標準化を支持する重要なエビデンスであると考えられます。今後はさらなる症例の蓄積により、異なる胃がんの組織型や病期における治療効果などを検討し、より最適な治療方法を検討する必要があると考えます。

まとめ

今回の研究から、胃がんの治療において、手術前後におこなう周術期SOX療法が、術後のCapOx療法よりも高い無病生存率を示す可能性があることがわかりました。治療の選択肢が広がることで、患者さん一人ひとりの状態に合ったアプローチが期待されます。早期発見とあわせて、治療の選択肢についても情報を知っておくことは、納得のいく治療選択につながります。気になる症状がある場合は、早めに医師に相談しましょう。

※提供元「日本がん対策図鑑」【胃がん:周術期治療(5年OS)】「手術→SOX」vs「手術→CAPOX」 https://gantaisaku.net/resolve_5os/

この記事の監修医師