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「がん悪液質」の症状を軽減する治療法が研究で明らかに ポンセグロマブの有効性とは

 公開日:2025/02/22

ファイザー社の内科研究ユニットの研究者らによる論文が、医学雑誌「The New England Journal of Medicine」に掲載されました。この研究では、がん悪液質の治療に関するものであり、特にGDF-15を標的とした「ポンセグロマブ」の有効性について検討しています。この内容について吉川医師に伺いました。

吉川 博昭

監修医師
吉川 博昭(医師)

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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

研究グループが発表した内容とは?

ファイザー社の内科研究ユニットの研究者らによる発表の内容を教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

今回紹介する研究報告は、ファイザー社の内科研究ユニットの研究者らによるもので、その研究報告は「The New England Journal of Medicine」に掲載されています。

「がん悪液質」は、がん患者において一般的な合併症であり、死亡リスクの増加と関連しています。がん悪液質の患者で上昇する循環サイトカインであるGDF-15は、その阻害が治療の新たな選択肢として注目されています。本研究では、GDF-15を阻害するヒト化モノクローナル抗体であるポンセグロマブの有効性と安全性を検討しました。

第2相ランダム化二重盲検試験では、GDF-15値が1500pg/ml以上のがん悪液質の患者を対象に、ポンセグロマブの異なる用量(100mg・200mg・400mg)を4週間ごとに3回皮下投与しました。主要評価項目は「12週間時点での体重の変化」とされ、副次評価項目は「食欲や身体活動の変化」「安全性」です。

研究には187名の患者が参加し、主に非小細胞肺がん、膵臓がん、大腸がんの患者で構成されていました。研究結果として、ポンセグロマブを投与された群は、プラセボ群と比較して有意に体重が増加し、400mg群は最も大きな改善が認められました。また、食欲や悪液質症状、身体活動の指標においても400mg群で最も顕著な改善が確認されています。一方で、有害事象の発生率はポンセグロマブ群で70%、プラセボ群で80%と報告され、安全性に関しては一定の懸念が残ります。

この研究によってポンセグロマブのGDF-15阻害作用が、がん悪液質の改善に寄与すると示されましたが、副作用や長期的な影響については今後の研究が必要です。

研究テーマになった「がん悪液質」とは?

今回の研究テーマに関連するがん悪液質について教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

がん悪液質とは、がんに伴い体重減少や食欲不振を引き起こし、通常の栄養補給では回復が難しくなる症候群です。特に骨格筋の減少が特徴的であり、全身性炎症や代謝異常が影響を及ぼします。その結果、治療の効果が低下し、副作用の増加や生活の質の悪化を招くことがあります。

がん患者の約80%が悪液質を経験し、進行がんでは生存率にも影響を与えます。そのため、早期からの介入が重要です。がん悪液質には、薬物療法や栄養療法、運動療法を組み合わせた「集学的治療」が推奨されています。薬剤の開発が進んでおり、今後の治療に期待が寄せられています。体重減少が気になる場合は、早めに医療機関に相談し、適切な治療を受けましょう。

研究内容への受け止めは?

ファイザー社の内科研究ユニットの研究者らが発表した内容への受け止めを教えてください。

吉川 博昭 医師吉川先生

本研究は、がん悪液質の新たな治療戦略としてGDF-15阻害薬であるポンセグロマブの有効性を示唆しています。特に、400mg投与群において体重増加や食欲改善があり、患者のQOL向上につながることが期待されます。一方、安全性に関しては慎重な評価が必要で、有害事象の発生率や長期的影響の検討が求められます。がん悪液質は患者の生活の質や予後に直結するため、臨床応用が進むことは大きな意義を持つことでしょう。

編集部まとめ

がん悪液質はQOLや予後に大きく影響を与える症状ですが、この研究によりポンセグロマブの治療効果が示唆されました。今後、さらなる研究が必要ではあるものの、治療法の確立が期待されます。医療機関と相談しながら、自分に合った方法で体調を整え、生活の質を向上させていきましょう。

※提供元「日本がん対策図鑑」【がん悪液質】「ポンセグロマブ」vs「プラセボ」
https://gantaisaku.net/proacc-1/

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