声優・三輪勝恵さんが逝去 死因の「肺塞栓症」になりやすい人の特徴や予防法を医師が解説

アニメ「パーマン」パーマン1号、「あさりちゃん」浜野あさり役など、声優・ナレーターで活躍する三輪勝恵さんが、急性肺塞栓のため亡くなったことを所属事務所が発表しました。80歳でした。肺塞栓症はエコノミークラス症候群とも呼ばれることから、飛行機の搭乗中に起こるものと認識されがちですが、実は自宅でも起こる可能性があります。とくに、長時間同じ姿勢を続けている方は注意が必要です。この記事では、肺塞栓症の原因・症状・治療などについて詳しく解説していきます。
※この記事はMedical DOCにて【「肺塞栓症」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
肺塞栓症の症状と原因
肺塞栓症の症状を教えてください。
症状が一度だけ出るケースもありますが、発作のように何度も起こるケースもあるので注意が必要です。
症状の強さは、血栓の大きさによってさまざまです。小さい血栓の場合は症状が出ないケースもありますが、大きな血栓の場合には血流が止まりショック状態に陥ったり、失神発作を起こしたりすることもあります。重度の場合には、死に至ることもある恐ろしい病気です。
発症する原因は何でしょうか?
この血栓が血流に乗って流れ、肺動脈に詰まることによって起こるのが肺塞栓症です。
飛行機のエコノミークラスの狭いスペースに長時間座っていることが原因になることも多く、エコノミークラス症候群とも呼ばれます。飛行機の搭乗中に限らず車の運転時なども、足を動かさず血流が悪くなることで太ももやふくらはぎに血栓ができやすくなるため注意が必要です。
さらに、近年増えているリモートワークでも、長時間同じ姿勢でいることで肺塞栓症のリスクが高まります。また、妊娠中の方や病気療養中などで長時間寝たきりの方も、発症するリスクが高いといえるでしょう。
なりやすい人の特徴を教えてください。
また、妊娠中の方や子宮筋腫のある方も腹部に存在する下大静脈が圧迫されやすく血栓ができやすいため注意が必要です。さらに、悪性腫瘍のある方や体質によって血が固まりやすい方も、肺塞栓症のリスクが高いとされています。
長期間入院して安静生活を送っているような方も、血栓ができやすく肺塞栓症になりやすいといえるでしょう。
前兆はあるのでしょうか?
ただし、下肢に血栓ができている場合はふくらはぎや太ももに腫れ・むくみ・痛みなどを感じることがあります。
ふくらはぎや太ももにこれらの症状があり、血栓ができていることが考えられる場合には十分注意する必要があります。
肺塞栓症の診断と治療
肺塞栓症はどのような検査で診断されますか?
肺塞栓症が疑われるが、確定診断が難しい場合には、肺血管や下肢静脈などをCTスキャンで確認することも必要です。
治療方法を教えてください。
足などにまだ血栓が残っていた場合に再び症状が出てしまうのを防ぐために、安静にして過ごすのが基本です。
重症の場合には、外科的手術によって血栓を直接取り除く処置を行います。さらに、まだ血栓が残っていて肺動脈が閉塞する危険がある場合には、下大静脈にフィルターを留置して肺に血栓が飛散するのを防ぐ処置が行われることもあります。
治療期間はどのくらいかかりますか?
危険因子を持っている方の場合には、さらに長期の治療が必要となります。抗凝固薬は初めは点滴で投与されますが、長期にわたって治療を行う際には飲み薬に切り替えられます。
入院が必要なのですね…。
入院期間は重症度や再発のリスクなどによって異なりますが、肺塞栓症だと疑われる症状が出た場合には必ず入院して検査や治療が行われると思っておきましょう。
肺塞栓症の予防と注意点
肺塞栓症は完治するのでしょうか?
早期発見や早期治療によって死亡率が下げられるといえるでしょう。急性期を無事に乗り切れた場合には予後も良好だといわれているため、完治を目指すにはやはり早期に発見をして迅速に治療を開始することが重要です。
予防方法を教えてください。
リモートワークなど1人で作業を行う場合、つい熱中して長時間席を立たずに作業を行うケースもあるでしょう。同じ姿勢を続けると血流が悪くなるため、デスクワーク時などは時間を決めて立ち上がるのがおすすめです。
室内を歩き回ったり、軽くストレッチをしたりするだけでも一定の効果があります。立ち上がるのが無理な場合は、足を上下に動かすとよいでしょう。
また水分不足でもリスクが高まる可能性があるため、こまめに水分を補給することも大事です。アルコールやコーヒーなどを摂りすぎると脱水になる危険があるため、長時間のフライトの時などにはなるべく控えるようにしましょう。
手術後や入院中などで肺塞栓症のリスクが高い方の場合には、病院の判断で運動療法や抗凝固療法などが行われることもあります。
肺塞栓症と診断された場合、日常生活での注意点はありますか?
良くなってからも油断をしたり無理をしたりせず、再発の兆候がないか注意しながら過ごすことが大切です。長時間同じ姿勢を取り続けないようにして、血流が悪くならないように気を付けましょう。
食事や水分をしっかり摂ることも大事です。必要な水分は年齢や体型などによって異なりますが、1日に1リットル程度摂ることが理想的とされています。
また、下肢にむくみや痛みなどが出ている場合、血栓ができている可能性もあるため注意が必要です。血栓の予防には、弾性ストッキングの着用も効果的だとされています。ただし、これらは一般的な注意点です。
症状や重症度によっても取るべき対策は違ってくるため、日常生活の過ごし方や注意点を必ず医師に確認しておくようにしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
肺塞栓症が注目を集めたのは、震災時に車で寝泊まりしていた方たちが発症するケースが相次いだことでした。
近年ではリモートワークが増えていることもあり、自宅でも発症のリスクが高まったといえるのではないでしょうか。若い方でも発症する可能性がないとはいえないので、自分には関係ないことだと思わずに予防を心掛けてください。
時間を決めて足を動かすことが大事なので、運転中や仕事中にはこまめに休憩を取るようにして、軽いストレッチなどを行いましょう。
編集部まとめ
肺塞栓症は、発症すると急に呼吸困難や胸の痛みなどの症状が現れる病気です。
エコノミークラス症候群とも呼ばれるように長時間足を動かせない状況などでは誰でも発症する可能性があります。
また、妊娠中の方や血が固まりやすい体質の方も肺塞栓症が起こりやすいので注意が必要です。
飛行機の搭乗中・運転中・デスクワーク中などには足を定期的に動かすようにし、水分もこまめに摂って予防を心掛けてください。