「人工授精」保険適用の方針を固める
政府は不妊治療の人工授精に公的医療保険を適用する方針を固めました。公的医療保険が適用できれば、金銭的な事情で人工授精を諦めていた人にも受診の可能性が広がります。今回は、人工授精の公的医療保険の適用について、中島先生に詳しくお伺いします。
監修医師:
中島 由美 医師
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今回の発表の詳細は?
人工授精を公的医療保険の適用範囲に含める方針を固めた件について、詳しく教えてください。
中島先生
国の実態調査によると、人工授精にかかる費用は1回あたりの平均で約3万円でした。これは、体外受精の約50万円よりも低額であるものの、大きな負担となっているケースがあります。
不妊治療については、すでに体外受精を公的医療保険の適用範囲に含める方針で議論が進んでいます。その中で、政府は人工授精についても公的医療保険の適用範囲に含める方針を固めました。人工授精の保険適用が可能になる時期は確定していませんが、2022年度からの適用を目指しています。また、関連する学会の指針などを参考に、保険適用できる治療回数の上限を検討する予定です。なお。治療の診療報酬については2022年初めには中央社会保険医療協議会にて決定するとのことです。
そもそも人工授精とは?
そもそも人工授精とはどのような不妊治療なのか、詳しく教えてください。
中島先生
人工授精は、女性の子宮に精子を直接注入することで妊娠を促す治療法です。身体への負担が比較的軽い治療法ということもあり、体外受精の前に検討する初期の治療として位置づけられています。妊娠率は5~9%程度で、日本産科婦人科学会の指針では人工授精を6回行っても妊娠しなかった場合は、体外受精を検討した方がよいとされています。
人工授精は排卵日に行うことが重要なため、基礎体温や頸管(けいかん)粘液を調べるほか、超音波検査、尿検査、血液検査などさまざまな検査で排卵日を特定します。人工授精には、排卵誘発剤を使う方法と使わない方法があり、使用する薬剤にもさまざまな種類があります。
人工授精を行うべきかどうかや、使用する薬剤については、夫婦で話し合いつつ医師の意見も踏まえて決定することが大切です。
まとめ
人工授精に保険が適用されると、不妊に悩む方の負担が軽くなり、不妊治療を受けやすくなる可能性があります。保険適用となる治療回数などの詳細はこれから検討を進めていく方針ですが、不妊治療を受けることを検討している方は、随時最新の情報をチェックしておきたいところでしょう。