脳梗塞のリスクも増! 新型コロナで血管系の後遺症リスク
新型コロナウイルス感染症の後遺症として、血管系の病気である川崎病に似た症例が世界中で報告されています。今回は、新型コロナの後遺症のうち、血管系の症状について中島先生に詳しくお伺いしました。
監修医師:
中島 由美 医師
新型コロナの感染で血管系の後遺症が残る原因は?
なぜ、新型コロナに感染すると、血管系の後遺症が残る場合があるのか詳しく教えください。
中島先生
新型コロナウイルスが人の細胞に侵入するときの入口であるACE2は、全身の血管内皮に存在することがわかっています。そのため、新型コロナウイルスに感染すると、防御反応として免疫組織によって炎症が引き起こされて、血管の内皮細胞が傷つくのです。その結果、血管内部が活性化し、血小板が凝集しやすくなります。
そうすると、血小板が血管壁にくっつきやすくなり、同時に血栓もできやすくなります。冠動脈の小さな血管に新型コロナウイルスが感染すると、川崎病に似た血管炎が起きて、冠動脈瘤や心筋梗塞に繋がる恐れがあるのです。
実際に、新型コロナウイルスの感染者に川崎病のような症状は、世界各地で報告(※)されています。
※編集部注:NPO法人日本川崎病研究センターは、「日本および近隣諸国では現時点で川崎病とCOVID-19との関係性を積極的に示唆できるような情報はない」と声明を出しております。
川崎病と COVID-19 に関する報道について(NPO法人日本川崎病研究センター)
http://www.jskd.jp/pdf/20200506COVID-19_and_KD.pdf
新型コロナの影響で起こり得る血管系の病気とは?
新型コロナの影響で起こる可能性がある血管系の病気について、詳しく教えください。
中島先生
新型コロナウイルスに感染すると、全身の血管に炎症が起こる可能性があるため、冠動脈瘤や心筋梗塞のほかにも、脳梗塞やエコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)などに警戒が必要です。
脳梗塞は40~50代が発症しやすい病気ですが、米国ニューヨークからは、新型コロナ感染者の若い人に脳梗塞が生じていることが報告されています。呼吸器疾患にかかった初期の3日間に脳卒中を発症するリスクが3.2~7.8倍も増えるとの報告もあるので、注意が必要です。
コロナの影響で血管系の病気になった場合の後遺症は?
新型コロナの影響で血管系の病気を発症した場合、どのような後遺症が残るのか詳しく教えください。
中島先生
川崎病に似た症状が現れた場合、血栓や炎症の影響で冠動脈瘤のリスクが上がったり心機能が低下したりする可能性があります。また、血栓ができた場合は、足のむくみや皮膚炎、湿疹、色素沈着、難治性潰瘍などができやすくなる可能性もあります。
脳梗塞では、運動神経麻痺や認知機能障害に警戒が必要です。そして、急性心筋梗塞では心機能の低下や不整脈、動いたときの動悸や息切れ、胸の痛みなどが起こる可能性があります。
まとめ
新型コロナに感染すると、重大な後遺症が残る可能性があるため、十分な警戒が必要です。全身の血管に炎症が起こることで、血管系の病気を発症したり川崎病に似た症状が現れたりする恐れがあります。後遺症を防ぐ有効な方法は見つかっていないため、感染防止対策に力を入れましょう。
動悸がする症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。