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親の介護は何から始まる?準備、手続き、負担を軽減する方法を解説

 公開日:2026/04/15
親の介護は何から始まる?準備、手続き、負担を軽減する方法を解説

親の年齢が上がるにつれて、いつか訪れる介護に不安を感じる方は多いでしょう。介護は、ケガや病気によって急に始まる場合もあれば、加齢に伴い少しずつ日常生活の支援が必要になる場合もあります。
どちらの状況であっても、親の介護に向けた準備や手続きを事前に把握しておくことは大切です。早めの情報収集が、将来のゆとりを生み出します。
この記事では、介護が始まるきっかけや初期のサイン、まず行うべき手続き、利用できるサービスなどを解説します。また、仕事と介護を両立するための工夫や費用の目安も解説します。
納得のいく条件で介護を進められるよう、ぜひ参考にしてください。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

親の介護の始まり方とは

親の介護の始まり方とは

親の介護の始まり方は、緊急性の高いケースと、時間をかけて段階的に進むケースに分けられます。それぞれのきっかけや、日常生活でのサインを把握しておきましょう。

介護が必要になる主なきっかけ

親に介護が必要になる主なきっかけとして、以下のようなものがあります。

  • 脳血管疾患
  • 転倒・骨折
  • 認知症
  • 高齢による衰弱

脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患は、急な麻痺や意識障害を引き起こし、退院後のリハビリや継続的なケアが必要です。また、加齢による筋力低下や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が原因の転倒・骨折、特に大腿骨の骨折は寝たきりのリスクを高めるため、早期のリハビリや環境調整を検討しましょう。

記憶力の低下や判断力の衰えがみられる認知症は、火の不始末や道迷いなど、安全面での配慮が求められるようになります。さらに、食事量の減少や筋力の低下などによって心身の機能が衰えるフレイル(高齢による衰弱)も、介護が必要になる大きなきっかけの一つです。

また、日常生活のなかでみられるささいな変化も、重要な判断基準です。
急な病気やケガは入院を機に介護が始まりますが、認知症や衰弱は気付かないうちに進行します。以下に挙げる日常生活のなかでのささいな変化を、介護の初期サインとして見逃さないことが重要です。早期に発見することで、重症化を防ぎ、自立した生活を長く維持できる可能性が高まります。

  • 冷蔵庫の管理
  • 身だしなみの変化
  • 歩き方が不安定
  • 感情の起伏

これらは、賞味期限切れの食品が増えたり同じものを何度も買ったりする冷蔵庫の異変、服装がだらしなくなったり入浴回数が減ったりする身だしなみの変化として現れます。また、何もないところでつまずくような歩行の不安定さや、以前より怒りっぽくなる、無関心になるなどの感情の起伏も重要なサインです。

親の介護でまず行うべきこと

親の介護でまず行うべきこと

親に介護が必要と感じた際や、急な入院で介護が現実味を帯びた際は、何から手をつければよいか迷う方も多いでしょう。介護生活を円滑にスタートさせるために、まずは以下の3つのステップに沿って準備を進めることが大切です。

家族間での情報共有

介護が始まる際、まず行うべきは家族間での現状共有です。親の心身の状態に関して、兄弟姉妹や親族で正確な情報を共有し、今後の対応に関する大まかな方針を話し合いましょう。
話し合いで共有すべきポイントは、以下のとおりです。

  • キーパーソン(中心となる介護者)の決定
  • 金銭面の分担
  • 連絡体制の構築

中心となって動く担当者を決め、バックアップ役も設定することで主介護者の孤立を防ぎます。費用に関しては親の資産を優先的に活用する方針を明確にし、誰がどのような割合で負担するかを事前に確認しておきましょう。早い段階でチームとしての合意を形成しておくことが、その後のスムーズな介護生活の土台になります。

要介護認定の申請

次に、公的な介護サービスを原則1〜3割の自己負担で利用するために、市区町村から要介護認定を受ける必要があります。親の住民票がある市区町村の役所窓口(介護保険課や高齢福祉課など)で、速やかに申請手続きを行いましょう。
申請手続き後の主な流れは、以下のとおりです。

  • 認定調査
  • 主治医意見書
  • 審査・判定
  • 結果の通知

認定調査は、自治体の調査員が自宅を訪問し心身の状態を確認します。この際、ご本人が頑張って「何でもできる」と答えることもあるため、立ち会う家族は普段の困りごとをメモしておき、不足している情報を正確に補足しましょう

次に、かかりつけ医による主治医意見書が作成され、それらをもとに介護認定審査会による審査・判定が行われます。最終的に、要支援1・2、要介護1〜5、または非該当の判定結果が自宅に届きます。

結果の通知までには通常1ヶ月程度かかることもあるため、介護の不安を感じ始めた段階で、早めに手続きを進めることが大切です。

地域包括支援センターへの相談

初めての介護で何から始めればよいか戸惑う場合は、迷わず地域包括支援センターに相談しましょう。高齢の方の健康や生活、権利擁護など、あらゆる悩みに対応する総合的な公的窓口であり、専門的な視点からの助言を受けられます。
センターには、以下のような専門家が在籍しています。

  • 社会福祉士
  • 保健師
  • 主任ケアマネジャー

社会福祉士は福祉全般や金銭面の相談を担当し、保健師は健康管理や介護予防の支援を行います。主任ケアマネジャーは地域の介護サービスの調整役を担っています。
初回相談時には、お薬手帳や介護保険証(あれば)、現在の生活状況をまとめたメモを持参するとスムーズです。手続きのサポートや適切なサービスの提案を受けられるため、最寄りのセンターを市町村のホームページなどで確認し、早めに相談の予約を取りましょう。

親の介護で利用できる主なサービス

親の介護で利用できる主なサービス

要介護認定を受けた後は、担当のケアマネジャーと相談してケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、具体的なサービス利用を開始します。ここでは主なサービスを解説します。

在宅介護サービス

住み慣れた自宅での生活を続けながら、必要な専門的支援を受けられるものです。利用できる主なサービスには、以下のような種類があります。

  • 訪問介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーションなど

訪問介護は、ホームヘルパーによる身体介護(食事介助や排泄介助など)や生活援助(掃除や洗濯、買い物代行など)を受けられ、訪問看護は、看護師によるバイタルチェックや医療的処置を受けられます。また、訪問リハビリテーションを利用することで、理学療法士などから日常生活動作の維持・向上のための指導を受けることができます。

通所型サービス

一般にデイサービスと呼ばれる通所介護や、リハビリ専門の通所リハビリテーション(デイケア)などは、施設へ日帰りで通い、食事や入浴の支援、レクリエーションなどを受けるサービスです。
デイサービスを利用することで得られる主なメリットは、以下のとおりです。

  • 心身の活性化
  • 栄養・衛生管理
  • 家族の負担軽減

外出による活力維持や周囲の方との交流は認知機能の維持に役立ち、栄養バランスのよい食事や専門的な入浴サポートは健康維持に寄与します。また、親が施設にいる間、家族は自身の時間を確保して仕事を継続したりリフレッシュしたりできるため、家族の肉体的・精神的な休息(レスパイト)としても役割を担っています。
最近では趣味活動に特化したものやリハビリ重視型など、多角的な特徴を持つ施設が増えています。

入所型サービス

宿泊して24時間体制の介護を受けるサービスです。利用期間や目的に応じて、以下の施設を使い分けましょう。

  • ショートステイ(短期入所)
  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)

ショートステイは家族の冠婚葬祭や出張だけでなくリフレッシュ目的でも活用でき、特別養護老人ホームは常時介護が必要な要介護3以上の方を対象とした公的施設です。また、介護老人保健施設は病院を退院した後などに在宅復帰を目指して一定期間のリハビリを受ける施設です。

長期入所を検討する場合は、ご本人の本意や要介護度を考慮し、ケアマネジャーと相談のうえで、施設ごとの特徴や空き状況を慎重に確認しましょう。

環境整備への補助

自宅で安全に生活するためには、段差の解消や手すりの設置など、転倒を防ぐための環境づくりが重要です。介護保険は、以下のような補助制度が用意されています。

  • 住宅改修費用の補助
  • 福祉用具のレンタル
  • 福祉用具の購入補助

一生涯で20万円を上限に手すりの取り付けや段差解消などの工事費用が支給されたり、車いすや介護用ベッドを月額数百円から数千円程度の自己負担で借りたりすることができます。また、入浴補助用具など衛生面からレンタルに適さないものは購入費用の補助(年間10万円まで)を受けることができます。

ささいな段差でのつまずきが重大な骨折を招くこともあるため、早い段階でケアマネジャーなどの専門家に自宅を確認してもらい、制度を積極的に活用しましょう。

参照:住宅改修(厚生労働省 福祉用具・住宅改修)

親の介護と仕事、生活を両立する工夫

親の介護と仕事、生活を両立する工夫

介護が始まっても、自身の仕事やキャリア、家庭生活を大切にすることは可能です。一人で背負おうとせず、社会資源をフル活用して持続可能な生活を目指しましょう。

介護支援制度の活用

仕事を続けながら介護を行う方を支援するために、介護休業、介護休暇という育児・介護休業法に基づく公的な制度が定められています。

介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できるため、介護体制を整えるためのまとまった期間として活用できます。また、介護休暇は通院の付き添いなどのために1年間に5日まで(時間単位も可)取得可能です。

介護休業中に無給になる不安を解消するために、休業開始前の賃金の約67%が支給される介護休業給付金などの制度は、突然の介護離職を防ぐための備えになります。職場の担当部署へ早めに相談し、制度の内容を正しく把握して活用しましょう。

参照:育児・介護休業法について(厚生労働省)

介護保険サービスの利用

家族のなかだけで解決しようとせず、外部の専門職が提供するサービスをフル活用することが、仕事と介護を両立させる鍵です。

デイサービスやショートステイを定期的に利用して安心して仕事に打ち込める時間を確保しつつ、夜間の緊急対応が必要な場合は訪問介護や小規模多機能型居宅介護(通い・泊まり・訪問を一箇所で柔軟に組み合わせたサービス)などの柔軟なサービスを検討しましょう。

ケアマネジャーに自身の勤務状況や残業の有無を正確に伝え、無理のない、自分自身の生活も維持できるケアプランを柔軟に作成してもらうことが重要です。

家族間での情報共有と役割分担

特定の介護者が不満や負担を背負い込まないよう、仕事と両立しながら長期的に回すための具体的な役割分担と、日常的な連携ルールを確立することが大切です。

近隣居住者は日常の買い物や通院の立ち合い、緊急時の対応を担い、遠方居住者は金銭的援助やケアマネジャーとの連絡調整、平日の行政手続き代行(郵送対応など)を行うなどの分担が現実的です。スマートフォンのチャットアプリや共有ノートを活用し、その日の様子や通院結果を随時報告し合うことで、情報の格差をなくし、相続のときのトラブルも未然に防ぎましょう。

無理のない範囲で協力し合える体制を整え、お互いの生活を尊重しながらチームとして支えることが、安定した介護継続の鍵です。

抱え込まずに家族の生活も大切にする

介護を長く安定して長続きさせるためには、“親の生活だけでなく自分自身の人生も大切にする”という確固たる意識が必要です。
自己犠牲の気持ちが強すぎると、心身の限界を超え、介護うつバーンアウト(燃え尽き候群)に陥ることがあります。疲れを感じたときは無理をせず、自費サービスの活用や一時的な施設への預け入れをためらわないようにしましょう。

自分自身の健康と生活を守ることが、結果的に品質の高い介護を継続することに寄与します。

親の介護にかかる費用の目安

親の介護にかかる費用の目安

介護にかかる費用には、サービス利用料のほかに消耗品費や住宅改修費などのみえない出費があります。あらかじめ目安を知ることで、将来の資金計画を立てやすくなります。

在宅介護にかかる費用の目安

自宅で介護を行う場合、月々の費用の平均は以下のとおりです。

項目 平均額
月々の介護費用(自己負担分) 約5万円
住宅改修や一時的費用(平均) 約47万円

出典:2024年度 生命保険に関する全国実態調査(生命保険文化センター)

この平均費用には介護サービス利用料だけでなく、おむつ代や配食サービス代、光熱費の増加分などが含まれます。初期には住宅改修や介護ベッドの購入などまとまった資金が必要になることが多いため、ある程度の準備金を見込んでおくと、いざというときに落ち着いて対応できます。

施設に入所した場合にかかる費用の目安

施設に入所する場合、その費用は施設の種類や部屋のタイプ、地域によって大きく異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

項目 平均額
施設介護の月額費用(平均) 約13.8万円

出典:2024年度 生命保険に関する全国実態調査(生命保険文化センター)

公的施設である特別養護老人ホームでも、家賃や食費を合わせると月額10万円〜15万円程度が相場です。民間の有料老人ホームなどはさらに高額な費用がかかるケースも多いため、年金や預貯金でどこまでまかなえるのか、不足分を家族がどの程度援助可能かを事前に話し合っておく必要があります。

参照:サービスにかかる利用料(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)

それぞれの経済状況に合わせたプランを立て、将来の不安を軽減しましょう。

まとめ

まとめ

本記事では、親の介護は何から始まるのか、初期の準備や手続きに関して解説しました。
少しでも日常の言動におかしいなと感じる初期のサインを発見したら、一人で悩まずにもよりの地域包括支援センターへ相談しましょう。要介護認定の申請をすることで、介護保険サービスを利用できるようになります。
また、介護と仕事や自身の生活を両立させるためには、国の用意した制度や公的なサービスを活用し、家族で情報を共有して協力し合うことが欠かせません。費用の目安も参考にして、いざというときに備えて家族で冷静に話し合える環境を今から整えておきましょう。

この記事の監修医師