介護保険のサービスを利用する際に、要支援や要介護といった言葉を耳にしたことがあるでしょう。しかし、それぞれが何を意味し、どのように違うのか、意外と理解が曖昧な方も多いのではないでしょうか。要支援と要介護は、その方が日常生活でどれくらい介護(介助)を必要とするかを示す度合いです。介護度の違いによって利用できるサービス内容や費用負担額が変わるため、事前に知っておくことが大切です。本記事では、介護保険における要介護度の基礎知識や認定基準、区分ごとの状態の目安、さらに要介護度別に受けられるサービス内容について解説します。
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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
介護保険サービスにおける要介護度の概要

介護保険の要介護度とは何ですか?
要介護度とは、公的な介護保険において日常生活でどの程度の介護を必要とするかを示す指標です。大きく要支援と要介護の2種類があり、さらに細かく要支援1・2、要介護1~5と、要介護認定非該当(自立)まで含めて全部で8段階に分類されます。例えば、要支援1が最も軽く、自立に近い状態、要介護5が常時全面的な介助が必要な最重度の状態です。要支援・要介護の認定を受けると介護保険サービスが利用可能となり、要支援1・2では介護予防サービス、要介護1~5では介護サービス(介護給付)が適用されます。なお、申請しても自立と判断され非該当となる場合もあり、その場合は介護保険サービスを利用できません。
要介護度はどのような手続きで決まるのですか?
要介護度は、
市区町村に申請して行われる要介護認定によって決定されます。認定の流れは下記のとおりです。
- 要介護認定の申請
- 認定のための調査
- 主治医意見書の作成
- コンピュータによる一次判定
- 自治体の介護認定審査会での二次判定
- 結果通知
介護度の判定は、必要な介護の量を客観的に測るもので、必ずしも病気の重さと一致しない点に注意が必要です。例えば、身体機能がしっかりしていても認知症の周辺症状で介護の手がかかる場合、高い介護度になることがあります。
要介護度の認定を受けるための手続き方法を教えてください
認定手続きの第一歩は市区町村の窓口へ申請することです。お住まいの市区町村役所の介護保険担当課にて所定の要介護認定申請書を提出します。申請書は窓口でもらえるほか、自治体ホームページからダウンロードできる場合もあります。本人や家族のほか、介護支援専門員(ケアマネジャー)に依頼して代理申請してもらうことも可能です。申請には被保険者証(介護保険証)や本人確認書類の提示が必要です。また、申請の際に主治医を届け出る欄があり、そこに記載した医師宛てに自治体から意見書が依頼されます。申請後は上記の認定調査と審査のプロセスを経て約1ヶ月後に結果通知が届きます。初めての申請だけでなく、認定の有効期間満了前にも更新申請が必要です。介護が必要な度合いが途中で変化した場合は、期間を待たずに区分変更申請を行うこともできます。
要介護度の目安と認定基準

要介護度別に状態の目安を教えてください
要支援・要介護の各区分ごとに、一般的な心身の状態の目安があります。以下に簡単に示します。
| 区分 |
説明(箇条書き) |
| 自立(非該当) |
・日常生活で介助・見守りが基本的に不要
・生活動作を自力で行える状態 |
| 要支援1 |
・基本動作は自分で可能だが、一部で見守り・手助けが必要
・生活機能低下の兆候があり、将来的に介護が必要になる可能性あり |
| 要支援2 |
・筋力低下などで立ち上がり・歩行が不安定
・一部で介助が必要で、要介護に移行するリスクが高い |
| 要介護1 |
・立ち上がり、移動などで部分的な介助が必要
・軽度の認知機能低下がみられることがある |
| 要介護2 |
・要介護1より生活動作全般で介助量が増える
・認知症状が多少進行している場合がある |
| 要介護3 |
・食事・排せつ・入浴など全般にかなりの介助が必要
・歩行は杖・歩行器・車いすを使用
・中程度の認知症状で見守りが必須 |
| 要介護4 |
・身の回りのほぼすべてで介助が必要
・立位保持が難しい
・判断力低下が著明で、単独生活は困難 |
| 要介護5 |
・寝たきりに近く、生活全般で全面的な介助が必要
・意思疎通が困難なことが多い、最も重度の状態 |
上記はあくまで目安ですが、認定では要介護認定等基準時間が基準として用いられます。この基準時間と認知機能の状態などを踏まえて総合判定される仕組みです。
要介護度は状態のみで判断されるのですか?
基本的には心身の状況に基づいて客観的に判定されます。具体的には前述の調査票の結果から介護に要する時間を推計し、要介護度を判定します。ただし、判定にあたっては、単に身体の不自由さだけでなく、認知症による行動面の問題も考慮されます。例えば、寝たきりで重病の方よりも、歩けるが徘徊や妄想など問題行動がある認知症の方の方が介護の手がかかり、要介護度が高く出ることもありえます。一方で、家族状況や経済状況といった環境要因は判定に含まれません。あくまで本人の心身の自立度に基づき公平に判定されます。
要支援と要介護の違いを教えてください
要支援と要介護は
必要な介護の重さが異なります。大きな違いとして、要支援は基本的に身のまわりのことは自分でできるものの
一部に介助が必要な状態であり、要介護は
日常生活全般に介助が必要な状態です。
認知機能面でも、要支援では日時を忘れる程度の軽度障害なのに対し、要介護では記憶障害が進み徘徊や暴言など周辺症状がみられることがあります。制度上の違いとして、利用できるサービスとケアプラン作成窓口が異なります。
要支援では
介護予防サービスを地域包括支援センターの支援のもと利用し、要介護では訪問介護や通所介護など本格的な
介護サービスをケアマネジャーと相談して利用します。また、要支援1・2は要介護度に比べて改善の可能性があるとみなされ、効果的なリハビリなど介護予防に重点が置かれます。
要介護度別|受けられるサービスの内容

要支援と判定された場合に受けられるサービスを教えてください
要支援1・2に認定されると、介護保険の介護予防サービスを利用できます。具体的なサービスには、ホームヘルパーによる訪問型サービス(介護予防訪問介護)、高齢者施設で日中預かりケアをする通所型サービス(介護予防通所介護)、リハビリ専門職による短期集中リハビリ(介護予防リハビリ)などがあります。
これらは要介護者向けサービスと内容は似ていますが、要支援者の場合は自立維持・向上を目的としており、利用できる頻度や時間がやや限られることがあります。また、要支援者向けには地域包括支援センターが中心となって介護予防ケアプランを作成し、状態悪化を防ぐための運動教室や栄養改善指導など地域の介護予防事業にも参加できます。なお、要支援では原則として特別養護老人ホームなどの介護保険施設への長期入所はできません。軽度なうちからこれらサービスを利用し、生活機能の維持に努めることが大切です。
要介護と判定された場合はどのようなサービスが受けられますか?
要介護1~5に認定されると、公的介護保険の介護サービス(介護給付)を利用できます。在宅で暮らす場合、ヘルパーが生活援助や身体介護を行う訪問介護、デイサービスセンターなどで入浴と食事介助や機能訓練を受ける通所介護(デイサービス)、短期間施設に泊まる短期入所(ショートステイ)、訪問看護や訪問リハビリ、福祉用具の貸与や購入補助など、多様なサービスがあります。
要介護度が重くなれば、特別養護老人ホームなどの介護保険施設への入所や、在宅でも24時間対応の定期巡回や随時対応サービス、小規模多機能型居宅介護など包括的ケアも利用可能です。いずれの場合もケアマネジャーが中心となって本人と家族の希望を聞きながらケアプランを作成し、それに沿って必要なサービスを組み合わせて利用します。要介護度が高いほど1日に受けられるサービス量も多くなりますが、その分、家族の介護負担軽減につながるでしょう。
要介護度によってかかる費用に差はありますか?
利用者の自己負担率は要介護度に関係なく一定です。ただし、介護保険には区分支給限度額が定められており、要介護度が高いほど1ヶ月に保険給付されるサービス量の上限が大きく設定されています。限度額内のサービス利用費はその1割(または2~3割)が自己負担となり、上限を超えた分は全額自己負担です。したがって高い要介護度の方がより多くのサービスを利用できますが、その分自己負担額は増える傾向にあります。ただし、負担軽減策として、1ヶ月の自己負担額が一定額を超えた場合に超過分を支給する高額介護サービス費制度もあります。いずれにせよ、要介護度が上がるほど公的給付の範囲が広がる一方、サービス利用量が増えることで家計負担も増える可能性がある点に留意しましょう。
編集部まとめ

介護保険の要介護度は、高齢になったときにどのくらい日常生活で助けが必要かを示す大切な基準です。要支援・要介護の認定によって受けられるサービスが決まり、家族の負担やかかる費用にも影響します。要支援と判定された場合でも油断せず、予防的なサービスで生活機能の維持に努めることが重要です。反対に要介護度が高く判定された場合は、利用可能なサービスを活用して、在宅介護の負担を軽減したり必要なら介護施設の利用も検討したりしましょう。「まだ元気だから大丈夫」と我慢せず、早めに申請して適切な認定を受けることで、公的な支援を受けながら自分らしい生活を続けることができます。介護度は定期的に見直しも行われるため、状態の変化に応じてサービス内容を調整し、本人と家族にとって適切な介護環境を整えていきましょう。