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口腔ケアのやり方は?重要な理由とケアの手順、注意点を解説します

 公開日:2026/02/09
口腔ケアのやり方は?重要な理由とケアの手順、注意点を解説します

「口腔ケアの方法が合っているか心配」「お口を開けてくれず、歯磨きがうまくできない」自宅で介護していると、このような悩みを抱える方は少なくありません。口腔ケアは、介護される方の健康を守るうえで大切なケアの一つです。お口の清潔が保たれるだけでなく、誤嚥性肺炎の予防や、食べる・話すといった生活機能の維持にもつながります。本記事では、口腔ケアの基本知識や自宅でできる具体的な方法、注意点までを解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

口腔ケアの基礎知識

口腔ケアの基礎知識

口腔ケアとは何ですか?

口腔ケアとは、歯科医療従事者ではない介護職員や家族などが、お口の清潔や動きを維持するために行うケアの総称です。歯磨きや義歯の清掃だけでなく、舌・粘膜のケアやうがいの介助、お口を動かす体操なども含まれます。

器質的口腔ケアと機能的口腔ケアの違いを教えてください

口腔ケアには、器質的口腔ケア機能的口腔ケアの2種類があります。器質的口腔ケアは、歯磨きや義歯の洗浄、舌や粘膜の清掃などを通してお口のなかを清潔に保つケアです
そして、機能的口腔ケアは、唾液分泌を促すケアや、嚥下や咀嚼の訓練などを行い、食べる・飲み込む・話すといったお口の働きを維持・改善するためのものです。これら二つのケアはどちらも口腔機能を守るうえで欠かせないもので、組み合わせることでより効果が高まります。 参照:『健康高齢者の口腔ケア』(厚生労働省)

なぜ介護において口腔ケアが重要なのですか?

介護の現場で、口腔ケアが重要とされるのは、口腔機能の低下が、介護される方の健康や生活の質に大きく影響するからです。お口は食事だけでなく、会話や表情づくりなど、人とのコミュニケーションに欠かせない役割を担っています。

お口の働きが低下すると、食べられる食品の種類や量が減り、栄養バランスが偏ります。その結果、筋力や免疫力が低下し、感染症や生活習慣病の発症リスクが高まるといわれています。また、咀嚼や嚥下、発声などの口腔機能が弱まると、人前で食事をしたり会話したりすることに自信が持てず、外出や交流の機会が減ってしまうことがあります。こうした社会参加の減少は、身体活動量や意欲の低下につながり、寝たきりや認知機能低下のリスクを高める要因になるのです。

このように、口腔機能の低下は健康面や社会参加など、多方面に影響を及ぼします。器質的口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に役立ち、機能的口腔ケアは栄養状態や社会活動の維持につながります。こうした理由から、介護において口腔ケアは、健康と生活の質を守るために欠かせないケアとして位置づけられているのです。

参照:『口腔機能と健康への影響』(厚生労働省)

自宅介護での口腔ケアのやり方と必要なアイテム

自宅介護での口腔ケアのやり方と必要なアイテム

自宅介護での器質的口腔ケアの方法を教えてください

ケアを始める前に、まずお口の中の状態を観察しましょう。義歯の有無や残っている歯の本数、腫れや出血がないかなどを確認します。始める前には、介護される方を驚かせないよう「これから口腔ケアを始めますね」といった声かけも欠かせません。
ベッド上で行う場合は、誤嚥を防ぐため、なるべく上半身を起こして体位を整えましょう。

準備ができたら、実際の口腔ケアを進めていきましょう。まずは、できる方はうがいをしてもらいます。次に、歯がない方の場合は、口腔粘膜の清掃をします。スポンジブラシやガーゼに水を含ませ、頬の内側や上顎、舌、粘膜などをやさしく拭き取ってください。義歯があれば、外して丁寧に清掃します。

歯がある方の場合は、歯ブラシを使って歯磨きをします。鉛筆を持つように軽く持ち、小刻みに動かすのが基本です。歯と歯ぐきの境目や歯間部は汚れがたまりやすいため、歯間ブラシやフロスも活用します。舌の表面はやわらかい歯ブラシやスポンジブラシで、奥から手前へ向かってやさしく動かして清掃します。

清掃が終わったら、うがいができる方は行い、できない方は口腔清拭シートを使って拭き取ります。最後に、口腔用の保湿剤を舌や頬の内側、上顎に薄く塗布して終了です。

参照:『口腔ケアに携わる人のための手引き』 (社団法人 全国国民健康保険診療施設協議会)

器質的口腔ケアに必要な道具はありますか?

器質的口腔ケアで使用する道具には、代表例に次のようなものがあります。
名称 使用目的
歯ブラシ 歯面・歯ぐきの境目の清掃
タフトブラシ 残根や歯の重なりの清掃
歯間ブラシ 歯と歯の広いすき間の清掃
デンタルフロス 狭い歯間の清掃
スポンジブラシ 粘膜の清掃
口腔清拭シート 水を使わない場合の粘膜の清掃
舌ブラシ 舌の汚れの除去
口腔保湿剤 粘膜の保湿
義歯用ブラシ・義歯洗浄剤 義歯の清掃

このように、器質的口腔ケアで使用される道具はさまざまな種類があり、介護される方の状況に応じて使い分けられます。 参照:『要介護者の口腔ケアマニュアル』(福岡市保険局口腔保健支援センター)

自宅介護で機能的口腔ケアを行うことはできますか?

はい。自宅でも機能的口腔ケアを行うことは可能です。特別な道具がなくても、舌を前に出したり、お口をすぼめたりするといった簡単な体操から始められます。
麻痺や認知機能の低下があり、自力で口腔体操が行えない方の場合は、唾液腺マッサージとして、頬や顎の下をマッサージする方法もあります。 参照:『口腔ケアに携わる人のための手引き』 (社団法人 全国国民健康保険診療施設協議会)

機能的口腔ケアに必要なアイテムを教えてください

機能的口腔ケアは、特別な器具をそろえなくても、家庭にあるもので取り組めます。以下に代表的なアイテムとその用途をまとめました。
名称 使用目的
口腔体操の内容が記載してある印刷物や動画 お口や舌の動きを視覚的に確認する
ガム 咀嚼力を高めるための練習に活用する
スプーン 舌を押す・持ち上げる練習に使い、舌の筋力を鍛える
お口の開け方や舌の動きを確認しながら体操する
タイマー 体操時間を測る

どのアイテムを使用するかについて、特に嚥下機能が低下している場合は、歯科医師や言語聴覚士に相談しながら進めましょう。 参照:『オーラルフレイル対策のための口腔体操』(日本歯科医師会)

自宅介護での口腔ケアの注意点

自宅介護での口腔ケアの注意点

器質的口腔ケアの注意点を教えてください

器質的口腔ケアを行う際は、安全性に配慮しながら、介護される方に合わせて無理なく進めましょう。認知症のある方の場合、強制的にお口を開けさせたり急いでケアを進めたりすると、拒否が強まり、その後のケアが難しくなるかもしれません。そのため、できるときに可能な範囲で行いながら、少しずつ習慣づけることが大切です。

また、寝たきりの方のケアはより誤嚥のリスクが高まります。可能であれば側臥位、難しい場合は仰向けで顔を横に向けるなど、唾液や水分が気道に流れこみにくい姿勢で行いましょう。加えて、ケアの途中で痛みや出血、義歯の不具合などがみられた場合は、無理に続けず、早めに歯科医師に相談しましょう。

参照:『口腔ケアの介助のポイント』(一般社団法人日本訪問歯科協会)

機能的口腔ケアを行う際に気を付けることはありますか?

機能的口腔ケアの場合も、介護される方の体調に合わせて、無理のない範囲で行いましょう。体調が悪い日や、首・肩に痛みがある日は、無理に行わず休みましょう。また、お口を開け閉めする際にカクカクと音がしたり、痛みが出たりする場合もケアを控えてください。その日の身体の状態に合わせて、できる範囲で少しずつ取り組むことで、効果的な口腔ケアにつながります。

自宅介護では口腔ケアが難しいと感じたときの相談窓口を教えてください

自宅での口腔ケアに不安がある場合や、難しいと感じたときは、早めに専門機関へ相談しましょう。例えば、かかりつけの歯科医院に相談すると、口腔内の状態に応じたケアの方法や適切な道具の選び方など、具体的なアドバイスがもらえます。
また、地域の支援窓口である地域包括支援センターでも、介護の困りごと相談や、必要に応じて介護サービスへつなぐ支援を行っています。 参照:『地域包括ケアシステム』(厚生労働省)

編集部まとめ

編集部まとめ

口腔ケアは、単に歯を磨くだけの行為ではなく、食べる・話す・表情をつくるといった毎日の生活を支える大切なケアです。ケアの方法に不安を感じるときは、かかりつけの歯科医院や地域包括センターなどの専門機関に相談してみてください。日々のケアを通じてお口の健康を守り、ご本人が自分らしい生活を続けられるよう、無理のない範囲で取り組んでいきましょう。

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