【歯科医師監修】「毎日、舌磨いてる?」 舌の汚れは口臭や歯周病の原因に
近年、健康意識が高い人たちの間で関心が高まりつつある「舌磨き」。毎日、歯はしっかり磨いているけれど、舌まで磨いている人はそれほど多くないのではないでしょうか。実のところ、口腔内を衛生に保つためには、歯だけでなく舌も綺麗に保つことが重要です。そこで今回は、舌磨きの正しい方法を「名執デンタルオフィス」の名執先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
名執 亮太(名執デンタルオフィス 院長)
東京歯科大学卒業。東京医科歯科大学病院研修医課程修了。その後、ノースカロライナ大学、UCLA審美歯科センターでの留学でインプラントや審美治療の研鑽を積む。都内歯科医院で勤務医を務めた後、2008年に「名執デンタルオフィス」を東京都港区に開院。インプラントや再生療法、審美治療において、海外での経験を活かした治療技術を提供する。
そもそも「舌磨き」とは?
編集部
正直、舌磨きの必要性がわかりません。
名執先生
口の中のケアというと、多くの人が思い浮かべるのが「歯磨き」でしょう。しかし、口腔内の環境にもっと配慮するなら、舌も綺麗に保つことが重要なのです。そのために行うのが「舌磨き」です。
編集部
磨かなければいけないほど、舌は汚れているのですか?
名執先生
舌の表面は滑らかに見えますが、実は細かい突起がたくさんあります。舌の上は毛足の長いカーペットのようになっていて、その毛足の間に食べカスやむし歯菌、歯周病菌などが溜まっているのです。そして、汚れがたくさん溜まると「舌苔(ぜったい)」と呼ばれる白い苔状の塊になってしまいます。お口の中の60~80%の細菌がこの舌苔に存在しているとも言われています。
編集部
つまり、舌苔は菌の塊ということですね。
名執先生
そういうことです。なお、口臭の原因のほとんどは舌苔です。ですから、舌を綺麗にすることは口臭予防にもつながります。多かれ少なかれ誰にでも舌苔はありますが、全体にまんべんなく舌苔がつく人や舌の一部だけにつく人など、付着のしかたは人それぞれです。
編集部
なぜ、舌苔はできるのでしょうか?
名執先生
いくつかありますが、口腔内の清掃が行き届いていないということが一番の理由です。また、唾液の分泌が少ないと舌苔が作られやすくなります。
編集部
なぜ、唾液が少ないと舌苔がたくさん作られるのですか?
名執先生
本来、唾液には汚れや細菌を洗い流し、細菌が増殖するのを抑制する働きがあります。そのため、唾液の分泌が少ないと細菌がお口の中にとどまってしまい、舌苔が作られてしまうのです。
正しい「舌磨き」の方法
編集部
舌苔を落とすために、舌磨きをするということですね。
名執先生
そのとおりです。歯科医院では専用のスクレーパーとジェルを使用することがありますが、ドラッグストアで舌磨き用のブラシを購入できるので試してみてはいかがでしょうか。もし、手に入らない場合には、普段使っている歯ブラシで代用しても構いません。
編集部
具体的な舌磨きの方法を教えてください。
名執先生
舌磨き用のブラシを使う場合には、まずブラシに少量のジェルをつけて舌に当てます。そして、奥から手前へ動かします。このとき、ブラシを手前から奥へ動かさないように要注意です。なぜなら、舌に付着している細菌を口の奥へ送り、体内に取り込んでしまう可能性があるからです。
編集部
ブラシを奥まで動かすと、「オエッ」ってなりそうです。
名執先生
その場合は、舌を思い切り前に突き出して磨くようにしてください。また、舌の奥の方は磨き残しが多くなりがちなので、まんべんなく磨くように意識しましょう。
舌磨きをする際の注意点
編集部
舌磨きは1回でどれくらい行えばいいのでしょうか?
名執先生
3~4回程度、奥から手前へブラッシングするだけで大丈夫です。磨き終わったら、舌から落とした食べカスや菌を確実に除去するため、しっかりと水で流しましょう。
編集部
舌磨きは1日に何回行えばいいのでしょうか?
名執先生
基本的に、舌磨きは1日1回で十分です。舌は非常にデリケートな組織で、何度も磨くと粘膜を傷つけたり、味覚を感じる味蕾(みらい)細胞にダメージを与えてしまったりすることもあるからです。磨くときにはあまりゴシゴシとこすらず、優しく軽い力で行うようにしましょう。
編集部
1日のどのタイミングで行えばいいですか?
名執先生
朝は舌苔の付着量が多いので、起床後すぐに舌を磨くのがおすすめです。朝、起きたら鏡の前に立って舌苔の付着具合を観察して、それから磨くことを習慣にするといいでしょう。もし起きたばかりで口の中が乾いていれば、少し水を含んで舌苔を柔らかくしておくと落としやすくなります。
編集部
舌磨きをする際の注意点はありますか?
名執先生
とにかく、舌に傷つけないようにすることが重要です。無理に汚れを取ろうとして、強い力で磨かないようにしてください。日によって舌苔の付着具合は異なりますし、今まで舌磨きを行ってこなかった人の場合、舌苔が分厚くなっていることもあります。一度の舌磨きで綺麗にしようと思わず、コツコツと継続していきましょう。
編集部
ほかにも気をつけた方がいい点があれば教えてください。
名執先生
舌の表面がピリピリするような症状をお持ちの方、舌磨きを始めてから症状が出てきた方は悪化する可能性があるので、舌磨きを控えるようにしてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
名執先生
「口は病気の玄関で、全ての病気の元である」と言われています。そう考えると、舌はまさに玄関のレッドカーペットに例えられるでしょう。そこに汚れが溜まっていれば家中、つまり口腔内に汚れが広がるのも当然のことです。そのため、歯磨きの習慣だけでなく、ぜひ舌磨きも習慣化していただきたいです。
編集部まとめ
舌には菌の塊である舌苔が付着しており、放置すると口臭や歯周病の原因になるとのことでした。そこで、舌苔を落とすためには舌磨きが重要とのこと。舌磨きがきちんとできていると、舌の色や表面の様子が変わってきます。とくに、これまで舌磨きの習慣がなかった人は、大きな変化が見られるかもしれません。ときどき鏡でチェックして、舌が綺麗に保たれているか確認してみましょう。
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診療科目 | 歯科 |