高齢者が入浴しないとどうなる?注意点や入浴が難しいときの対処法を解説

高齢の方にとって入浴は、身体を清潔に保つだけでなく、温熱や水圧、浮力の作用により血行を促し、気分転換や睡眠の質の向上につながる大切な生活習慣です。一方で、加齢に伴う体力低下や関節の痛み、めまい、認知機能の変化などにより、入浴が負担になったり怖く感じたりする場合があります。ご本人の尊厳を守りながら清潔を保つために、入浴を続ける工夫や、入浴が難しいときの代替手段を知っておくことが役立ちます。本記事では、家族介護者の方がすぐに実践できるポイントを解説します。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
目次 -INDEX-
高齢者が入浴しないとどうなる?

入浴しないと皮膚トラブルが起こりますか?
高齢者が長く入浴しないことで、どのような影響がありますか?
入浴しないことは、健康面以外にも影響を与えますか?
【高齢者の入浴】注意点

高齢者にとって適切な入浴頻度を教えてください
入浴する際の注意点を教えてください
失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こし、命に関わることもあります。高齢の方は、加齢により血圧を正常に保つ機能が低下していたり、動脈硬化が進んでいたりするため、特にヒートショックを起こしやすい状態にあります。
入浴前は血圧や体温を測定し、普段と変わりないか確認しましょう。体調がすぐれないときや、食後すぐ、飲酒後、睡眠薬などを服用した後の入浴は避けてください。脱衣所と浴室を暖めるのも必要です。入浴前に暖房器具を使ったり、浴槽の蓋を開けたり、シャワーで湯気を出したりして、脱衣所と浴室の温度差をなくしましょう。室温は22〜25度程度が目安です。
入浴中の注意点としては、お湯の温度は41度以下、湯船に浸かる時間は10分までを目安にしましょう。長湯や熱いお湯は身体への負担が大きくなります。心臓から遠い足先や手先から順に、十分にお湯をかけて身体を慣らしましょう。血圧の急激な変動を和らげることができます。ゆっくりとした動作も心がけてください。特に、湯船から急に立ち上がると、血圧が急低下して立ちくらみを起こしやすいため大変危険です。
入浴後の注意点としては再度、水分補給を忘れないようにしてください。入浴で失われた水分を補うためです。
お風呂場を安全に使うための工夫はありますか?
具体的な工夫としては、以下のようなものが挙げられます。
- 手すりの設置
- 滑り止めマットの使用
- シャワーチェア(入浴用いす)の活用
- 浴槽台(バスボード)や浴槽内いすの利用
- 浴室暖房乾燥機の設置
- レバーハンドル式の水栓への交換
- 脱衣所にも椅子
これらの福祉用具や改修は、単に安全性を高めるだけでなく、ご本人が自分でも入浴できるという自信につながり、入浴への心理的なハードルを下げる効果も期待できます。
【高齢者の入浴】入浴が難しいときの対処法

入浴が難しい場合はどうすればよいですか?
部分浴とは足だけをお湯につける足浴(そくよく)や、手だけを洗う手浴(しゅよく)、陰部だけを洗い流す陰部洗浄など、身体の一部だけを洗う方法です。特に汚れやすい部分や、ご本人が気にしている部分をきれいにすることで、爽快感を得られます。
これらの方法は、全身浴と比べて体力的な負担が少ないため、日々のケアに柔軟に取り入れることができます。例えば、月・水・金は入浴、それ以外の日は清拭といったように、ご本人の体調やご家族の都合に合わせて計画を立てるとよいでしょう。
清拭(せいしき)はどのくらいの頻度で行うのがよいですか?
全身の清拭については、毎日行う必要はありません。入浴が週に1〜2回できるのであれば、入浴しない日に汗をかきやすい部分(首、脇の下、足など)を拭く程度で十分な場合もあります。
髪や頭皮のケアのポイントを教えてください
自宅での入浴や清拭が難しい場合の対処法を教えてください
- 訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)
- 訪問介護(ホームヘルプサービス)
介護保険サービスの入浴支援を受けるためには、要介護(要支援)認定を受け、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう必要があります。どのサービスが適しているかは、ご本人の心身の状態やご家族の状況によって異なります。入浴介助が大変になってきたと感じたら、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。
編集部まとめ

高齢の方にとって、入浴は身体の清潔を保つだけでなく、血行促進やリラクゼーション、良質な睡眠など、心身の健康を維持するために多くの利点をもたらす大切な生活習慣です。入浴をしない状態が続くと、皮膚トラブルや感染症のリスクが高まるほか、心身の機能低下や社会的な孤立につながる可能性もあります。
一方で、浴室は転倒やヒートショックなどの危険が伴う場所でもあります。入浴するためには、脱衣所や浴室を事前に暖める、お湯の温度や時間を適切に管理する、手すりなどの福祉用具を活用するといった対策が不可欠です。
もしご自宅での入浴が難しくなったときも、清拭や部分浴といった代替手段があり、さらに介護保険を利用すれば、訪問入浴やデイサービスなど、専門家によるさまざまなサポートを受けることができます。
入浴に関する悩みは、ご本人やご家族だけで抱え込まず、ぜひケアマネジャーなどの専門家に相談してください。
参考文献



